「花粉で鼻がつまる人」がコロナにやられる訳

「花粉で鼻がつまる人」がコロナにやられる訳

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2023/01/25
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スギ花粉の飛散開始は例年並みで、九州から関東では2月上旬からだといいます(写真:ペイレスイメージズ1(モデル)/PIXTA)

全国の花粉症患者にとって、日本気象協会の昨年12月の発表は、悲報でしかなかった。今年のスギ花粉飛散量は九州~東北で前年より多く、特に四国・近畿・東海・関東甲信で軒並み200〜290%と「非常に多い」見込みだという。

飛散開始は例年並みで、九州から関東では2月上旬から。まさに目前だ。

やっかいなのは、花粉症や花粉の飛散が、新型コロナやインフルエンザから身を守ることまで邪魔してくれることだ。

「口呼吸」で崩れる免疫防御

まず、それなりにシッカリ花粉症だったら、「鼻づまり」からは逃れられない。

そのせいで無意識のうちに「口呼吸」になってしまうのが、非常によろしくない。鼻呼吸と比べて、呼吸器感染ウイルス・細菌に対する防御力という点で格段に劣るからだ。

新型コロナのエアロゾル感染で認識が高まったとおり、空気中には目に見えない病原体や異物が無数に浮遊している。しかも2月頃までは、一年で最も空気が乾燥している時期だ。関東を中心に相対湿度は50%前後まで下がっている。

本来、鼻呼吸であれば、吸い込んだ冷たい乾いた空気も鼻腔内で温められ、湿り気を帯びてから喉の方へ流れこむ。気道の粘膜には線毛が生えていて、エアロゾルに含まれる病原体などの異物を排除する仕組みになっている。

コンピューターシミュレーションと擬似モデル実験による研究でも、鼻呼吸ではエアロゾルが非常に効率的に濾過され、異物が下気道(気管〜肺)に到達するのを大幅にカットできた。

だが、口呼吸だと、吸い込んだ空気がそのまま喉や気道を直撃する。粘膜が乾燥して繊毛の働きが鈍り、エアロゾル中の病原体を除去しきれなくなる。夜寝ている間に鼻が詰まり、喉がカピカピに渇いて目が覚めた、という経験があるかもしれない。感染が起きやすい危険な状態だ。

特に、花粉症で「喉がかゆい、イガイガする」といった症状がある場合、花粉が喉の粘膜に付着して炎症を起こしている。炎症というのは免疫反応の一種で、要するに花粉を外敵と間違って必死に攻撃を加えている。

その間、ウイルスなど本当の外敵に対する免疫防御は疎かになっている可能性が高い。

しかもこれは、花粉症患者だけの問題ではない。以前の記事(「花粉症と「コロナ感染リスク」の意外に深い関係」)でご紹介したように、独ミュンヘン工科大学ほかの国際共同研究チームは一昨年、

●花粉にさらされると呼吸器ウイルスに対する「自然免疫」が弱まる
●世界31カ国のデータを解析したところ、空気中の花粉濃度が上昇してから4日後に新型コロナの感染率が上がる傾向が見られた

との論文を、立て続けに発表した。ロックダウンしない状態では、1メートル四方の空間に漂う花粉が100粒増えるごとに新型コロナ感染率が平均4%上昇し、感染率の変動の44%は花粉によって説明できるとしている。

自然免疫は、外敵の侵入に対し最前線で抵抗する。いわゆる「獲得免疫」(ワクチンや過去の感染で記憶した外敵を、抗体などの武器で攻撃・排除する仕組み)よりも原始的かつ普遍的な、第一防御システムだ。

自然免疫の正常な働きが妨げられるなら、花粉の大量飛散は、新型コロナほかあらゆる呼吸器感染症へのリスクを高めることになる。

花粉症?それともコロナ?

では実際、鼻や喉に不快な症状が現れたとき、花粉症のせいなのか、それとも風邪やコロナ、感染によるものか、どう見極めたらいいだろう? ポイントは、「発熱」と「喉の痛みの変化」だ。

新型コロナやインフルエンザは、呼吸器感染症ではあるが、結局のところ全身疾患だ。

発症すれば、微熱であってもほぼほぼ発熱するし、頭痛がしたり、体がだるかったり、気分が優れなかったりする。胃腸に症状が出ることもある。また、喉の痛みがある場合は、最初はごく小さな違和感から次第に広がって強まっていく。

他方、花粉症の場合は、発熱はまずない。鼻の症状が強まると酸欠で頭がぼーっとすることはあるが、頭痛は少ない。

鼻以外で現れやすい症状は、圧倒的に目のかゆみだ。肌荒れを起こす人も少なくない。また、喉にも時には症状が出るが、イガイガしたりかゆかったりするのであって、痛みがどんどん強まっていくようなことはない。あくまで一過性だ。

「これ、どっちだろう?」といった混乱を回避するためにも、花粉症の人は早い時期に服薬治療を始めておきたい。花粉の飛散前、自覚症状が現れる前から飲み始めたほうが、しっかりと症状を抑え込むことができる。まだの人は、今すぐに!

近年この時期に目や鼻がすっきりしないなど、花粉症が疑われる人も、一度早めに受診しておくのがおすすめだ。

「鼻うがい」で症状の緩和と感染予防

ここからは、口呼吸に陥らないための「鼻づまり」対策を見ておこう。

花粉症でも花粉症でなくても、花粉はできるだけ物理的にシャットアウトしたほうがいい。マスクを正しく装着する、帰宅時には玄関前ではホコリをはらう、洗濯物は外干しでなく乾燥機や部屋干しにするなど、小さな心がけを継続したい。

花粉フリー生活を徹底するなら、おすすめは「鼻うがい」だ。

前回の記事(「年末年始の発熱」で慌てる人の“3つの間違い")でも、生理食塩水による鼻うがいを1日2回、2週間続けることで、新型コロナの重症化リスクを8分の1に減らせるというアメリカの研究を示した。

私も、鼻うがい実践者だ。ちょっと鼻づまりを感じたときや、花粉症の時期には重宝している。当然だろう。ウイルスや花粉を、鼻水もろとも一掃できる。そして慣れると、とにかくスッキリして気持ちがいい。

具体的なやり方は、ネット検索すればすぐ見つかるが、注意すべきは2つだけ。①体液と同じ浸透圧の「生理食塩水」を、②体温に近い温度(40℃前後)で使うこと。そうすれば刺激が最小限に抑えられ、鼻の粘膜を傷つけて逆効果になることは避けられる。

鼻症状がある時はもちろん、できれば1日3回、起床後と帰宅後と就寝前に行いたい。

といっても手間には違いないので、鼻症状がひどくないなら、帰宅後の習慣にしてはどうだろう。近年、アレルギー症状が夜間に悪化するメカニズムが明らかになってきている。ホコリなどとともにウイルスや花粉がトラップされている鼻腔内を、寝る前までにリセットしておきたい。

もう一つ、鼻づまりに意外な効果を発揮するのが、「足を温める」ことだ。

非常に面白いことに、足湯などで足を温めると鼻の粘膜の温度が上昇し、くしゃみなどのアレルギー症状が緩和される。このことは、もう20年以上も前から観察され、医学雑誌にも報告されている。

もちろん足ではなく、鼻の粘膜を直接温めながら加湿してもアレルギー症状を一時的に改善できる。耳鼻科でスチーム療法を受けたことがある人もいるだろうし、お風呂に入ると鼻が通って楽になる経験は、誰しも経験があると思う。

ただ、スチームの器具を持っている人はそういないし、お風呂も手軽とは言いがたい。そこでおすすめするのが、「足湯」と「レッグウォーマー」だ。どちらも、足の冷えを取るだけで全身が温まり、鼻の症状が急速に改善するのを実感していただけると思う。

それだけではない。鼻の粘膜が温まると、風邪のリスクも下がるようだ。

鼻腔内の温度が低いと、風邪の一番の原因であるライノウイルスが増殖しやすいことが、アメリカ・イエール大学の研究によって明らかになっている。37℃と33℃では、後者のほうが増殖しやすい。より低い温度のほうが、免疫細胞の働きが鈍るためと見られている。

足を温めるだけで花粉症対策にも風邪対策にもなる、という一石二鳥。ぜひ取り入れてみていただきたい。

飛散シーズンが終わったら「舌下免疫療法」を

最後に、花粉症の人にはぜひ「舌下免疫療法」を頭に置いておいていただきたい。

簡単に言うと、あえてアレルゲン(スギ花粉エキス)をごく微量ずつ体に入れ続けることで、体に慣れさせてしまおう、という治療法だ。舌の下に錠剤もしくは液体薬をしばらく置いておき、飲み込むだけでいい。

治療を受けた7〜8割の人が効果(完全な症状改善、もしくは長期の改善や軽快)を得られるとされている。抗アレルギー薬の量を減らすこともできるし、何より快適に過ごせる。

ただし、基本的には月1回は通院し、少なくとも3年以上続ける必要がある。また、花粉が飛散している間は治療を開始できないので、初めての人は5月頃まで待たねばならない。

それでも試していただければと思うのは、私自身がその効果を体感しているからだ。夜は快眠、朝起きて一番に“鼻から”吸う空気は、本当に美味しい。料理の味もよくわかるし、仕事もはかどる。長丁場の治療にはなるが、月1回の通院でそんな快適な毎日が手に入るなら、なかなかのコスパではないだろうか。

(久住 英二:ナビタスクリニック内科医師)

久住 英二

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