ハワイ移住、成功の諸条件。漫画『NANA』の聖地の元店長がハワイで大逆転するまでの失敗談

ハワイ移住、成功の諸条件。漫画『NANA』の聖地の元店長がハワイで大逆転するまでの失敗談

  • OCEANS
  • 更新日:2022/09/23
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「失敗から学ぶ移住術」とは……

太陽も海も空も最高! 日本人が大好きな旅行先であるハワイ。そのハワイへ移住し、串カツ居酒屋を経営し「なんとかなっちゃったんだよね」と語る男がいる。7年前に東京からハワイへ移住した佐藤公一さんである。

今年6周年を迎えた店は、今でこそローカルに愛され、芸能人御用達の人気店である。しかしその成功の裏には日本では考えられないハワイならではの失敗があった……。

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佐藤公一●47歳。漫画『NANA』(集英社)に実名で登場した「ジャクソンホール」の元店長。現在は家族4人でハワイに在住。木梨憲武や豊川悦司など著名人も通う串カツ居酒屋「フジヤマテキサス」を経営。

2000年代に映画も爆発的ヒットを記録した矢沢あいによる漫画『NANA』。

劇中、実在するダイニングバーが舞台になったが、それが東京・調布にある「ジャクソンホール」で、その元店長がこの佐藤さんだ。

カリスマ店長が串カツ屋に転身

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カウボーイ文化の根付くワイオミング州の「ジャクソンホール」の町並みを再現したような店。写真=友人提供

「『NANA』が売れ始めてからは女の子のお客さんが増えて、連日長蛇の列でしたね。ジャクソンホールは本当に居心地がいい店で、最高のバイブスが渦巻いてました。スタッフと客が毎晩一緒に飲みにいくような仲でしたね。カオスでしたけど(笑)」。

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当時の店内には『NANA』が飾られ、メニューも矢沢あいさん直筆のイラストが入っていた。写真=友人提供

その店は『NANA』ファンの聖地と化し、店長も一躍有名人になった。

漫画の人気だけでなく、人を惹きつけるカリスマ性もあって、連日仕事と遊びに明け暮れる日々。それが祟ってか、当時の妻と幼子とは離別、「当時は何が一番大切かわかっていなかった」とも回想している。

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『NANA』がヒットし、店も連日長蛇の列ができるほど忙しかった頃の佐藤公一さん。写真=友人提供

「当時からハワイは好きで年に1、2回は通っていて、いつかハワイに住みたいと言ってたけど、そのときはただの希望でしかなかったんですよね」。

立ち上げから9年、再開発に伴って店の立退きが決定。それを機に、自分の店を構えるという最初の夢を目指し、ジャクソンホールを退職。

「店を出すなら手に職を付けようと、中目黒の串カツ屋で働き始めました。2年間そこで修行して、2011年に調布で立ち飲み串カツの店『フジヤマテキサス』をオープンしたんです」。

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現在もある立ち飲み串カツ「フジヤマテキサス」。当時から海外進出を意識して看板は欧文にしたのだという。

「居抜き物件をほぼそのまま残したので、工事費も工期もほとんどかからず2〜3カ月でオープンできました。ひとりで営業できる店が良かったので、朝から夜まで働きましたが、その分人件費はいらないし、すぐに利益を出す店になりましたね」。

有言実行、即行動。エネルギッシュなカリスマは、ジャクソンホールを去ってもその求心力で店の経営は順調だった。

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調布「フジヤマテキサス」店内。佐藤さんのハワイ行きを叶えてあげたい、とジャクソンホールの後輩スタッフが店を引き継いだ。

「2014年に店を休んで現在の妻と行ったハワイ滞在中、ひやかし半分で物件を見にいったんですよ。そしたら……」。

ハワイの物件はどれも初期費用が高額。店を持つなんて夢のまた夢だと悟ったが、どうやらハワイの方が佐藤さんを呼んでいたようだ。

「帰国したあとに、物件を見せてくれた不動産業者から『初期費用が安い物件が出た』って連絡が入って。『その物件、誰にも教えないでくださいね!』って、チケットを取って3日後にハワイに戻りました(笑)」。

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失敗① ハワイの物件を勢いだけで契約

しかし、佐藤さんはすぐにハワイの洗礼を受けることになる。

「ハワイで商業店舗を借りる場合、日本の礼金にあたる“ロイヤルティ”と前家賃、造作譲渡料、工事費がかかるのが一般的なんです。もちろん、店舗の工事が終わるまで空家賃も発生します。でも、紹介された物件は礼金と前家賃、造作譲渡料が要らないっていう好条件だったんですよ」。

これは逃さないわけにはいかないと、佐藤さんは勢いで契約書にサインしたが……。

「調布の店の経験がベースにあったので、工事費は700万円、店は2〜3カ月程度でオープンできるだろうと見積もってたんです。いやー、ぜんぜん甘かったですね(笑)」。

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映画監督のタランティーノの作品に出てくる日本みたいなイメージが好きで、「フジヤマ」というワードを使いたくて思いつきで「テキサス」をつけて店名にしたという。

契約書を交わしたら後戻りはできない。エアコンのパイプや排水のオイルフィルターなど、修理が必要な部分が相次ぎ、費用はどんどん膨れ上がっていったという。

「ハワイではまず建築士を連れていって、店の内装やレイアウトをしっかり相談し、見積もりを確認したうえで契約を結ぶのが普通だって後から知りましたよ」。

結局、工事費用は次々と追加され、最後には300万が支払えない事態に。大工に懇願し、ツケ払いを取り付け、なんとかその場を乗り切った。

教訓① ハワイでは契約前に建築士と見積もりを作成すべし!

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失敗② ハワイの工事はのんびり。オープンまで10カ月という誤算

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フジヤマテキサス ハワイの串カツ。

ハワイの常識は、日本のそれとは何もかも違う。工期に関する認識も甘かった。

「工事をしている業者がみんな午後3時には帰っちゃうんですよ。のんびり仕事するんです。それを見てたら頭痛くなってきて(笑)。これでは、空家賃の支払いだけで貯金が尽きるぞって。3カ月程度で工事が終わると思ってたので焦りましたね」。

もはや、佐藤さんには頭を下げる以外に道はなかった。

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調べるというプロセスを踏まずにガチンコでやってきた佐藤さんはハワイビジネスの先輩に「よくオープンできたよな」と驚かれるそう。

「ふたりで一緒に店の大家を訪ねました。頭を下げて、店がオープンするまで家賃をまけてください!ってお願いしたんです。もうそうするしかなくて。

そしたら『君たちはいいね、頑張ってるんだね』って応援してくれて。家賃を80%オフにしてくれました。結局、工事は10カ月かかったので本当に救われましたね。それがなかったら店はオープンできなかったと思います」。

ちなみに工期が長引き採算が取れず、事業が頓挫するケースは大企業でさえ良くあるケースだという。佐藤さん夫婦は2人だけでなんとか踏ん張り、オープンまでの危機を乗り越えた。

教訓② 工期は3倍、オープンまでが山場と心得るべし!

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失敗③ 法律改正を知らず500万円の返金

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佐藤さんの妻で「フジヤマテキサス ハワイ」のマネージャーのサリさんと。

「法律が知らない間に改正されるのも、めちゃめちゃ痛手でしたね」。

ハワイでは外国人が店を経営する際はアメリカ人を雇わないとならない、などさまざまな労働法がある。しかもそれは知らぬ間に変わることもあり、母国語ではない情報を漏れなくチェックすることはかなり難しいらしい。

「飲食店では、オーナーはチップをもらったらダメっていう法律があるんです。それは知ってたんで、僕はチップを受け取ったことはないんですけど、いつの間にか法律が変わってマネージャーもNGになってたんですよ」。

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ハワイ在住の仲間や友人家族と。描いていたビジョンが形になった佐藤さんのハワイ移住。

店のマネージャーは妻のサリさんだ。常に笑顔で店に立つ看板娘には客もチップを弾む。法律の改正を知らなかったでは許されず、返金を命じられたという。

「うちの店を退職したスタッフが労働局に連絡したみたいです。監査が入ってサリが受け取ったチップの全額500万円を返金させられました」。

問題の根底にあるのが、もっとも苦労した“言葉の壁”だという。

「英語がわかれば定期的に情報をチェックできますが、ホームページを見ても法律用語が並んでるばかりで僕は理解できないし、かといってコンサルに依頼すれば高い。日本人経営者同士で情報交換しながら乗り越えてる感じですね」。

教訓③ 法律を理解していないと痛い目に合うと肝に銘じるべし!

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数々の失敗を乗り越え成功を手にした佐藤さん。「今は家族4人で最高にハッピーです!」

ほかにも、日本人の不法滞在者から訴えられるという信じられない経験をはじめ、想定外の事態はまだまだあった。なかには日本とのあまりの違いに、ノイローゼ気味で帰国する日本人もいるほどだ。

「国が違えば信じられないことがリアルに起こります。こんな楽天的な僕でも2〜3年はストレスばかりでした。頭を柔軟にしてやり過ごさないと潰れちゃうと思います。でも、そんな時でもやっぱりハワイの風や海に救われましたね。今は最高にハッピーです」。

ポジティブでタフな佐藤さんだからこそ乗り越えられた失敗や苦労。佐藤さんからの絶対的なアドバイスはコレだ。

「ハワイで起業するなら、移住前に英語を身に付けたほうが絶対にいいです!(笑)」。

OCEANS編集部

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