心理分析家が検証「人はウソをつくと目をそらす」はどこまで本当か?

心理分析家が検証「人はウソをつくと目をそらす」はどこまで本当か?

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  • 更新日:2021/04/07
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巷でまことしやかに語られている「定論」は、疑ってかかったほうがいい場合もあるようです。今回、「ウソつきは目をそらす」という通説を検証しているのは、ニュースやバラエティー番組『チコちゃんに叱られる』等での心理分析で知られる清水建二さん。清水さんは4月1日に配信を開始したメルマガ『清水建二のウソと心理の見抜き方』で、とある政治家のウソが明らかになった会見映像の分析を通して、「目をそらすのはウソのサイン」の真偽を審査しています。

(本記事は、メルマガ『清水建二のウソと心理の見抜き方』2021年4月1日号からの一部抜粋です。4月中のご登録で、4月分のメルマガがすべて届きます)

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政治家の言動から考えるウソを見抜くという行為

こんにちは。清水建二です。本日よりメールマガジン『清水建二のウソと心理の見抜き方』のスタートです。最初に具体的な事例を通じてウソと心理の見抜き方を考えたいと思います。

コロナ禍に揺れる1月の東京。緊急事態宣言の最中、ある政治家が銀座のクラブ含む複数の飲食店に訪れていたことが問題になりました。以下は、その政治家がテレビカメラの前で釈明している一場面です。どこにウソのサインが現れているでしょうか?

【ケーススタディー】

記者A:確認ですけど、その、あの、お店に行かれたときは、あの、えーM先生お1人だったということですか。



政治家:(一瞬だけ目を左右にそらし)ええ、1人です。



記者A:各社さんいかがでしょうか。



記者B:T新聞のBです。確認ですけども、複数人での会食っていうのは、その、各飲食店であったんでしょうか。



政治家:(一瞬だけ目を左右にそらし)ありません。全部、あの、要望・陳情を承ると、いう立場で、1人で行っております。



…中略…



記者C:あの、確認なんですけども、最後の、そのークラブを出た時間は、何時、何時から何時まで、だったんでしょう。



政治家:(一瞬だけ左上に目をそらし、眉を中央に引き寄せ下げ)おそらくー11時ぐらいになって、た、と思いますね。



記者C:23時にその現場を、出られた。



政治家:ええ、23時に、ええ、出たと。あの、う(一瞬だけ左上に目をそらし)、まぁ、過ぎ、ちょっ、多少過ぎていたかも知れませんけども。だいたい、そんな時間だったと思います。

【考察】

ウソのサインを「一瞬だけ目を左右にそらし」「一瞬だけ左上に目をそらし」と考えた方がいらっしゃったと思います。「『目をそらす』のはウソのサインの典型!」とどこかで聞いたことがあるからかも知れません。しかし、「目をそらす」を根拠に「他者がウソをついている」と考えている方は、この文を読まれている今の今まで、真実を話している多くの人をウソつきだと誤解してきた恐れがあります。残念なことであり、状況によっては、非常に危険なバイアスになります。

「ウソつきは目をそらす」は本当か?

「私は、ウソをつく人が実際に目をそらすのを何度も見たことがある」とおっしゃる方もいるかも知れません。本ケースの真実を整理し考えます。件の政治家は、各飲食店―イタリアンレストランと銀座のクラブ2店―に合計3人の政治家で訪れていたことが明らかになっています。また、最後の銀座のクラブを23時過ぎに退店していたことがわかっています。

つまり、「飲食店に1人で訪れたこと」はウソで、「23時過ぎに退店したこと」は真実です。「目をそらす」を根拠に真偽を判定するとき、1つのウソをウソと正しく見抜くことが出来、1つの真実をウソと誤解することになります。ウソ検知率50%の手がかりということです。

これまで、数多くの科学実験が私たちの真偽判定率の精度を検証しています。真偽確率が50%のとき、私たちが真偽を正しく判定できる確率は、おおむね54%だということがわかっています。ほぼチャンスレベルです。この数字は、一部特殊な人を除き、警察官・一般人問わず、変わらないことがわかっています(Bond and DePaulo 2006; Vrij 2008)。

そう、私たちにとってウソを正しく見抜くことは難しいのです。ウソを正確に見抜けない原因は様々ですが、その一つが正しいウソのサインを知らない、と言えると思います。今回の「目をそらす」がまさにその誤解の典型です。

58ヶ国の男女20人を対象にした調査において、「誰かのウソをどのように判定しますか」という質問に、51ヶ国の64%の調査対象者が「目をそらす」サインを挙げています(The Global Deception Team 2006)。

しかし、メタアナリシスの結果、目をそらすことがウソのサインということは認められていません(DePaulo et al. 2003; Sporer and Schwandt 2007; Vrij 2008)。つまり、「ウソつきは目をそらす」というものは、世界中の多くの人々に信じられている神話ということになります。この神話が広く行き渡っているゆえに、ウソつきは、相手から「目をそらす」のではなく、相手の「目を見つめる」という印象操作をする傾向にある、という実験結果もあるくらいです(Mann, Vrij, Leal, Granhag, Warmelink, & Forrester, 2012)。

目をそらす様々な原因

私たちは、恥ずかしさを抱いたり、頭をつかっているとき、目をそらす傾向にあることが知られています(Ekman 1985/2001; Doherty-Sneddon and Phelps 2005)。しかし、これらの行為は必ずしもウソをつく行為のみに伴うわけではありません。確かに、私たちがウソをつくとき、罪悪感を抱いたり、頭を使いますが(Ekman 1985/2001; Vrij 2008)、正直な話をしていても、ウソをついていると疑われれば罪悪感を覚え、恥ずかしい話題を正直に話せば話すほど羞恥心を抱き、真実の記憶を辿るために頭を使うでしょう。こうした行為が、目をそらす、になり得るのです。

経験的に「ウソ=目をそらす」を体験されている方は、その成功体験が成功例だけに基づいていないか、特殊な条件のみに適応できた事例ではなかったか、今一度、再考してみて下さい。

それでは、冒頭のケーススタディーの情報のみからウソを見抜くことは出来ないのでしょうか。よく巷で言われるように「政治家はウソが上手い」のでしょうか。

結論から書きますと、いわゆるウソのサインはありません。しかし、個人内比較という比較法を通じて、ウソの可能性を推測することが出来ます。個人内比較法とは、同じ状態の個人の変化を比べる方法です。ウソ推測の文脈で言えば、ウソが疑われている話題、あるいは動揺を引き起こすような重要な話題について真実を話しているときの分析対象者の言動反応を基準=ベースラインとし、他の話題時に起こる各反応がベースラインからどの程度乖離するかを観察し、乖離の程度が大きいほど、ウソの可能性が高い、と推測する方法です。

要は、必死な状態で真実を話しているときの個人特有の言動反応を発見し、そこからの差異を重視する方法です。この個人内比較法を用いることで、たとえ分析対象者がウソの演技が上手くとも、たとえウソのサインについて知識が豊富ゆえにそのサインを隠そうとしても、差異を発見することを通じて個人的なウソのクセが浮かび上がってくるのです。

ベースラインからの乖離を観察し、精査する

本ケースでは、「23時に退店したこと」が真実です。店の退店時間は、この政治家にとって動揺を引き起こす重要な話題だと考えられます。緊急事態宣言下において20時以降の不要・不急の外出は避けるべき、というルールがあるため、退店時間が20時を超えているという発言は、ウソをつく誘因があり、正直に話しても動揺を引き起こす話題だと考えられるからです。ウソを推測する上で、個人内比較法を使う場合、こうしたクリティカルな話題の真実性を質問法を駆使したり、他の情報源を活用し、担保しておく必要があります。

退店時間について話しているときの言動反応を観察します。言語反応は言い淀みです。非言語反応は、「一瞬だけ左上に目をそらし、眉を中央に引き寄せ下げる」「一瞬だけ左上に目をそらす」です。特に2回出現した「一瞬だけ左上に目をそらす」をベースラインとします。

そして、問題にしたい話題、「飲食店に何名で訪れたのか」について話しているときの反応を観ます。それは「一瞬だけ目を左右にそらす」です。ベースラインの反応とは異なります。どの程度ベースラインから乖離しているかは、様々な計測方法があります。ここでは、取り敢えず、ベースラインとは違う、と考えて頂ければと思います。

実務の世界―警察の犯罪捜査、第三者委員会による聞き取り調査、その他ヒューミント、オシントなど―では、このベースラインからの乖離をホットスポット、すなわち、精査ポイントと考え、その話題についてさらなる質問をしたり、物的証拠や目撃証言などを探す・照合する行動に移ります。怪しいと思う話題について漠然と質問をしたり、物的証拠を探すのではなく、怪しい話題の中でも特に精査すべき話題を絞り、効率化を図るのです。

日常・ビジネスシーンなら、「この人は信用できない」という疑念が高まり、その人物が言ったことに警戒するようになるでしょう。

ウソと心理を見抜くという知的営為

いかがでしたでしょうか。ウソを見抜くという行為は、いわゆるウソのサインを探し出せば見抜くことが出来る、と言った単純なものではないということをご理解頂けたと思います。そもそも巷に溢れるウソを見抜く系の書物やセミナーで語られているウソのサインは、根拠が薄いものや限定的な場面でしか使えないもの、机上の空論で実用性に乏しいもの等が多いように私には思えます。

『清水建二のウソと心理の見抜き方』では、科学的根拠に基づき、かつ、著者及び著者の生徒さんらが様々な実践の場で用い、実用性があると考えているウソと心理の推測法を紹介します。机上の空論でもなく、使用範囲や精度があやふやな経験則でもありません。

具体的には、科学的根拠を明確にするために様々な学術論文の内容を説明します。特に論文の方法論を理解することで、実験結果をどこまで一般化し、自身の関心のある真偽推測や心理推測状況にどこまで適応できるか判断するヒントを得ることが出来るでしょう。また、著者が代表を務める(株)空気を読むを科学する研究所が実施している数々の実験動画や公開されているニュース動画等を用いて、推測するための実践力を養成します。

ウソや心理を推測するのに有効な非言語サイン、言語サイン、質問法、状況のつくり方を総動員して、人間存在の蘊奥を探求しましょう。

ウソを見抜く方法の学び方

さて、具体的なウソと心理の見抜き方に入る前に、ウソの言語・非言語サインに関する諸研究及びウソ推測に有効な質問法・面接法に関する諸研究を俯瞰的に捉え、これからの学びの指針を示したいと思います。

結論を先に書きます。ウソと心理を見抜く・推測するスキルを習得するには、非言語サイン、質問法(面接法)、言語サインを順番で学び、必要に応じて各手法を縦横無尽に使いこなせるようになることが重要だと私は考えます。それではウソ検知に関わる諸研究を見ていきましょう。

ウソの言語サイン

言語的な特徴から真偽を明らかにしようとする主な手法に、CBCA(a critical-based content analysis)とリアリティ・モニタリング(Reality Monitoring)があります。この2つは、多くの学術研究や実務場面で実験・使用されている言語分析の手法です。

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参考文献・web

深夜の銀座クラブ訪問を釈明(2021年1月27日)2021年3月19日アクセス

Bond, Charles & DePaulo, Bella. (2006). Accuracy of Deception Judgments. Personality and social psychology review : an official journal of the Society for Personality and Social Psychology, Inc. 10. 214-34. 10.1207/s15327957pspr1003_2.

DePaulo, B. M., Lindsay, J. L., Malone, B. E., Muhlenbruck, L., Charlton, K., & Cooper, H. (2003). Cues to deception. Psychological Bulletin, 129, 74-118.

Doherty-Sneddon, G., & Phelps, F. G. (2005). Gaze aversion: A response to cognitive or social difficulty? Memory and Cognition, 33, 727-733.

Ekman, P. (1985). Telling lies: Clues to deceit in the marketplace, politics and marriage. New York: W.W. Norton. (Reprinted in 1992 and 2001).

Mann, S., Vrij, A., Leal, S., Granhag, P. A., Warmelink, L., & Forrester, D. (2012).Windows to the Soul? Deliberate Eye Contact as a Cue to Deceit. Journal of Nonverbal Behavior, 36(3), 205-215.

Sporer, S. L., & Schwandt, B. (2007). Moderators of nonverbal indicators of deception: A meta-analytic synthesis. Psychology, Public Policy, and Law, 13, 1-34.

The Global Deception Team (2006). A world of lies. J. Cross Cult. Psychol. 37,

60-74. doi: 10.1177/0022022105282295

Vrij, A. (2008). Detecting lies and deceit: Pitfalls and opportunities (2nd ed.). Chichester: John Wiley and Sons.

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