殺害予告に引退勧告...ネットの「誹謗中傷」が止まらない!プロ野球選手はSNSとどう付き合えばいいのか

殺害予告に引退勧告...ネットの「誹謗中傷」が止まらない!プロ野球選手はSNSとどう付き合えばいいのか

  • デイリー新潮
  • 更新日:2022/01/15

プロ野球のオフに大きな注目を集めるのが契約更改だが、年俸の話以上に大きな話題になったのが福敬登(中日)ではないだろうか。契約更改を終えた後の記者会見で、シーズン中に失点を喫した後には自身のSNSにおびただしい数の誹謗中傷が届き、中には殺害予告をほのめかすものもあったと公表した。その後、福は愛知県警に被害届を提出し、受理されたことが報じられた。【西尾典文/野球ライター】

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2017年、ドラフト2位で楽天に入団した岩見政暉。岩見に対するTwitterへの書き込みが大きな波紋を呼んでいる

手軽さと匿名性が……

また、1月10日には岩見政暉(楽天)のTwitterアカウントに対して「枠ないんで任意引退してくれますか?」という書き込みがあり大きな波紋を呼んでいる。岩見は、慶応大を経て2017年のドラフト2位で入団。過去3年間の成績は、32試合に出場し、9安打、1本塁打、4打点、打率.143と、東京六大学野球で活躍したスラッガーとは思えないような低迷に喘いでいる。

この書き込みに対して、意に介さない返信で対応しており、今のところ被害として訴える様子は見られないが、今後も福のような事態に発展するケースが出てくる可能性を改めて感じさせる出来事だった。

【写真】ダルビッシュ有、田中将大に前田健太…トッププロの「YouTube」がアマ球界に与える影響

プロ野球選手に対する“野次”は昔からあるものだが、今回問題となっているようなSNSの書き込みはそれとは明らかに異質なものである。まず大きいのが、手軽さと匿名性だ。直接、球場で選手に対して言葉をかけるのには、それだけの労力と度胸が必要になる。だが、SNSでは顔も名前も隠したまま、書き込むことが可能である。

もちろん、直接の声がけであれば、何を言ってもいいわけではないが、面と向かって言われるよりも顔も見えない相手から匿名で罵られる方が不気味と感じるケースも確かにあるはずだ。

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大きな波紋を呼んだ岩見のツイッターでの書き込み

身を守ることも必要なスキル

そして、不特定多数に拡散していくということ。既存のメディアと比べても、その拡散力は大きく、あらゆる情報が個人の書き込みによって拡散するSNSの影響力はどの業界においても無視できない時代である。だが、その影響力の大きさは必ずしもマイナスばかりではなく、プラスに働いているケースも少なくない。ダルビッシュ有(パドレス)は自身のSNSで度々トレーニングの様子を公開し、ファンとのやりとりも活発に行っている。一般のファンはもちろんだが、育成年代の選手にとってもレベルアップに有益な情報も多く、野球界全体のレベルアップに繋がっていることも確かだろう。

もうひとつの大きな利点はメディアを通さずに、選手自身の言葉で発信できるという点である。筆者が昨年11月、SNSを活用している選手の1人である高梨雄平(巨人)にインタビューした時にも、誹謗中傷はもちろん来ることはあるが、それ以上にファンと直接コミュニケーションをとることができる利点を語っていた。

さらに重要になってくるのが、選手自身のリテラシー向上と意識の変化ではないだろうか。前出の高梨は、心無い言葉を投げかけてくるようなアカウントに対してはTwitterの「ミュート機能」を使って、自分の目に届かないようにしているという。100%遮断することは難しくても、このように工夫することでSNSの誹謗中傷から自分の身を守るということも、今後アスリートにとって必要なスキルになりそうだ。

プラスになる点も多い

もうひとつ意識という点では、早くからSNSを利用することのメリット、デメリットをよく理解しておくということである。学校やチームによっては、いまだにスマートフォンやSNSの利用を厳しく制限していることも多く、高校の野球部を引退したと同時にアカウントを作成するというケースもよく見られる。

また、SNSの特性をよく理解しないまま不用意な発言ややりとりをして、その後、大きな問題になるということが少なくない。高校野球の世界では“野球を通じての人間教育”という言葉がよく聞かれるが、礼儀や規律を守るということだけでなく、現在のトレンドに対して敏感に反応し、それを上手く使いこなすといったことも教育する必要性がある。

高校や大学などアマチュア時代の教育で不十分だということであれば、プロ入り後に選手会や球団などで、より一層SNSに対する教育を強化するというのも一つの方法だ。その際にはもちろん危険性といったネガティブな要因だけではなく、有効活用している例などを紹介して、選手にとってプラスの面も紹介していくべきだろう。

福については、昨年11月の会見で、自身のアカウントは不正にログインされて使用できなくなっており、「もうSNSはやらないでおこうかなと思っている」と話していたが、向き不向きもあるため、当然、無理に使う必要はない。ただ、メリットとデメリットをきちんと理解したうえで、選手がどのように付き合っていくかをしっかり考えることは、今後より重要になってくる。

殺害予告や岩見に対するような書き込みはあってはならないことではあるが、コミュニケーションツールとして活用すれば、選手としてもプラスになる点も多いことは確かである。野球界、スポーツ界全体として、今回のような残念なニュースだけではなく、業界全体が活気づくような話題が増えていくことを切に願いたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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