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レッドブル・ホンダ、痛いノーポイント。敗因は「ハミルトンの地元」を侮ったことだ

レッドブル・ホンダ、痛いノーポイント。敗因は「ハミルトンの地元」を侮ったことだ

  • Sportiva
  • 更新日:2021/07/21

マックス・フェルスタッペンのイギリスGPは、わずか半周で終わった。

スタート加速でルイス・ハミルトンにサイドバイサイドまで並ばれたフェルスタッペンは、ターン1出口でわずかにランオフエリアにはみ出し、ハミルトンの左フロントが接触しそうになるほどタイトな状況となった。ターン3〜4でインを守ったが立ち上がりは苦しくなり、加速したハミルトンがウェリントンストレートでスリップストリームから前へと出る。

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サイドバイサイドのハミルトン(左)とフェルスタッペン(右)

フェルスタッペンはブルックランズに向けてインを死守すべく、レイトブレーキングで飛び込んでアウトへとはらみながらハミルトンの前を抑えた。しかし、それゆえに続くラフィールドへのアプローチが苦しくなり、ハミルトンは理想的なラインでラフィールドを立ち上がり、フェルスタッペンのスリップストリームからインに並びかけていく。

そして2台は並んでコプスに飛び込んでいき、ついに接触。約270km/hの速度でフェルスタッペンのマシンはスピンし、タイヤバリアへと突っ込んだ。衝突の瞬間の衝撃は51G。息を呑むような戦慄の瞬間だった。

ターンインの瞬間、ハミルトンのマシンはほんのわずか後方にいたので、ハミルトンは「完全に並んでいたし、僕のラインだった」と主張。だが、エイペックスに向けて減速していくに従い、最終的にはハミルトンの左フロントタイヤがフェルスタッペンの右リアタイヤに接触した。

スチュワード(競技会審査委員会)は、ハミルトンのラインがやや外側に膨らんでいたため、後方にいたハミルトンに接触の責任があるとして、10秒加算ペナルティを科した。

フェルスタッペンは「大丈夫か?」という無線の問いかけにうめき声を上げるだけで、しばらくマシンから降りてこられなかった。しかしその後は自力で脱出し、メディカルセンターで30分間の経過観察をしたあと、ヘリコプターでコベントリー病院に搬送されてCTスキャンなどの予備的検査を受け、身体や脳に問題がないことが確認された。

レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、極めて強い言葉でハミルトンのドライビングを非難した。

「左フロントと右リアが接触しているんだ。だからルイスは並びかけるところまでは至っておらず、完全に横に並んでいたとは言えない。そして上空からの映像を見れば、ルイスはターンイン時にラインがワイドになっていて、オーバースピードで入っていることもわかる。

あれでは追い抜きは絶対に成功しない。7度の世界王者としてはアマチュアのようなミスだ。あのような結末になるのは当然のこと。7度の世界王者が危険なドライビングをして、ほかのドライバーを病院送りにした。私はそのことに失望しているんだ」

ただし、ハミルトンは後ろからノーズを突っ込んで押し出したわけではない。2台はほぼ並んでコーナーに入っていき、ハミルトンのほうがわずかに後ろにいたからスチュワードは彼にペナルティを科した。時速300kmや4Gを超える極限の世界を知るドライバーたちは、ハミルトンが故意に当てたとは思っていない。

一方のフェルスタッペンも、インにハミルトンが並びかけていることはわかっていたはずだ。ただ、彼に責任はないが、チャンピオンシップを考えれば事故を回避すべきだった。目の前のコプスを制することやイギリスGPで優勝を掴み取ることよりも、確実にポイントを獲ることを優先すべきだった。まさしく、これまでハミルトンがやって来たように。

イモラやバルセロナでは、「自分がアグレッシブに行けば、ハミルトンは引くだろう」というドライビングが成功した。実際、ハミルトンが引いていたから、事故には至っていなかった。

しかし、今回のハミルトンはターン1から明らかに違い、地元の大観衆の前で「絶対に勝ちたい」という強い意思が表われていた。ここがポール・リカールやレッドブルリンクなら、ハミルトンは引いたかもしれない。だが、今回は勝ちを譲る気がないという意思であふれていることに、フェルスタッペンも気づくべきだった。

仮に2位に終わっても18点。ファステストラップを獲れば19点。レースの中で逆転すれば優勝25点もしくは26点を獲る可能性もあった。しかし、リタイアすれば0点。相手に責任があろうとなかろうと、その獲れたはずのポイントは帰ってこない。

実は今回、レッドブルはセッティングに失敗していた。

ここ数戦、レッドブルはウイングを削ってストレートで稼ぐマシン作りで連戦連勝を挙げてきた。だが、60分のフリー走行1回のみでセッティングを仕上げなければならない今回、予選のフタを開けてみればダウンフォースをつけすぎたことに気づいた。逆にメルセデスAMGのほうがストレートで速く、レッドブルはコーナーで稼がなければならないマシンに仕上がり、これまでと真逆の力関係になっていた。

「今回ちょっと違うのは、コーナーは僕らのほうが少し速く、ストレートは彼らのほうが速いということ。FP1のあとはセットアップが変更できないから、そこで失敗すればスタックしてしまうことになる。僕らはちょっとストレートでスタックしていて、その分コーナーで稼がなければならない。もしやり直せるなら、もう少し最高速を得られるセットアップを選ぶよ」(フェルスタッペン)

金曜の予選ではハミルトンにポールポジションを奪われた。土曜午後に行なわれた17周のスプリント予選ではスタート発進でハミルトンを逆転して勝利を収めたものの、ハミルトンは明らかに1周目の途中から守りに切り替え、攻めては来なかった。

だが、フェルスタッペンが本当に最優先にすべきは、土曜日にハミルトンに勝つことではなく、23戦を終えてアブダビGPのあとにトップに立っていることだ。そのことを考えれば、今回のノーポイントはあまりに痛い。

ハミルトンに非があるとは言っても、多くのドライバーが「レーシングアクシデントの範疇」と指摘するほど、フェルスタッペンのライン取りもアグレッシブだった。事故を避けることはできたはずだ。

「正直言って(今日のレースは全体の)23分の1でしかありませんし、まだ10戦でシーズンの半分も行っていません。だから気持ちを切り替えて、後々『イギリスGPがターニングポイントだったよね』と言われないように、この先も1戦1戦大事に全力で戦っていきたいと思っています」

ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターはこう語るが、この事故でパワーユニットに損傷があれば、年間3基の規定を超えて1度は最後尾グリッドスタートを強いられることになる。

今シーズンのフェルスタッペンは開幕から選手権争いを視野に入れ、堅実に結果を掴み取る成熟したレース運びを見せていた。しかし、ハミルトンとの間で度々繰り広げられていたアグレッシブなバトルで、両者ともに引かなければこうなるということがあらためて突きつけられた。

イギリスGPでメルセデスAMGを圧倒的に凌駕するレースを見せれば、シーズンの趨勢は大きくレッドブル・ホンダに傾くと予想されていた。しかし、現実はそうはならなかった。メルセデスAMGはマシンのアップデートでレッドブルふうの空力パッケージへと進化し、パフォーマンスを向上させてきた。

そしてこの接触事故によって、ふたりのポイント差は8点にまで縮まった。これがターニングポイントとなって、選手権は再びハミルトンのほうに傾くのか。それとも、これをきっかけにフェルスタッペンが選手権を考えた戦い方のできるドライバーへと成長するのか。

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ホンダの連勝記録は5でストップ。唯一、角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)だけが10位でポイント獲得を果たすにとどまった。アルファタウリも限られた時間でのセットアップに失敗して最高速が伸びず、DRS(※)トレインと呼ばれる集団の中から抜け出すことができなかった。

※DRS=Drag Reduction Systemの略。追い抜きをしやすくなるドラッグ削減システム/ダウンフォース抑制システム。

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初めてのイギリスGPで10位入賞を果たした角田裕毅

第1スティントを引っ張る戦略が功を奏して2台をオーバーカットし、ピエール・ガスリーは9位まで挽回していたが、最後はパンクで後退。セルジオ・ペレスがハミルトンの持つファステストラップポイントを奪い取るためにピットインし、さらにはキミ・ライコネン(アルファロメオ・レーシング)がスピンオフしたことで、角田は幸運にも入賞を果たした。だが、内容としてはかなり苦しい週末になってしまった。

長いシーズンのなかで、つまずくことは必ずある。大切なのは、つまずいた理由をきちんと理解し、二度とつまずかないようにチームとして成長することだ。

シルバーストンの大苦戦は、レッドブルとアルファタウリをさらに強くしてくれるはずだ。

米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

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