清武弘嗣のゴールを生んだロティーナ戦術の真骨頂。「攻撃より守備」のカラクリ

清武弘嗣のゴールを生んだロティーナ戦術の真骨頂。「攻撃より守備」のカラクリ

  • Sportiva
  • 更新日:2020/09/15

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「安定した守備がいい攻撃を生み出す」

【動画】清武弘嗣の横浜FM戦スーパーゴール

それが、セレッソ大阪のスペイン人指揮官、ミゲル・アンヘル・ロティーナの信条である。彼は実際、そう口にしているし、彼の練習はディフェンスとセットプレーに特化。堅牢なだけでなく、攻めに対して順応できるような、撓(たわ)まない守備を第一とする。

「守備戦術のスペシャリスト」

それはスペイン時代からのトレードマークだが、Jリーグに来てからも東京ヴェルディ、セレッソと変わっていない。守備から鍛えられた選手たちは、プレーに適応し、攻撃でも実力を発揮する。そのポテンシャルを、守備から引き出しているのだ。

今シーズン、ロティーナ・セレッソは2位で川崎フロンターレを追っている。その強さは、伊達ではない。

9月13日、日産スタジアム。セレッソは昨季王者の横浜F・マリノスと敵地で戦い、1-2で勝利を収めている。

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横浜F・マリノス戦で同点ゴールを決めるなど、勝利に貢献した清武弘嗣(セレッソ大阪)

「王者の攻撃に押されながら、辛くも勝った」

それもひとつの捉え方だろうが、本質的な批評ではない。セレッソは、守りでリズムを出すチームである。相手を受け止め、挟み込み、守り切って隙を生み出す。重厚な守りが、彼らのペースなのだ。

その点、横浜FM戦も主導権を明け渡していない。

「序盤を除けば、悪くない前半だった。ただ、チャンスを作りながらも、しばしば不用意にボールを失ったこともあり、縦に攻め急ぐことになった。それでマリノスの時間になったが、後半は改善できていた」

セレッソのロティーナ監督は、守備そのものに問題はなかったことを説明している。

「(攻められた時間は)壁パスに対し、問題を抱えていた。右サイドを修正する必要もあった。しかしチーム全体で守り、攻めることができた。セレッソはいいディフェンスがいるし、それはGKも含めてだ」

マテイ・ヨニッチ、瀬古歩夢で組むセンターバックは、強さ、鋭さ、厚みがあった。サイドバックと連係して中を閉じ、ボランチと緊密な関係を作ることで、前のスペースに入らせない。

前線やサイドの選手のポジションの取り方も、練度の高さが光った。敵にポジション的優位を与えない。先制されたシーンに関しては、エリキのゴールをアシストしたマルコス・ジュニオールの戦術的プレーを賞賛すべきで、この試合で唯一、完全に崩されていた場面と言えるだろう。

守備が確立されていることによって、前線は影をひそめることがあっても、したたかに反撃のチャンスを狙っていた。後半7分に失点した直後だった。リードした横浜FMの勢いが弱まったこともあって、セレッソは巻き返す。奥埜博亮が抜け出し、際どいシュートを放つ。敵陣で奪ったFKでは、都倉賢が豪快なヘディングを打ち込む。こうして横浜FMのハイラインを凌駕し始める。

そして後半13分、瀬古がロングキックを坂元達裕のヘディングに合わせ、そこからのパス交換で、再び坂元が受けると、それをゴール正面の清武弘嗣へ流す。20?以上は距離があったが、清武は前に出ていたGKを計算し尽くした、ループ気味のロングシュートを右足ダイレクトで沈めた。

そして今シーズン、セレッソが好調の理由は、同点に甘んじないことだろう。同点にされて浮足立った横浜FMに対し、攻撃の強度を上げる。後半20分には、清武のパスから完全に抜け出した片山瑛一が横浜FMのディフェンスに後ろから倒され、レッドカードを誘発。これで数的優位に立った。

もっとも、ロティーナ・セレッソは大きくやり方を変えていない。しっかりと守り固め、攻撃を狙う。ただ、ボランチの木本恭生を下げ、FW高木俊幸を入れ、FWに入っていた奥埜をボランチに下げている。最小限の変化が、王手となるのだ。

後半41分、右サイドで相手ディフェンダーと1対1になった坂元は、得意とする左足でボールを運びながら、中に切り込むような動きを一瞬だけ見せた後、一気に縦を突っ切る。完全にマーカーの逆を取った。そして、右足で狙いすましたグラウンダーのクロスを折り返すと、これをエリア内でフリーの高木が難なく押し込み、決勝点とした。

横浜FMの矛の勢いはすさまじかったが、セレッソの盾は凌ぎ切った。試合後、スーパーゴールを決めた清武について問われた際、指揮官ロティーナの述懐は象徴的だ。

「清武はセレッソの主将で、リーダーだ。ゴールだけでなく、プレーメイクができるし、何より守備で頑張れる。彼のようなリーダーが守る姿勢を見せれば、他の選手も従う。模範と言えるだろう」

勝利を呼び込んだ一撃よりも、守備への献身を語る。そこにロティーナ・セレッソの本質はあるのだろう。

「安定した守備がいい攻撃を生み出す」

その真骨頂のような快勝劇だった。

次は9月16日、ヴィッセル神戸との敵地戦になる。川崎との首位争いには、負けられない。難攻不落の戦いで、6連勝はなるか。

小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

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