卓真、ソロ作品に滲む“一人の音楽家として在りたい姿” 10-FEETでの豊かな出会いから生まれた新たな一歩

卓真、ソロ作品に滲む“一人の音楽家として在りたい姿” 10-FEETでの豊かな出会いから生まれた新たな一歩

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  • 更新日:2021/11/26
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卓真

10-FEETのTAKUMA(Vo/Gt)が、卓真としてのソロ名義で11月24日にデジタルシングル『軍艦少年』をリリースした。バンドでの1stシングルから実に20年経ってのソロデビュー。10-FEETのアイデンティティの1つでもあった“爆音のミクスチャーロック”を脱ぎ捨て、アコースティックギターを片手に、弾き語りを軸にした作品となっている。静かなピアノとフォーキーなメロディ、そして歌。10-FEETのバンドサウンドを想像しながら再生ボタンを押すと、驚くほどシンプルな楽曲が聴こえてくることだろう。しかし、ひとたび聴いてみれば、卓真という音楽家のストレートそのものであり、日々のどうにもならない苦しみや悲しみを昇華してきた作詞家/ソングライターとしての歩みも、美しいメロディに乗せて歌い上げてきたシンガーとしての歩みも、この新しい一歩へしっかり結実していることがよくわかる。

10-FEETという強靭な3本柱がない状態で、それでも地に足をつけて歌っていくことがあるとしたら何なのか。それを伝えるためにはどうしたらいいのか。「軍艦少年」という曲は、主題歌になっている映画『軍艦少年』のストーリーとも相まって、もがく気持ちをそのまま描くことで目の前の壁を乗り越えていく原動力になるという、まさにドキュメントのような1曲。自問自答するなかで実感した、音楽が自分にもたらすものについて、卓真にじっくり語ってもらった。(編集部)

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「曲に対する向き合い方がすごく変わった」

ーー表題曲は映画『軍艦少年』の主題歌になっていますが、今回10-FEETとしてではなく、卓真さんのソロでやるというのは、どういう経緯があったのでしょうか。

卓真:原作者の柳内大樹君がずっと友達なんですけど、あるときに「お前の声が好きやから、1人で歌ってる曲を聴きたいんや」とオファーしてくれたのがきっかけです。これまで弾き語りのゲストで呼ばれることはたまにあったんですけど、10-FEETから行くという感じだったので、ソロでやる感覚は初めてで。

ーー柳内さんの想いに答えて、声の強みを活かして曲作りしようという感覚もあったんですか。

卓真:いや、そこに関してはあんまり自信がある方ではないので……。原作も知っていたし、楽曲の世界観に合わせて歌えばいいのかなと思ってましたね。10-FEETだったら、3人で集まってアレンジする余地を残してデモ作りを終えるんですけど、ソロに関してはデモの時点で、アレンジもある程度完結していた方がいいなと思っていたので、曲作りの段階で詰めていって。歌はあまり表現方法を考えずに、自然に出てくる歌い方のままで、余計な着色しないことを意識していたかもしれないです。ここでファルセットを使おうとか、霧がかったようなウィスパーボイスを使おうとか、そういう計算もなくて。

ーー10-FEETでは言わないこともあえて言ってみようとか、そういうことも当初は考えていたんでしょうか。

卓真:10-FEETでやっているときは、バンドサウンドと合わさることも大事にするから、同じことを言うにしても、言い方を工夫したりしてすごく突き詰めているんです。そのままやると引っ掛かりがないのかなって気がするから、捻ったりすることによって、ハイブリットでいいものができると思っていて。今回のソロ曲でそれを全くやってないわけではないんですけど、バンドでやってるときほどではないですね。もちろんしっかり作り込んでますけど、一つひとつのアレンジを凝ったものに突き詰めなくても、パッと思い浮かぶアイデアを楽曲が受け入れてくれるというか。演奏と歌でちゃんと表現していけば、アコースティックでシンプルにやっていても、いい曲ができるんじゃないかなと思っていました。まあ今後もそれでどこまでいい曲ができるかは、まだわからないんですけど。

ーーそういう想いで制作していって、実際にでき上がった楽曲を聴いて感じたのはどんなことでしょうか。

卓真:ここは弾き語りならではの表現の仕方だなと思うものや、バンドに持ち帰った方がよくなるなと気づいたこともたくさんあります。キーボードとギター中心の少ない音数になっているんですけど、一つひとつがはっきり聴こえるので、その隙間を大事にしていくことがソロをやっていて一番面白いなと感じるところですね。ソロであってもバンドであっても、「聴きどころではないけど、ここをしっかり作らないと、曲のよさが引き立たへんな」という部分がすごくよく見えるようになったかもしれないです。それは別にサビっていうことじゃなくて、何気ないブリッジとか、Aメロ/Bメロの細かいところだったりするんですけど。そういう自分の中での曲に対する向き合い方はすごく変わった気がするかな。

「表裏や多面性、奥深さを表現したい」

ーー今回は「軍艦少年」という曲名だけあって、映画が曲に大きく影響していることは間違いないと思うんですけど、卓真さんは『軍艦少年』という作品からどんなことを受け取っていたんでしょうか。

卓真:自分から逃げないことが1つのテーマとして採り上げられている映画やと思うんですけど、自分と向き合うことをわざわざテーマにするまでもなく、僕自身もそういう曲を書くことが多かったので。逃げたくなる気持ちを抱えていたときの自分に、自問自答するようなメッセージが書けたらいいなと思っていましたし、それはできたと思います。でも、悔しがっている自分に対して、「こうやっていこうな」とまでは言ってないんですよ。単純に「ああすればよかったな……」と歌うだけで、「逃げてはダメだ」「もっとこうやっていこう」っていう曲になっていく。むしろ「逃げないぞ」と強く思っている自分とは、真逆の感情の歌になっているのかなと思いますね。

ーーそれはサビに顕著に表れていますよね。〈何処かにあるなら 何処かにあるなら/同じものやそれを忘れさせる様な/違うモノでもいいから〉と、〈こたえがあるなら こたえがあるなら/頭の中探してても 見つからないモノを/明日も探して〉という二段構成のサビが続きますけど、忘れさせてくれるものにすがる気持ちと、答えを探していこうという前向きな気持ちがコントラストのようになっていて。そこは意識的だったのでしょうか。

卓真:うーん……。結局どこかにあるならと言っても、答えなんてどこにもないねんな、という思いそのままなんですね。だから全然希望に満ちてないですけど。いろいろうまく行って希望に満ちているときは、自分が元気であることが多いじゃないですか。でも、希望がないときに希望に満ちた曲を聴くと、逆にしんどいことがあるので。それだったら「しんどいよねえ」って言われて、僕も「しんどいですよね。でもどうせやるしかないですもんね、なんとかもう1日頑張りますか」みたいになった方が、癒される人間なので。そういう歌になればいいなと思っていました。

ーーとても卓真さんらしいなと思うんですけど、そもそもそういう歌を作りたいミュージシャンであるというのは、今考えるとどうしてなんでしょうね?

卓真:そうやなぁ……。きっと最初からそういう風に思っていたと思うんですね。乱暴に括ると、自分が作ってきたのは、すごくハッピーで勢いがある曲と、そうじゃない暗い曲、その半々だと思っていて。たまに詩的な表現とか、クリエイティブで新しいことにチャレンジするときもありますけど。

ーーミクスチャーロックの核がしっかり宿っているからこそ、新しいサウンドと結びつくことによって、新鮮なのにど真ん中の10-FEETらしさが出る。近年では「ハローフィクサー」あたりはまさにそんな曲でしたよね。

卓真:そうですね。そういう曲もありつつ、ハッピーでノリノリな曲ももちろん大好きやから作るんです。だけど、やっぱりしんどいときにどんな人が側にいてくれて、どんな言葉をかけてくれたのかっていうのが、自分の中では一番重要なことで。優しくて前向きな曲やとしても、苦労や悲しみやコンプレックスが裏側にあるんだろうなと想像できて、そこに共感して自分も頑張ろうかなって、重い腰を上げるような場面が何度もあったので。むしろハッピーで元気なときは、別に音楽も必要ないくらいやなって思うこともあるんです。ただただ痛快な曲がかかっていれば、BGMとして成立するというか。だから自分の音楽に極端な二面性があるっていうのは、合ってるのかなと思うんですよ。

ーー人間の感情は様々ですし、その時々でアーティストが表現する音楽も変わっていきますよね。

卓真:僕も曲を作るんやったら、そうありたいなって思うんです。でもさっきの話みたいに、悲しさや悔しさをそのまま歌っても、しっかりとそれを乗り越えていくものになるというのは、不思議やなって思う。「こんなに悲しいことがあったんですよ」と僕が話しても誰もハッピーにならないですけど、なぜか歌にすると、そうやって伝わっていくんですよね。それを聴いて「この人にもこういうことがあったのかな」と思ってもらえればいいなと。僕はそういう作品が好きですから。

映画や漫画で一見ハッピーエンドじゃない作品があったとしても、それは見ている人を不幸にしたいわけじゃなくて、その奥に何か伝えたいことがあるから、そうなっているわけで。「なんでこんなに悲しい終わり方にしたんやろう?」って作者目線で考える人もきっと多いと思うんですよね。そうやって1つの作品を通じて観る人と作者との対話というか、メッセージの感じ合いが生まれるのが面白いなと思う。僕はそれを音楽でやっていて、柳内君は漫画で表現している。音楽も漫画も映画もいろいろなメッセージの伝わり方があると思うので、自分が音楽を作っていく上では、常に表裏や多面性、奥深さみたいなものを、押しつけがましくない範囲でできたら、いい作品なんじゃないかなと思います。

「ファンや周りの人たちが豊かな音楽人生にしてくれた」

ーー今のお話にもあったように「軍艦少年」は過去を振り返りながらも、起きてしまった出来事や後悔自体を否定しているわけではなく、そのまま歌っているんですよね。10-FEETの音楽にも通ずることだと思いますけど、そうやって作るのはどうしてだと思いますか。

卓真:否定したいけど、今言われたように消えない事実なので、せめてそれを一緒に実りあるものにしていけたらいいなと思うし、そういう友達が欲しいなとか、今晩いてくれたらよかったのになって、思うことがあるので。それが自分にとっては音楽なんですよね。

ーーでも、そうやって苦しさや悔しさを描きつつ、それだけじゃないメッセージまで多面的に伝えきるには、響かせるだけの説得力とか、歌うことによる責任感も多かれ少なかれ伴うと思うんです。薄っぺらな表現では当然届かないですけど、バンドではなくソロでそこに踏み出したということは、ひとりのシンガーとして表現できるという自信や意識があったからじゃないかと想像していたんですけど、いかがですか。

卓真:うーん、どうやろう…………。ソロで一緒に演奏してくれているメンバーはめっちゃ上手やし、それだけじゃなく味もあって、いいプレイヤーばっかりなんですよね。自分のギターと歌に関しては、今までは勢いのあるバンドサウンドがあったから露呈せえへんかっただけで、まだまだ物足りない部分、下手な部分が如実に出ているなと思っていて。1人になって、また違った表現になったという意味では面白いかもしれないですけど、それは10-FEETの自分を知ってくれている人に限定されたものであって、1人のソングライター/シンガー/ギターの弾き手として見られたときに、レベル低いなと自分では思っているところが正直あるんです。

だけど、そこに情熱を持って、すごく真剣には取り組んでいるんですよ。歌が下手やし、曲もしょうもないと言われるようなレベルなんかなと、どこかで思ってる節があるけど、「なんか歌詞はいいよね」とか、少しでも感じ取ってもらえる部分があるならば、作るたびにどこかしらよくなっていくはずやとも思っていて。よくしていこうと思っているし、よし悪しだけじゃなくて、面白みとか聴き応えとか、1曲1曲が何かしら次の曲に繋がっていくんじゃないかなと思っています。

ーーなるほど。

卓真:だから歌でも比喩表現を使ったり、回りくどいメッセージにしてみたり、真逆のことをあえて言ってみたり、いろいろしてみるわけなんですけど、そういうちょっと湿度の高い言い回しって、悪い言い方をしたら重かったり、余計なお世話だったり、説教臭いものになりかねない。だから、なんというか……作り手としてはそういう思いを伝えたいんだけど、「ちょっと重たい歌詞はどうでもいいねん」っていうくらいにしか聴いてもらえてないって思っていた方が、楽曲を聴いてもらう立場としてはいいんじゃないかなって思うんです。それでも次に繋げていくためには、できることに真っすぐに取り組んで、まだレベルが低いものであったとしても、「ソロ名義として、一番情熱を込めて作ったものがこれです!」と言える音楽をしっかり作っていかなくちゃいけないなと。自分に向き合う心構えや込める熱量、歌やギターの技術も含めて、今出せるもののベストにトライできているとは思うので。

ーーお話を聞いていると、かなりシンガーとしての初心に立ち返っている印象も受けますが、10-FEETとしての20年以上のキャリアを1回白紙に戻して、新しいチャレンジをしているという感覚も強いのでしょうか。

卓真:白紙に戻す/戻さないっていう意識は特にないですね。ただ、今までやってきたことが生きる瞬間もあれば、逆に邪魔になる瞬間もあって、それは10-FEETをやっていても同じことが言えるんです。バンドでも1人の作業で完成させていくことは多いですし、そこで想像力を広げて、どれくらい楽曲に似合うアレンジを見出していくか。どのように楽曲と向き合って、濃密な関係を作り出していくかというのは、やっぱり難しいですよね。まあ相変わらず僕が慣れてないだけかもしれないですけど(笑)。演奏も、同じバンドでキャリアを重ねれば重ねるほど、手癖が増えたり、得意技に頼ることが増えてくると思っているので、今ソロでやっているチャレンジや制作の仕方、頭の使い方や熱量は、10-FEETに持って帰れていることがたくさんあるなって思います。今後どっちにも生きていくんだろうって。

ーー映画『軍艦少年』では軍艦島という場所を象徴にしながら、主人公たちが“自分にとって何が大切か”に気づいていって、それを守るために逃げないで闘う姿が描かれていました。卓真さんもそういう闘いをしてきたミュージシャンだと思いますが、今回ソロという表現方法に挑んで、改めて自分にとって大切なことに気づいたとしたら、それは何だと思いますか。

卓真:音楽以外に自分はやったことがないから、それ以外に何ができるんかなっていうのはよく考えていて。いろんな歌詞を書いてきたけど、自分ってそんなに人間的に深みあるのかなとか思ったり、あるいはそれを歌詞としてじゃなく、普通に口にしてみたときに、人格者みたいな人たちに聞いてもらって、「こいつはすごい人やな」と思ってもらえるんだろうかと考えたら、全然そんなことないなって。すごい人と喋ってみたら全然言葉が出てこなかったりするし、自分がいろいろトライしてこなかったから、音楽以外にできることってないんですよね。自分のそういう言葉も、音楽に混ぜてきたからおもろいと思ってもらえたのかなって思うと、やっぱり音楽に出会えてよかったねって自分に思うことはあるかな。

ーーでもそこに気づけたということは、音楽を通して得てきたものに対しても、自覚的になれたということですよね。

卓真:そうですね。結局出会ってきた人に恵まれたというか。たくさん応援してもらって、ファンや周りの人たちが豊かな音楽人生にしてくれたんやなと、リアルに思うようになりました。それは一緒に仕事をしていく人、バンドの先輩や事務所のマネージャー、レコード会社の人もそうだし、今回関わった映画会社の人たち、映画という作品を情熱持って作っている人たち、柳内君みたいな漫画家や、インタビュアーの方と話していてもいつも思うことで。そういう人たちに生かしてもらって、成長させてもらっているんだなと思ったので、その環境が続いて、さらに面白くなっていったらいいなと思うんです。そのためには、それに恥じない気持ちで、いい音楽を作って、面白い音楽家になれるように、もっともっと情熱を持ってやらなくちゃいけないなっていう想いが日に日に増していってますね。
(信太卓実)

信太卓実

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