論文盗用者を擁護、韓国社会の困った“快感のツボ”

論文盗用者を擁護、韓国社会の困った“快感のツボ”

  • JBpress
  • 更新日:2021/01/14
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(写真はイメージです)

(藤原 修平:在韓ジャーナリスト)

韓国史の「スター講師」が、論文盗用の渦中にある。

その人、ソル・ミンソク氏については、前回の記事(「韓国、『反日』エスカレートでついに米国も敵扱い」https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63593、2021年1月12日)のなかで紹介した。

ソル氏についてはその記事で終わりにするつもりだった。だが、論文盗用事件を取り巻く韓国社会の反応が興味深いので、彼のことをもう一度だけ取り上げることにした。またその関係上、前回の記事ではあえてスルーしたソル氏の似非(えせ)歴史講師ぶりについても、後半で触れる。

ソル氏とは、大人だけでなく子どもにもわかりやすい語り口で、古代から現代までの「韓国の歴史」を長年にわたりテレビで講じてきた人物である。韓国近代史で日本のことを語るときには表情をこわばらせて反日感情を露わにする。その反日感情はどんどんエスカレートし、私が視聴した昨年(2020年)末の番組では、戦前の朝鮮半島での日本の“悪行”を見てみぬふりをしたという理由から、反米感情までも煽っていた。

ところがその放送からわずか3日後の12月29日、ソル氏は自身の修士論文に盗用があったことを認め、すべての番組からの降板を発表したのだ。

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韓国の人気歴史講師、ソル・ミンソク氏の著書『ソルミンソクの韓国史特講

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日本の朝鮮支配を厳しく糾弾したソル氏

ソル氏の韓国史観は、韓国的という意味で分かりやすい。朝鮮半島に勃興した国々は、本来は理想とする姿を実現して繁栄を成し遂げるだけの力があったはずだが、常に外国からの力に圧迫されたため、それができなかったというものだ。

その典型が、20世紀初頭における日本による朝鮮半島支配だという。朝鮮を搾取した存在として大日本帝国を糾弾するとき、必ずと言ってよいほどソル氏の語調は強まる。

韓国の教育現場で韓国史を講じることは「正義」を講じることだと思っている教育者は多い。だから、小学校高学年から高校までの歴史教育では、往々にして偏見に満ちた歴史教育が行われる。2019年10月にはソウル市の仁憲(インホン)高校の学生が、教師から反日行為を強制されたと告発している。

ソル氏もまた、そういう歴史教育者の1人であった。朝鮮を支配した日本を吊し上げ、そのうえで、日本支配がなければ朝鮮民族が達成しえたであろう栄華を論じるソル氏の講義を聞くことは、韓国的歴史観に染まった人には快感であったはずだ。

ところが、そうした正義の男が、なんと、修士論文で盗用していたのだ。私もそこまでは予想していなかった。韓国の経験値がまだ足りないのだろう。

間違いだらけの歴史講義

問題の論文は、2010年に延世大学教育大学院に提出された『韓国近現代史の教科書叙述に顕われる理念論争研究』である。韓国メディア各社によると、盗用率は52%、盗用元は2008年にある大学院生が執筆した論文と報じられている。つまり、半分以上が他人の論文からそのまま丸写しされていたり、言葉遣いだけ変えられていたのだ。

所属大学院と修士論文のタイトルからわかるように、ソル氏は歴史家ではなく、教育者である。だが、いくら歴史の専門家ではないといっても、テレビに出て歴史を語る以上は、歴史上の出来事を正確に話さなければならない。

ところが、彼がこれまで番組内で語った内容について、「事実と異なる」という意見が昨年12月より急増している。

例えば、前回の記事でも言及した「ソル・ミンソクの世界史まる裸」の第3回(12月26日放送)で、ソル氏は昭和天皇の人間宣言について、昭和天皇が自分のことを「神の後継である」と宣言した、と説明した。この事実歪曲については、オーマイニュースが12月27日付で指摘している。

あるいは、岸信介元首相を何度も「戦犯」と呼び、安倍前首相や、安倍政権を継承すると宣言した菅首相もその一派だと言い放つ。岸元首相は戦犯としての疑いをかけられたが結局は無罪となったので、「戦犯」と断じるのは歴史の歪曲である。

だが、こうした見方は韓国で今に始まったことではない。そのせいか、この部分について指摘する韓国メディアは1つも見当たらない。

ソル氏がこの放送で言いたかったのは、そうした天皇や政治体制のもと、戦後の日本が戦前の体制のまま存続したということだ。戦前の日本をナチス・ドイツと同一視する歴史観も登場した。

それともう1つ。高校世界史の基礎中の基礎についてもソル氏は捻じ曲げる。その前の週に放送された同番組の第2回では、エジプトのアレクサンドリアにアレクサンドリア図書館を建てたのはアレキサンダー大王だという、耳を疑いたくなる説明をしているのだ。

細かいところを探せば、もっともっと出てくるらしいのだが、これだけ並べれば十分だろう。揚げ足取りは個人的には好きではないし、勝手に吹聴させておけばいい。

ソル・ミンソク氏は復活する?

それよりもこれが韓国かと改めて思ったのは、論文の盗用を報じるニュースのコメント欄を見ると、ソル氏を擁護して応援する書き込みが圧倒的に多いことである。

「ソル氏のおかげで子どもが歴史に興味をもった」や「韓国の歴史がこんなに面白いと思わなかった」といった言葉が並んでいる。

それはそうだろう。なぜなら、ソル氏が語ってきたのはファンタジーなのだから。

日本では「反日映画」と呼ばれる日本時代を題材にした韓国映画は、事実と創作をごちゃ混ぜにして、ファンタジーでストーリーを膨らませたエンタテインメントである。「悪しき日本は成敗されるべき」と思う人たちにとって、それは快楽以外の何物でもない。

韓国社会は、事実に忠実である前に、そうした韓国的正義の快楽を求めるのだ。

そうした需要があるのだから、ソル・ミンソク氏は、またどこかで復活を遂げるに違いない。

藤原 修平

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