池上彰×山口二郎 衆院選で野党が政権交代するには「二者択一の構図」が重要

池上彰×山口二郎 衆院選で野党が政権交代するには「二者択一の構図」が重要

  • AERA dot.
  • 更新日:2021/10/20
No image

市民連合と政策合意を交わした(右から)れいわ新選組の山本太郎代表、立憲民主党の枝野幸男代表、共産党の志位和夫委員長、社民党の福島瑞穂党首(c)朝日新聞社

衆院選で共闘による岸田文雄政権の打倒を目指す野党。だが、共産党について否定的な見方を持つ連合や有権者もおり、一筋縄ではいかない。どう戦えばいいのか。AERA 2021年10月18日号で、ジャーナリスト・池上彰さんと政治学者・山口二郎さんが語り合った。

【画像】もし野党一本化だったら…危うかった主な与党候補と「与野党対決の行方」はこちら*  *  *

──立憲民主党が政権を取った場合、共産党と「限定的な閣外からの協力」で一致しましたが、立憲の枝野幸男代表が野党共闘にいまひとつはっきりしない態度なのも気がかりです。

山口:野党共闘はよく「ガラス細工」と言われていて、私もそれを否定しません。共産党について極めて否定的な見方を持っている連合から応援してもらいながら、共産党とも選挙協力していくというのは、本来矛盾をはらんでいる話です。ただ、理念や世界観のまったく違う政党が選挙のためだけに無理やりくっついたわけではありません。安倍・菅政権の下でも、野党は国会のなかで協力して議員立法を作っています。

池上:地方に行くほど、「結局共産党は何をやろうとしているの?」という人たちの信頼感をどこまで得られるかが重要になるでしょうね。たとえば、共産党は自分たちのしてきたことを正しかったと言い続けています。でも、「これとこれは間違いだった」「ごめんなさい、生まれ変わったんです」というくらいのことが起きると、変わるのかもしれません。いまだに前衛党神話みたいなものを持ち続けていることにも、抵抗感があるのだと思います。

山口:「究極的な理想」と「短期的に実現すべき政策」を区別して、「短期的なスパンでいえば社会民主主義政党です」と言ってくれれば話は簡単ですけど。

■投票率が上がれば変化

──共産党にネガティブなイメージを持つ人たちがいるなかで、無党派層の票田を逃す可能性はありませんか。

山口:共産党と協力すれば、「革命を目指す左翼政党と一緒にやるのか」という批判が必ず出てきます。でも、もう逃げ隠れする必要はない。「政策実現のために、共産党とも必要な限り協力します」と言っておけばいい。そもそも、共産党にそういった意識を持つ人たちは、野党に投票してくれません。小選挙区で二者択一の構造を作ると、45%くらいを取れば勝てるわけです。政治はダイナミックに動く。政治的関心を持つ人々がどれくらい共産党に票を入れるかということが、野党協力の持続可能性にとって重要な課題になってくると思います。

池上:「どうせ自民党が続く」「野党は負けるよね」と思っている人たちは、投票に行かないわけです。でも、「ちょっとやらせてみようか」という人がいると、ガラリと変わるかもしれない。(09年衆院選で)民主党が政権を取ったときも、投票率が上がりました。その後、民主党が負けて安倍政権が始まるわけですが、実は09年と前回の衆院選の得票数を比べると、自民党も票を減らしました。投票したくなるような対立構図を作れば、かなりの人が投票するということです。

山口:最近の投票率は5割ちょっとですが、これを10ポイントでも上げられれば、人数でいえば1千万人が投票に行けば、大きな変化が起きると思う。

池上:立憲民主党が衆院選への協力を小沢一郎さんに要請したことも驚きました。久しく忘れていた名前が出てきたぞ、と。

山口:ある程度の幅を持てることはいいことだと思います。小沢さんや中村喜四郎さんという自民党を知り尽くす2人が党内にいることは大きなプラスです。

池上:中村さんと言えば、自民党のなかの自民党というイメージがある人です。汚職事件の騒動で実刑判決を受けたあとも、無所属で当選し続けた負け知らずでもあります。どうして立憲民主党に所属したんでしょう。

■二者択一の構図が重要

山口:岸田さんも指摘した「民主主義の危機」を認識されていたのではないかと思います。「どぶ板」を大事にする人で、立憲民主党の中堅若手議員にも地域を回り、話を聞くことの大切さを指導しています。第2次安倍内閣発足以降、自民党の政治家は地元の人々の悩みを聞くことをしなくなりました。ですが、コロナ禍で生活が不安になるなかで、政治家に声を届けたい人たちはたくさんいます。立憲にその役割を担わせようとしているのでしょう。

池上:政治家たちが金曜の夜に選挙区に帰り、そこで聞いた話を火曜日に東京に持ち帰る「金帰火来」という言葉がありました。コロナで選挙区に帰れなくなったことも影響しているのかもしれません。

山口:政権が中央集権化された感じがありますよね。権力を批判し、奪い取るという反主流派の居場所をなくしているように思います。今回の石破茂さんを巡る状況の変化を見ても自民党には大きな危機が訪れています。

池上:逆らうとこういう目に遭うということを見せつけたというか。異論を言い出せなくなりますよね。小選挙区制度の導入は政権交代のハードルを下げるためのものでした。その意味でも、本来の小選挙区制度を有効に生かすためには、野党が強くなり、勢力が伯仲していくことが必要です。

山口:緊迫した戦いというイメージが広がれば、関心を持つ人が増え、野党への支持は上がります。8月の横浜市長選では、自民党が支援した候補者が無名の新人に大勝を許しました。

池上:テレビなどで政治の話をしていると、「どうして国民が総理大臣を選べないんですか」というコメントが視聴者からよく届きます。建前としては「議院内閣制ですから」「10月の選挙であなたも選ぶチャンスがありますよ」と言いたい。でも、それはきれいごとすぎるところがあるでしょう。

山口:選挙区で野党が割れてしまえば、漁夫の利を占めるのは自民党です。野党の使命は、候補者を一本化して二者択一の構図を作ること。そうすれば、岸田政権の本格的な継続か政権交代か、二つの道が開けます。国民が総理や政権を選ぶという構図が生まれれば、それは09年以来の快挙です。

池上:誰もが選択できるのが選挙と言えるだけの力を野党が持たなければダメですね。

(構成/編集部・福井しほ)

※AERA 2021年10月18日号より抜粋

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加