スカイマーク（SKY/BC、9204）は9月19日、法定アルコール検査を失念した整備士が業務を開始した今年6月の事案について、国土交通省航空局（JCAB）に再発防止策を提出した。事案が起きた福岡空港を対象に、早番整備士の出勤時間を統一。整備士が単独で出勤する勤務パターンを廃止した。またiPadなどを活用し、検査の未実施やすり抜け、不正ができない新たな検査システムを2024年1月までに導入する（関連記事）。このほかアルコール検査に対する意識強化や、掲示物により意識啓発を図ることで、再発防止への取り組みを強化する。
—記事の概要—
・検査失念で整備業務
・アルコール検査「0回目」で失念か
・福岡早番は出勤時間統一
検査失念で整備業務
国交省へ再発防止策を提出したスカイマーク＝PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire
福岡での検査失念は6月19日に発生。福岡空港支店所属の整備士兼ライン確認主任者が、アルコール検査を受けないまま整備業務を開始した。当該整備士は整備責任者に対し、アルコール検査済みであるとの事実と異なる報告後に整備業務を開始。整備責任者が、整備規程附属書で定められた「アルコール検査シート」を確認したところ、検査の実施記録がないことに気付いた。
その後、代替の整備士が業務を再度実施。当日は福岡を午前8時に出発予定だった那覇行きBC503便や、午前8時55分に出発予定の羽田行きBC4便などの4便に最大2時間以上の遅延が発生し、約700人に影響が出た。
アルコール検査「0回目」で失念か
スカイマークによると、整備士の出勤前アルコール検査は3回で、1回目は出社前に自宅で、2回目は出社後の打刻前に、3回目は打刻後に法定検査を受ける必要があるという。当該整備士は羽田事業所にいる第3者がリモートで立会い、勤務開始前の出社前アルコール検査を済ませていたものの、勤務前の法定アルコール検査を受けるのを失念した。当該整備士のアルコール数値は0.00mg/lで、アルコールは検出されなかった。
当日の当該整備士はのどが痛く、のどスプレーを使用していた。2回目までの検査は受けていたものの、アルコールが検出されなかった結果に安心してしまい、3回目の法定アルコール検査を実施したと思い込んでしまったという。
整備士がアルコール検査を済ませたと思い込んだ要因について、出勤前に使用したのどスプレーが自宅での出社前アルコール検査で使用する検知機で検知しなかったこと、会社規定の出社前アルコール検査の前に自主的な「0回目」の検査を済ませたことで、検査を3回済ませたと思い込んだと説明している。
スカイマークは安全に関わる全社的な方針を策定する「安全推進室」は、整備管理規定で「整備責任者の実施確認」を定めている。今回の失念とは異なるものの、2022年12月に男性整備士（当時）がアルコール検査で不正を働いたことで、不正の再発防止策を講じている。その際の防止策では検査の不正防止に主眼を置いた対策となっており、立会者に「アルコール検査シート」での検査完了を確認する役割付与が不足していた、としている。
福岡早番は出勤時間統一
今回の検査失念を受け提出した再発防止策では、法定アルコール検査と検査実施の確認を6月19日付で指示済み。また福岡空港整備課では早番（午前帯）の整備士3人の出勤時間が異なっていたが、同月24日から早番帯は出社時間を統一。午前7時発の羽田行きBC2便など、整備責任者が運航便対応時に法定アルコール検査の実施対象者が単独で出勤する勤務パターンを廃止した。
思い込みや不正を防止する仕組みを再構築し、組織的なアルコール検査の確実な実施管理を目的としたアルコール検査システムを、2024年1月までに導入する。昨年12月に発生した飲酒問題での防止策で導入を決めた検査システムで、アルコール検知器とiPadなどの携帯端末を連携することで未実施やすり抜け、不正などができない仕組みを構築する。
また、アルコール問題への意識向上を目指したポスターを2用意し、社内のイントラネット上で今年9月末までに掲載する。ポスターは自社で発生した飲酒事案を年表形式で記載するものと、アルコールに関連する知識や陥りやすい落とし穴を紹介するものを用意する。
このほか、整備本部長の講話やグループディスカッションなどにより、再発防止への取り組みを強化する。
Yusuke KOHASE
