【独白】プロテニス選手・西岡良仁がスタートアップへの投資を決めたワケ

【独白】プロテニス選手・西岡良仁がスタートアップへの投資を決めたワケ

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2020/07/01
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世界ランキング48位、日本ランキング2位──錦織圭に続く、日本の男子プロテニス選手として大きな期待が寄せられている、西岡良仁。2020年2月に開催された、ATP250シリーズのデルレイビーチ・オープンでは準優勝し、世界ランキングの自己最高位を更新するなど、世界のトッププレイヤーの仲間入りを果たしている。

最近は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)によって、ATPツアーの中断が続いているが、実は西岡、数年前からテニス以外の活動も行なっている。

2017年6月にユーチューブチャンネル「yoshisチャンネル」を開設。テニスはもちろんのこと、テニス選手、トレーニングの方法、食事内容、海外のことについて発信を続け、現在チャンネル登録者数は約2.8万人を記録している。

そんな西岡が、新たにスタートアップへの投資を始める。国内最大級のスポーツメディア「SUPOSHIRU(スポシル)」とD2Cブランド「TENTIAL(テンシャル)」を手がけるTENTIALは7月1日、アカツキ、MTG Ventures、セゾン・ベンチャーズ、西岡良仁を引受先として資金調達を実施したことを発表した。

今後、TENTIALは世界で活躍するアスリートの視点を取り入れ、新商品の開発やグローバル展開へ向けて事業を加速させていくという。

昨今、本田圭佑長友佑都を筆頭に、アスリートがスタートアップへ投資する事例は増えてきているが、なぜ西岡は”投資”の決断を下したのか。その胸の内を聞いた。

怪我をきっかけに、テニス以外の活動も

僕がテニス以外の活動にも興味を持ち始めたのは、今から3年前。2017年に左膝前十字靭帯を断裂し、ツアー離脱を余儀なくされたことがきっかけです。そのときにテニス選手としてテニスだけするだけでなく、もっと他の事もしていかないといけない、と思いました。

ご多分に漏れず、テニス選手もテニス以外のことをしようとすると、「本業に集中しろ」「テニスだけやっていればいい」と言われるのですが、いざテニスができない状況になると、本当に何者でもなくなってしまうんですよね。将来を考えたとき、テニス以外のこともできた方がいいと思い、怪我をきっかけに投資の勉強や、ユーチューブの勉強を始めたんです。

ユーチューブチャンネルを始めたきっかけは、もともと自分がユーチューブを好きだったこと、怪我で動けずに時間を持て余していたこともありますが、何よりも大きかったのが「テニスをもっと多くの人に知ってもらいたい」という思いでした。

当時、錦織圭くんと大坂なおみちゃんがツートップとして日本中の注目を集めていたのですが、他の選手にはなかなかスポットライトが当たらない。その原因を考えてみると、テニス選手は海外遠征が多く、日本にいることが少ないので取材が受けられず、そもそも露出の機会が少ない。また、試合開始のタイミングも前の試合に左右されますし、試合時間も長いので中継されにくい。四大大会で良い成績を残さないと、知ってもらえなかったんですよね。

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でも今の時代は、フェイスブックやツイッターもありますし、ユーチューブもある。能動的に情報を発信できるツールがいくつもあり、なおかつ手軽に始められる。「やらない理由はない」と思い、まずはユーチューブから始めてみることにしました。

実際、ユーチューブチャンネルを開設してみると、「なんでそんなことやってるの?」「テニスやれよ」と言われましたけど、その声は一旦無視して、動画の更新を続けました(笑)。ユーチューブをやることで、テニス選手のことを知ってもらえて、自分の認知度も上がる。また、靭帯を断裂してから現役に戻った人がいないと言われていたので、復帰までのプロセスを発信していくことも面白いな、と思ったんです。

膝を怪我していたときにどんなトレーニングをしたのか、車椅子に座ってテニスする姿を見せたり、作った料理を見せたり、海外遠征での生活を記録したり。選手やマネージャーしか知らない裏側の部分を見せることで、テニスに興味を持ってもらえるのではないかな、と思っていたので、発信するコンテンツに悩むことはなかったですね。

投資を通じて、ビジネスのやり方も学びたい

投資に関しては、昔からずっとやりたいと思っていたのですが、今まで機会がなく……。今回、アスリートのサポートをしている友人の紹介で、TENTIALの中西さんにお会いし、事業もそうですし、組織も面白い会社だな、と思ったんです。

僕自身、競技用のインソールはこれまでも使っていたのですが、TENTIALのインソールは従来のインソールとは全くの別物で、健康を目的に日常生活で使用する。「コンディショニング・インソール」という名前を聞いたときに、その発想は今までなかったと思いまし、僕たちアスリートは体が資本なので、疲労の軽減にもTENTIALのインソールは良いなと思いました。また、中西さんを筆頭にTENTIALで働くメンバーのほとんどが元アスリートですし、年齢も僕と同世代ということで共通点があったのも魅力的でした。

本田圭佑さんがスタートアップへの投資を初めて行なったのが、ちょうど30歳のタイミングだったので、個人的にはもう少し早めに経験しておきたい思いもあり、今回縁があったTENTIALへの投資を決めました。初めての経験で、分からないことだらけですが、投資先のTENTIALと言う名前の通り、僕もアスリートとしてのポテンシャルを使いつつ成長していけたら、お互いにとっていいなと思います。

海外遠征も多く、時差の関係もあるので難しい部分もありますが、株主会議には出来る限り出席したいですね。実際、1度参加してみたときは横文字が多すぎて全く訳が分からなかったのですが、僕にとってはすごい良い勉強になっていますね(笑)。

TENTAILへの投資を通じて僕がビジネスのやり方も学んでいけたらと思っていますし、僕が理事を務めている「全日本男子プロテニス選手会」の中でも、誰かが別のことに興味があるとなったときに、いろんな情報を提供できればな、と思っています。

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テニスに限らず、どの競技のアスリートもそうだと思いますが、今回の新型コロナウイルスの感染拡大で競技ができなくなり、いろんなことに目を向けたと思うんです。実際、テニス選手も今オンラインイベントをたくさん開催していて、競技の結果を出すだけでなく、ファンの人たちとコミュニケーションをとる機会をつくったり、新たなことに取り組み始めたりしている。競技以外のことに取り組む重要性に多くの人が気づいたことはアスリート全体で良い流れだと思っていますし、そういったことにも目を向けて欲しいなと思います。やっぱり、アスリートのキャリアは一瞬でなくなる可能性があるので……。

その点において、本田圭佑さんが与えた影響はとても大きかったと思います。当然、賛否両論あると思いますが、良い影響は間違いなく与えた。本田圭佑さんとは競技は異なりますが、僕はテニス界の中で”変わり者”みたいな扱いをされているので、今回の投資も含め、実験台として今後もいろんなことに取り組んでいきたいと思います。

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