動物の「夜間救急病院」密着4日間! 響き渡る鳴き声とため息

動物の「夜間救急病院」密着4日間! 響き渡る鳴き声とため息

  • 週刊女性PRIME
  • 更新日:2020/09/16
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犬に点滴をするために、前足の毛を剃る小宮山院長(左)

「夜中に病気やケガをしたら、人間は病院に行けるが、動物にはそれがなかった。動物だって人間と同じ緊急救命医療態勢(ER)が必要。365日、24時間の緊急医療態勢こそが医療の原点だと思って、1977年から始めたんです」

【写真】小宮山院長が診察した顔面が血だらけになった猫、腫瘍が壊死したハムスターほか

東京・武蔵野市の動物病院「三鷹獣医科グループ」の理念をそう語るのは、小宮山典寛院長(72)。

この病院では、犬や猫といったペットだけではなく、鳥や爬虫(はちゅう)類、両生類などあらゆる小動物を夜間でも診る全国でも数少ない緊急動物病院だ。

瀕死の状態で運び込まれる動物と、その命を守る獣医師たちの奮闘ぶりに追った──。

ペットも「かけがえのない子ども」

9月某日の日曜日、1日目の夜11時過ぎに、オカメインコのモンジュちゃん(7歳・メス)が運ばれてきた。神奈川・横浜市から車で1時間ほどかけてきた飼い主は、

「晩ごはんをやっても目をつぶって反応がないので、心配になって……」

X線検査では、卵がお腹の中に詰まっていた。注射器でその卵の中身だけを抽出。そうした処置の末、殻も無事に排出されて、翌日には退院することに。

日が変わって、深夜2時を過ぎると、白いトイプードルのクーくん(14歳・オス)が、担ぎ込まれた。

東京・府中市から来た50代の飼い主によると、食事後に寝ていたら、急に咳(せ)き込み、ドロッとしたものを吐き出したので心配になったという。

13年前に義兄から譲ってもらい、子どもがいない飼い主夫婦にとり、クーくんは「かけがえのない子どもです」。

X線検査によれば、気管の一部に狭窄が認められ、その影響なのか肝臓や腎臓も悪くなっていた。

酸素室でゆっくり寝かせ、点滴などを試み様子をみて、翌日に退院。

「私も60歳に近いので、いつ病気になって死んでしまうか。私よりペットが長生きするのはかわいそうなので、これが最後のペットだと決めています。だから、少しでも長生きしてもらいたい」

4時に来院したボストンテリアは……

動物の病院も夜間ならではの大変さがつきまとう。ローテーション勤務だが、獣医師、動物看護師、事務など常時4、5人が待機している。

「私は獣医師を43年間するうちに、41年間は夜中の勤務。夜中に働かないと逆に調子が悪くなる」

と小宮山院長は力強いが、スタッフは青白い顔で、

「昼間はなかなか眠れない。少しでも寝たいので、徒歩や自転車などで通える範囲に住んでいる人が多い。

急患がなくても入院している動物がいるので心電図を見たり、点滴を打ったり、体温を測ったり、忙しい。夜間手当も発生するので病院の経営も大変だと思う」

空が白み始めた4時過ぎには、ボストンテリアのさくらちゃん(13歳・メス)が東京・練馬区から。飼い主によると、

「前から発作的なけいれんがありました。長くても5分ほどでおさまりましたが、昨晩から3回目で、最後は1時間以上も続いて……」

夫と子ども一緒で、

「私たち夫婦はボストンテリアが好きで、この子が2頭目。子どもが生まれる前から飼っていたので、子どもの姉といった存在です」

体温は42度にも達していて、昏睡(こんすい)状態。死亡する確率が3割ほどあると告げられた。もし回復しても、脳障害が残る可能性もあるという。

しばらく安静にして、24時間態勢でスタッフが見守ることにしたが7時ごろに永眠。

その後を取材すると、

「翌日に葬儀をあげました。悲しすぎてやりきれないが、病気を持ちながらも懸命に生きて、やっと楽になれたのかなと。私たちに囲まれて幸せな一生だったと思いたい」

2日目の夜、10時過ぎにはハムスターのマカロニくん(2歳・オス)が来院。

東京・小平市から子ども連れで訪れた飼い主は、

「夜9時ごろ、巣から出て食事をするのが日課ですが、今日に限って巣から出てこなかった。また、右手の下からお腹にかけて、なんだか腫れているような感じだったので」

院長の最初の見立ては外傷で、ひと晩は様子見となり、親子はいったん帰宅。

腫瘍ができたハムスター、血まみれの猫

その後、麻酔をかけて詳細に診てみると、大きな腫瘍(しゅよう)ができていて、それが壊死(えし)していることがわかった。

院長はすぐに連絡。

「腫瘍を手術で取ったほうがいいが、年齢が年齢だけに10%程度は死んでしまう可能性もある。どうしますか?」

照れ屋なのか、取材には少しぶっきらぼうなところもある院長だが、診察や説明の手際は抜群。

マカロニくんの飼い主は即答でOKを出し、手術をすることに。

慣れたメスさばきで、腫瘍の大小2つを切除し、ホッチキスのような金属ピンで接合。

その後、ピンをとって、糸で縫合。ネズミ大の大きさの小動物に、20針、切除と縫合で2時間近くに及んだが、近々、退院する予定だ。

この日、週刊女性が取材に入る前の夕方には、バイクにはねられた血まみれの猫が運び込まれていた。

「野良猫ではなく、地域で可愛がられている一種の地域猫のようなものですが、可愛がっていた人が見つけて連れてきました。事故の衝撃が脳にまで達していて、非常に危ない状況です」(動物看護師)

口の周辺が血だらけで、微動だにせず、口を開けたままだったが翌日には、寝返りができる程度に。しかし、予断を許さない状況だ。

奇形が見つかったペットとどう生きる?

4日目の夜の11時には、まだ小さいミニチュアダックスフントのクゥくん(2か月・オス)が西東京市から。

「先日、ペットショップに行ったら、この子がいきなり私のバッグにすがりついてきて、なついてきたんです」

と飼い主。そのわずか1週間後に突然、咳き込むようになり、病院へ。

検査の結果、気管に先天的な奇形があり、長くは生きられないこともわかった……。

ペットショップによっては、“交換”してくれるが、飼い主は悲嘆に暮れるばかり。

「この子が来て、わずか1週間ですが、もちろん可愛い。でも、今後、飼い続けるとしたら、部屋の温度調節、食事や通院などの手間もかかりそう。娘も私も昼間は仕事で家を空けますから……」

ときにはそんな慟哭(どうこく)や、元気になった鳴き声が交錯しながら、動物たちの「ER」は受け入れを続ける。

週刊女性PRIME

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