「とにかく黒が好き」透け透けの“日本一の川の上流部”で気難しいイワナと知恵比べ

「とにかく黒が好き」透け透けの“日本一の川の上流部”で気難しいイワナと知恵比べ

  • BRAVO MOUNTAIN
  • 更新日:2023/05/26
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涼しげな初夏の渓で釣れたイワナ。ヤシオツツジの花がポツポツと咲いて、新緑に鮮やかなコントラストをつけていました(撮影:杉村航)

初夏から夏へと向かっていますね。山奥の渓流でイワナを求めるのが、楽しい季節になってきました。

関連:◆【画像】「ボロボロになっていますが」実際に釣れたフライ!

日本一長い川、信濃川は長野県では千曲川という名前で、東信から北信を流れています(新潟県に入り信濃川と名前を変えます)。その上流部、源流域は高原レタスで有名な川上村にあります。寒冷地としても有名ですが、ようやく“涼しい”と感じられる陽気になってきましたので、フライロッドを手に足を運んでみました。

■「惜しかった〜」まずは太い流れでヤマメ狙い

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小海町を流れる早朝の千曲川。いい本流ヤマメが潜んでいそうでした

上信越自動車道を降り、千曲川に沿って国道を上がっていきます。流れは里川、中流域の様相です。その途中、気になるポイントが何箇所かあり、ヤマメ狙いで竿を出してみました。

朝の気温は8℃で、寒さを忘れつつあった身体に風が沁みます。厚手のフィッシングジャケットを着込み、良さそうなポイントへダウンでフライを流し込むと、予想を遥かに上回るヤマメが追ってきました。が、水面直下からフライ越しに目があったようで、Uターンして流れに帰っていきました……。

簡単に諦めきれるサイズではありません。渡渉して、広い流れを上流からぐるりと回り込み、下流からじわりじわりと先ほどのポイントへ近づきます。

「そろそろ(釣り人の存在を)忘れた頃かな」流れの落ち込みでフライを沈ませ、水流に馴染ませながら引いてくると、狙い通り! 手ごたえ十分なフッキングでした。ロッドを絞る強烈な引きに大興奮、現れる魚体に口元が緩んだ瞬間、フックアウトしてしまいました。

車に戻ろうと河原を歩いていると暑さを感じます。興奮したせいかと思いきや、すでに気温は24℃まで上がっていました。本来の目的地である上流部へと向かいました。

■「魚影は濃い」連続するショートバイト!

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飲めそうなほど澄んだ水に心も弾みます

高原レタスの畑を横目に林道の終点まで車を走らせました。駐車場は平日にも関わらずすでにいっぱいです。登山者がほとんどだとは思いますが、なかには釣り人もいるでしょう。出遅れた感があります。

標高1,400mあまり。気温は16℃、水温は10.6℃で、涼しく気持ちのいい風が川面を吹き抜けます。それにしても透明度の高さはピカイチで、水が存在しないかのよう。川床までクリアに見通せます。ですが、魚の姿は全く見えません。岩陰に隠れているのでしょう。

ウェットフライを結び、こちらも岩陰に身を隠しながら静かにフライを流しました。さっそく小気味いいアタリと共にイワナが力強くラインを引っ張ります。

「思ったより小さいな」なんて思った瞬間、無意識に気が緩んだせいでしょう。ジャンプして身を翻し、水に溶け込むように姿を消してしまいました。

しかし、その後が続きませんでした。釣り人が入渓しやすいせいでしょう。プレッシャーを感じている魚たちは、かなりスレているようでした。次から次へとアタリ、ショートバイトはありますが、全くフッキングしませんでした。

■「何を食べているの?」ライズの謎!

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きらめく水に溶け込むような美しいイワナ

緩やかな瀬が強弱のリズムを刻み流れています。いかにもヤマメが好きそうなポイントで、ドライフライに切り替えました。すると、ぽつりぽつりとライズ(水面付近での魚の捕食行動の表れ)が起こっています。ライズの主はイワナです。大小さまざまなカゲロウやトビケラが飛び回り、水面を流れていきますが、白っぽい虫は無視されているようです。

しかしながら、ライズフォームから水面を流れる“何か”を捕食しているのは間違いなさそうです。まずはカワゲラ、よくパイロットフライにするアリ、そしてずっと付き纏っているブヨをイミテートした、小さく黒いフライを流しましたが反応はありません。

続いてコカゲロウやトビケラのパターンを試してみます。種類やサイズだけでなく、羽化直前の状態や失敗して溺れたものなど、状態に応じたバリエーションも次から次へと……。相変わらず断続的なライズはありますが、フライは無視されています。いよいよ後がなくなってきました。フライボックスの隅に何パターンか入っていたスペント(十字に羽を広げた状態)のフライを結びます。

これが魅力的だったようで数投に一度くらいイワナが飛び出しました。ですがフッキングしません。フライが合っていないようです。かと言って他のフライでは歯が立ちません。オオマダラ(カゲロウ)を模したパターンで見事にフィッシュオン! サイズの割に重たい引きです。今度はバラさず、美しいイワナが手元で輝いていました。

■謎は解けた! 「とにかく黒が好き」

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小さめの黒いストーンフライ(カワゲラ)パターンに飛び出したイワナ

リリースする前に素早くストマックポンプを入れ、胃の内容物を確認させてもらいます。消化が進んで原型を留めていないカゲロウが断片的に入っていました。ただ、一目瞭然で目立っていたのは、黒いカワゲラやブヨでした。共通項は「とにかく黒が好き」です。

さっそく小さめの黒いカワゲラをイミテートしたフライを流してみます。すると、なんということでしょう! さっきまでとは打って変わったような高反応です。どうやら、最初の読みが当たっていたようなのですが、自信をもって流していなかったせいで反応がなかったのでしょうか……。

帰路の車の中、特におでこと手の甲がブヨに刺されて“ぼこぼこ”になっているのに気づいたのでした。もうすぐ梅雨、そして夏にかけて刺す虫たちの活動も盛んになっていきますね。

「まさかのトラウト!」日本一の川の支流! 釣れたのに複雑な気持ちになる渓流魚の正体

杉村 航

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