
みなさんは「老後の生活」と聞いて、どのようなイメージを思い浮かべますか?
「老後は年金収入だけで悠々自適な暮らしができる」昭和のひところであればそんな理想の老後はごくありふれた光景だったでしょう。
しかし、いまはどうでしょう?止まらない物価高、上がらない賃金、そして漠然とした年金不安。定年退職後も再雇用や再就職を通じて長く働き続ける人も増えています。
本日は現在のシニア世代の厚生年金受給額事情を紐解きながら、老後へのお金の備え方についてお話ししたいと思います。
【注目記事】【年金】みんな「厚生年金と国民年金」は本当は月いくらもらっているのか
1. 公的年金は2階建て「老後の年金収入」のしくみを整理
まずは年金の制度について整理しましょう。
日本の年金制度は「2階建て」の構造と言われるように、国民年金(基礎年金)と厚生年金の2つの年金制度から成り立ちます。
原則65歳から受給する老齢年金は、「国民年金のみ」を受取るケースと、「国民年金と厚生年金」を受取るケースに分かれます。

出所:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 被保険者のしおり」(令和4年4月)、厚生労働省「日本の公的年金は『2階建て』」をもとに、LIMO編集部作成
まず、日本に住む20~60歳未満のすべての方は、原則として国民年金(基礎年金)に加入します。このうち、第2号被保険者である会社員や公務員等は、2階部分の厚生年金にも加入するという仕組みです。
そのため、厚生年金を受給できるのは全員とはなりません。自営業や無職、専業主婦の方などは、将来国民年金のみの受給となるのです。
2. 「厚生年金の月額」ひとりで15万円超の人はどれ程いるの?
では、厚生労働省年金局「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、厚生年金保険(第1号)の年金月額をみていきましょう。
※厚生年金保険(第1号)の年金月額は、基礎年金(国民年金)部分を含みます。
2.1 【男女計】厚生年金保険(第1号)年金月額
平均年金月額:14万3965円

出所:厚生労働省年金局「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成
1万円未満:9万9642人
1万円以上~2万円未満:2万1099人
2万円以上~3万円未満:5万6394人
3万円以上~4万円未満:10万364人
4万円以上~5万円未満:11万1076人
5万円以上~6万円未満:16万3877人
6万円以上~7万円未満:41万6310人
7万円以上~8万円未満:70万7600人
8万円以上~9万円未満:93万7890人
9万円以上~10万円未満:113万5527人
10万円以上~11万円未満:113万5983人
11万円以上~12万円未満:103万7483人
12万円以上~13万円未満:94万5237人
13万円以上~14万円未満:91万8753人
14万円以上~15万円未満:93万9100人
15万円以上~16万円未満:97万1605人
16万円以上~17万円未満:101万5909人
17万円以上~18万円未満:104万2396人
18万円以上~19万円未満:100万5506人
19万円以上~20万円未満:91万7100人
20万円以上~21万円未満:77万5394人
21万円以上~22万円未満:59万3908人
22万円以上~23万円未満:40万9231人
23万円以上~24万円未満:27万4250人
24万円以上~25万円未満:18万1775人
25万円以上~26万円未満:11万4222人
26万円以上~27万円未満:6万8976人
27万円以上~28万円未満:3万9784人
28万円以上~29万円未満:1万9866人
29万円以上~30万円未満:9372人
30万円以上~:1万4816人
2.2 【男女別】厚生年金保険(第1号)平均年金月額
男性平均年金月額:16万3380円
女性平均年金月額:10万4686円

出所:厚生労働省年金局「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成
平均受給額の男女差は約6万円。この差は非常に大きく感じます。全体の平均額以上(15万円以上)をもらっている割合をみていくと、男性全体では約64%、対して女性全体では約10%という結果となりました。
女性の場合、結婚や出産、育児などで家庭に入る可能性が高いため、平均受給額が低くなっていると考えられるでしょう。
特に「女性のシングル世帯」の場合は、老後のお金対策をしっかり進めておいたほうが安心でしょう。
3. 年金額の確認
ここまでご紹介した年金額は、あくまでも今のシニア世代のもの。いまの年金水準がこの先ずっと続くとは限りません。また、現役時代の働き方や年収により、将来の年金受給額も人それぞれです。
「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で、現役時代の「いま」から年金額を確認することをおすすめします。自分がとるべき老後対策がより具体的に見えてくるでしょう。
4. 老後対策について
今回は、厚生年金の受給額事情を眺めながら、ひと月15万円以上受け取れる人の割合を見ていきました。老後の年金額には男女差・個人差があること、そして、年金のみで安心して暮らしていける人は決して多数派ではないことがおわかりいただけたかと思います。
一生涯受給できる公的年金は、私たちの老後の暮らしを支えるセーフティーネットであることには間違いありません。とはいえ、長寿時代に老後を生きる私たち現役世代は、より丁寧に将来資金の準備を進めていく必要があるでしょう。
先手先手の資産形成で、老後の安心を手に入れたいものですね。
参考資料
厚生労働省年金局「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
足立 祐一