いつまで日本は金融後進国なのか?パウエルと黒田発言で明白になった日米市場の差が縮まらぬワケ=高梨彰

いつまで日本は金融後進国なのか?パウエルと黒田発言で明白になった日米市場の差が縮まらぬワケ=高梨彰

  • マネーボイス
  • 更新日:2022/06/23
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6月23日にパウエルFRB議長の議会証言があり、インフレ率や、景気後退の可能性など、米国中央銀行に誤りがあったことを認めました。この発言により米国市場の先行きの不透明感は薄まりました。それに比べ、日本の黒田日銀総裁の最近の発言はどうでしょうか?市場に不安を与える弁解的発言に終始しているように思えます。(『徒然なる古今東西』高梨彰)

パウエルFRB議長がインフレ率上昇を「驚き」と表明

より明らかに優れていると常日頃思うことが一つあります。そして、6月23日のジェローム・パウエルFRB議長による、半年に一度の議会証言でも、その一端が示されています。

パウエル議長は景気や金融政策見通しについて、議会で証言しました。1978年に作られたハンフリー・ホーキンス法(Humphrey-Hawkins Full Employment Act:完全雇用と均衡成長法)の流れを汲むものです。今でも通称として、HH法といえば半期に一度のFRB議長議会証言を指します。

パウエル議長は証言の中で足元の経済環境や利上げを開始した背景などを述べています。結論は今後もインフレ率を目標とする2%に下げるため、大幅な利上げを行う用意があるというものです。

そして大幅利上げに踏み込まざるを得ない理由として、率直に「驚くべき」インフレ率の上昇を挙げています。「見当違いだった」とアッサリ認めた次第です。

加えて「更なる驚きも起こり得る」とも。ここには「予想はする。でも常に外れはある」といった感覚が伝わります。自らの誤りを認めようとしない頑なな姿勢とは明らかな違いがあります。

誤りを認めることで信頼性を上げる米中銀

世間の目に常に晒される中で金融政策を実践し、しかもその誤りを自ら認める。これは簡単なようで中々出来ることではありません。

どうしても、言い訳や回りくどい言い回し・修辞により自分のプライド死守を優先しがちです。「出来る人」と呼ばれる人ほど、この穴に嵌ります。

相場でいえば、損失隠しみたいなものです。損を認めるのは恥ずかしいのですが、隠せば往々にして更に損失は拡大します。

世界で最も注目されている中央銀行のFedが間違いばかりとなれば、その批判はとんでもなく大きくなるはず。それでも自ら「合っているところ、間違っているところ」を示す姿勢はFedへの信認、ひいては米国の国益にも寄与しているようにみえます。

「景気後退」の発言に素直に応えた市場

だからこそ思うんです。「回りくどい言い回しで誤魔化すのは止めてくれ」と。「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」なんて冗長な看板を掲げているようじゃ…。

パウエル議長は議会証言にてインフレ退治への姿勢を再度強調しました。具体的には利上げと、米国債やモーゲージ債(住宅ローンを証券化したもの)など、保有する資産の圧縮です。

これらを急いで行うことは、お金の蛇口を急速に閉めることと同義です。景気を冷やします。パウエル議長自身、利上げ等により「景気後退も」有り得ると認めています。
景気後退を望むわけではないとも言ってはいますが、優先すべきはインフレ率低下で、それこそFedが行うべき使命だということです。

米国債市場はこの証言に素直な反応を示しました。金利低下(米国債買い)です。Fedは足元のインフレ退治を優先、ということは少し先には「景気減速とインフレ率低下」が待っている。つまりは将来を見据えた期間が長めの金利は下がるのが自然。こんな解釈かと思います。

パウエル議長が示した道のりと、米国債市場がシンクロしています。これがFedの良いところです。市場価格として具体化しやすい。と。

インフレ率推移の見通しも分かり易いため、実際の金利水準からインフレ率を引いた「実質」金利の具体化もし易くなります。これは為替レートを考える上でも欠かせない要素です。

目先の高インフレは、実質金利が目先は低い(「見た目の金利-高いインフレ率」なので実質金利は低め)、一方Fedの利上げが終わった後の実質金利は、今よりも高め(引き算のインフレ率が低下するため)との経過が見えてきます。

為替レートが実質金利に連動するならば、Fedが利上げを進める間は「実質金利低め⇒米ドル安」なんて考え方も成立します。

もちろん、為替レートの決定要因なんて星の数ほどあって一つの要因で断言なんてできません。

でも、一つ一つを整理する上で、Fedの姿勢は役立つはずです。

具体的な指針を示さぬ日銀に暴れる日本市場

円安の目処が見え難いのも同じ理由ではないでしょうか。具体的な指針が示されなければ、市場は好き勝手に暴れるだけです。

参院選が公示されました。選挙後には政府による日銀への姿勢も変わるのではなんて下馬評も出ています。それって不純な金融政策運営に見えるのですが、政治の力が強い限り否定しても仕方ありません。

何時まで経っても日本は金融市場後進国なんでしょうが、米国のインフレ同様、日本の政治動向にも目を配っていきたいところです。

まとめ

・パウエルFRB議長、議会証言にてインフレ率上昇を「驚き」と
・想定以上の高インフレを想定以上と認めるところにFedへの信認の一端があるかと
・同じ理由で円安の目処は見つかり難くなっています

MONEY VOICE

徒然なる古今東西

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