女子やり投げの上田百寧はベンチプレス175キロのフィジカルモンスター 強豪集う陸上日本選手権で「どこまで食らいつけるか」

女子やり投げの上田百寧はベンチプレス175キロのフィジカルモンスター 強豪集う陸上日本選手権で「どこまで食らいつけるか」

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  • 更新日:2023/05/26
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日本選手権初優勝を目指す上田百寧(撮影・柿森英典)=4月29日、エディオンスタジアム広島

陸上の日本選手権(6月1~4日、大阪市ヤンマースタジアム長居)の女子やり投げで、上田百寧(ゼンリン)=福岡県糸島市出身=が初優勝を目指す。昨年の世界選手権は直前のけがも響いて予選落ち。手術、リハビリを経て勝負の舞台に戻ってきた23歳が来年のパリ五輪を見据え、完全復活をアピールする。

初出場だった昨年7月の世界選手権。上田の左膝は痛々しくサポーターで固定されていた。開催地の米国への出発3日前に、拠点の福岡大での最終調整中に左膝の前十字靱帯(じんたい)を部分断裂。気持ちが高ぶった中での投てき練習で「いつも通りやったつもりだけど、いつも以上に、(助走)スピードが出しすぎレベルで出ていた」とバランスを崩して転倒。「その瞬間に分かったんですよ。これは絶対まずいやつだと…」。完治には手術しか選択肢がなかった。

最終目標のパリ五輪を考えても、本当ならこれ以上悪化させるわけにはいかない。「ものすごく悩んだ」と振り返る熟考の末に強行出場を決めた。「そこを目指してやってきたというのが一番にあった」。大会では本来の力を出し切れずに予選落ち。思うように投げられなかった悔しさはあったが、「世界」を肌で感じられたことは大きな収穫だった。

会場での動きや歓声、外国人選手の様子…。国際大会の雰囲気を味わうことができた。66㍍00の日本記録を持つ北口榛花(JAL)は銅メダルを獲得。「日本記録くらいを投げたら、メダルに届くかもしれないというリアルなところを知ることができた」。自己ベストは61㍍75。「同じように投げられるまで戻るか分からない」という不安を振り払い、左膝の手術も帰国後すぐに受けた。

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◆ベンチプレス175㌔、フルスクワット185㌔に

リハビリでは上半身を徹底的に鍛えた。綱登りなどに加え、ウエートトレーニングにも精力的に取り組み、ベンチプレスは故障前から15㌔増の175㌔、フルスクワットも同じく10㌔増の185㌔と驚異的な数値をたたき出すようになった。

中学時代は短距離が専門で、助走スピードを生かした投てきが持ち味だった。手術前の走力が戻っていない今季は「スピードではなく筋力を使って投げていきたい」。助走の歩数を減らし、鍛えた上半身のパワーを使った投げ方を意識している。

福岡大3年時の2020年に大きく記録を伸ばし、東京五輪も見えてきたはずだったが、参加標準記録突破者と合わせて世界ランキング上位32人に出場権が与えられた中、上田は33位。その差はわずか1ポイントだった。痛感したのは準備の必要性。「(五輪を)前々から目指している人の方がそこに近づける」。パリ五輪を意識して計画的に強化を進めている。

21日のセイコー・ゴールデングランプリで手術後初めて60メートルを超え、北口に次ぐ日本人2番手の5位につけた。調子は上向いており、日本選手権では初の日本一と今年の世界選手権(8月・ブダペスト)の参加標準記録63メートル80を見据える。

現在、日本の女子やり投げは世界レベルの北口を筆頭に好選手がそろう。「北口さんが期待度も注目度も一番高い思う。そこにけがから帰ってきた人間が出てきたら盛り上がる。最後まで諦めず、どこまで食らいつけるか」。160センチの小柄なスロワーが、特大の放物線でスタジアムを沸かせる。(伊藤瀬里加)

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◆上田百寧(うえだ・ももね)1999年6月27日生まれ。福岡県糸島市出身。陸上を始めた前原西中では短距離中心。福岡県のタレント発掘事業で投てきの才能を見いだされ、福岡・中村学園女子高で本格的にやり投げを始める。福岡大を経て昨年からゼンリン所属。日本選手権は2020年3位、21年4位、22年2位。自己ベストは61㍍75。身長160㌢。最近飼い始めた犬と遊ぶことが癒やしの時間。名前は好物の寿司から「シャリ」。好きな芸能人は川口春奈。

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