見た目年齢は「毛細血管」の状態に比例する 老化の大敵「ゴースト血管」退治法

見た目年齢は「毛細血管」の状態に比例する 老化の大敵「ゴースト血管」退治法

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  • 更新日:2022/01/15
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血管の中で最も細い毛細血管には、重要な機能がある。毛細血管スコープで見ると、正常な毛細血管は画像で形がはっきり映るが、加齢や高血糖などで毛細血管が劣化したゴースト血管は不明瞭だ(写真:あっと株式会社血管美人提供)

ツヤツヤの肌は、若々しさの指標のひとつだ。年を重ねれば個人差が 大きくなってくるが、見た目年齢と毛細血管の年齢は比例するという。AERA 2022年1月17日号から。

【写真】ゴースト血管はこちら*  *  *

知人に、「どう見ても30代」の女性がいる。実年齢は55歳。塗っているのは日焼け止めだけなのに肌はツヤツヤでシミやシワはなく、髪の毛はボリューミー。夏は毎年ビキニ。それがまたサマになっている。

いわゆる「美魔女」というやつか。若さの秘訣を聞くと、「食事と運動には気をつけているかな」。たんぱく質源となる鶏胸肉、納豆、木綿豆腐、卵は毎日欠かさず、野菜、きのこ類、海藻類、そして発酵食品たっぷりの食事を心掛けているという。糖質は毎食取るが、量はほどほど。白米より玄米派。好きなワインは週末にだけ、ゆっくり楽しむ。週3回ヨガに通い、よほどのことがない限り23時までにはベッドに入る。

20歳の若見えも納得の健康的な生活だが、隣に立つのは少し嫌だ。この差は一体何なのか。

■見た目と毛細血管年齢

「毛細血管の状態と関係しているかもしれません」と指摘するのは、大阪大学微生物病研究所環境応答研究部門情報伝達分野の高倉伸幸教授だ。大手化粧品会社と皮膚と毛細血管の関連について共同研究を行い、マイクロスコープで接写した肌の状態と、毛細血管の状態はほぼ比例するという実例を多く見てきた。

「見た目年齢と血管年齢の相関を調べた研究結果もあります」

愛媛大学・伊賀瀬道也教授が行った研究で、同大医学部附属病院抗加齢・予防医療センターで抗加齢ドックを受診した住民273人の写真データから、60歳以上の人に接する機会の多い大学病院老年病専門病棟の女性看護師20人が見た目年齢を評価し、抗加齢ドックでの頸動脈エコーの検査結果との関連を検討した。見た目年齢が高い群は、見た目年齢が低い群と比較して、女性で平均5歳、男性で8歳、血管年齢が高かった。

「動脈の硬さなどを基準にする血管年齢と、見た目や臓器の若さとは密接な関係があることは複数の研究で実証されています。さらに近年注目されているのが毛細血管と若さの関係です」

血液を心臓から全身の各組織に送り出す動脈に対し、毛細血管は、動脈と、全身の各組織から血液を心臓に戻す静脈との間をつなぐ網目状につながる細い血管で、全身の血管の総長の9割を占める。

高倉教授は、血管を人体の中の道路に例える。動脈や静脈が幹線道路なら、毛細血管は県道や市町村道。幹線道路が立派でも家の前の道路がふさがれていれば、社会と隔絶する。道路が不通でゴミ回収車が来なければ、快適に暮らせない。近隣の道路が機能せず住む人がいなくなれば、ゴーストタウンになる。

「毛細血管がダメージを受ければ、血液が隅々まで流れなくなる。酸素や栄養の運搬、老廃物回収ができず、周辺の細胞や組織にダメージを与え、場合によっては死滅させてしまう。毛細血管の若さを保つこともまた、非常に大切なのです」

左の写真が毛細血管だ。正常な毛細血管は血管の形がくっきりし、血液が流れているのが見て取れる。ダメージを受けた毛細血管は血管の形がモヤモヤし、血流が確認できない。

■ゴースト血管のリスク

こういった血管の存在は1970年代から論文で報告され、「Empty Sleeve(空になった鞘)」と表現されていた。だが動脈の研究が主流で、毛細血管を対象にする研究者は少なかった。

高倉教授が毛細血管に着目したのは、血液・腫瘍内科で臨床医をしていたとき。薬効の優れた抗がん剤があまり効かない患者がいることに疑問を抱いたことがきっかけだった。

「薬を届ける血管に問題があるのではと考え、がんの血管をテーマに研究を始めたのです」

がんに見られる血管のほとんどが毛細血管で、未成熟な毛細血管ががん悪性化の原因の一つ。そのうち、未成熟な毛細血管はがんではない人の体の中にもあることに気づいた。

「血液の流れが悪く壊れやすくなった毛細血管が、老いや不調、病気を引き起こしている。毛細血管が本来の役割を果たせずゴーストタウンになってしまう、ということから、ダメージを受けた毛細血管をゴースト血管と名づけました」

すでに説明したとおり、体内を縦横無尽に走る毛細血管は、全身にある37兆個の細胞一つ一つに酸素や栄養を運搬し、余分な血液を漏らさずに二酸化炭素や老廃物を回収する。また、臓器などで作り出されたホルモン(よく知られるのが、血糖調整のインスリン、食欲抑制のレプチンなど)をキャッチし、全身をめぐって必要とされる場所に届ける。

免疫に働く白血球も、毛細血管が体の隅々に行き渡っているからこそ、細部までパトロールできる。

毛細血管には体温を維持する働きもある。血液は内臓の中で温められ、温度を維持して体の末梢まで届く。それがスムーズにいくのは、毛細血管がしっかり血液を流しているからだ。

毛細血管がゴースト化し、その役割が果たされなくなれば、見た目が老け、不調が生じるなど、病気のリスクも高くなる。

■大敵は加齢と高血糖

最新の研究では、アルツハイマー型認知症との関係も指摘されている。脳には血液脳関門(BBB)があり、ここを介して必要な物質を血液中から選んで脳へ供給し、脳内で作られた不要な物質を血液中に排出する。

「BBBの実体は毛細血管で、ゴースト化すると、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβの回収・排出が滞る。脳に過剰に蓄積され、やがてアルツハイマー病を発症するのです」

ゴースト血管化の原因の一つは加齢だ。加速させる因子には、高血糖がある。体内で過剰な糖質とたんぱく質が結びつく「糖化」が起こり、体内に焦げのような物質「AGE」が発生すると、毛細血管がAGEを取り込み、細胞の老化を促進する活性酸素が大量に発生する。

一方、「Tie2(タイツー)」という血管内皮細胞に発現する分子が、ゴースト血管防止に有効なことが明らかになっている。

「毛細血管の壁細胞からアンジオポエチン1が分泌されると、タイツーを活性化させ、血管の壁細胞と内皮細胞が接着して毛細血管を安定させます。しかし加齢とともにアンジオポエチン1が分泌されにくくなり、高血糖による酸化ストレスなどが加わると、タイツーが活性化されなくなって、ゴースト血管に至るのです」

■下肢の筋肉を鍛える

ゴースト血管は、年を取れば誰でもリスクがある。だが、予防や改善は可能だ。マウスの実験では、ゴースト化した血管でも、血管の細胞同士の結びつきを高めると血流が回復。酸素を組織に送達できるようになった。

「血流を良くすることは、ゴースト血管の予防・改善に欠かせない条件です。一番のお勧めは、ウォーキングやスクワットのような下肢の筋肉を鍛える運動です。ふくらはぎの筋肉を刺激するかかと上げの習慣化もいい」

タイツーを活性化させる物質を食品で取るのも効果的だ。

「食生活に取り入れやすいのは、シナモン、スパイスであるヒハツ、ルイボスティーが、タイツーを活性化させることがわかっています。私自身、毎日摂取していますし、90歳代の両親も実践しています。両親は肌がツヤツヤでピンピンしていますよ」

もちろん、ゴースト血管予防・改善には、バランスの良い規則正しい食事、減塩、質の良い睡眠、ストレス軽減など、血管の健康を守る生活習慣も肝要だ。こうした習慣が、動脈硬化対策にもなり、血管年齢を若返らせることができる。(ライター・羽根田真智)

※AERA 2022年1月17日号

羽根田真智

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