
特殊詐欺の防犯システムの実験をする明石高専の学生(手前)ら=兵庫県明石市で2023年5月18日午後2時35分、澤俊太郎撮影
増え続ける特殊詐欺被害を防ごうと、明石工業高等専門学校(兵庫県明石市)の学生らが、現金自動受払機(ATM)の前で警告音を出す防犯システムの開発を進めている。県警と連携した取り組みで、将来的な実用化を目指すという。
「詐欺被害の可能性があります」「この会話は録音されています」。警告音声がATMの付近に設置を想定したスピーカーから大音量で発せられる。
開発が進むのは、高齢者らが電話などで詐欺グループから指示を受けて、現金を引き出そうとする場面を想定した防犯システムだ。設置されたマイクがATM利用者の「振り込み」などといったキーワードを検出するとスピーカーが反応し、警告音を繰り出す。
18日、同校で学生らが披露した試作品には、検出したキーワードの数によって「詐欺かもしれない」「詐欺の確率90%。通報します」と段階的に音声が変化する機能も備わっていた。
県警によると、県内の2022年の特殊詐欺の認知件数は前年比1・2倍の1074件、被害総額は同1・5倍の約19億円とともに増加している。電話をしながらATMを操作する高齢者らに注意を呼びかけるといった対策も重要となっている。
県警が被害抑止の観点から協力を明石高専に依頼し、学生らがシステム開発に取り組んだ。詐欺の手口や被害者の共通点などを共有しながら、将来的には実用化して各地のATMに設置したい考えだ。
今後、画像認証で携帯を持った利用者を判別する機能を追加するなどして精度を高めていく予定という。開発メンバーの東史響(しおん)さん(19)は「低価格で、全てのATMに設置できるようなシステムを作りたい」と話している。【澤俊太郎】
毎日新聞