アイドルマスター 15周年の「今までとこれから」1(天海春香編):中村繪里子インタビュー

アイドルマスター 15周年の「今までとこれから」1(天海春香編):中村繪里子インタビュー

  • ダ・ヴィンチニュース
  • 更新日:2020/08/01

『アイドルマスター』のアーケードゲームがスタートしたのが、2005年7月26日。以来、765プロダクション(以下765プロ)の物語から始まった『アイドルマスター』は、『アイドルマスター シンデレラガールズ』『アイドルマスター ミリオンライブ!』など複数のブランドに広がりながら、数多くの「プロデューサー」(=ファン)と出会い、彼らのさまざまな想いを乗せて成長を続け、今年で15周年を迎えた。今回は、765プロのアイドルたちをタイトルに掲げた『MASTER ARTIST 4』シリーズの発売を機に、『アイドルマスター』の15年の歩みを振り返り、未来への期待がさらに高まるような特集をお届けしたいと考え、765プロのアイドルを演じるキャスト12人全員に、ロング・インタビューをさせてもらった。彼女たちの言葉から、『アイドルマスター』の「今までとこれから」を感じてほしい。

第1弾は、やはりこの人だろう。765プロの中心的存在・天海春香を演じる中村繪里子。春香との熱い絆を感じさせるエピソードを交えつつ、春香役として『アイドルマスター』に長く携わってきたからこその広い視野で、15周年を語ってもらった。

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(C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

変わってほしくないから、今までと同じことを願ってるはずだけど、その気持ちがあるからこそ、新しいものを生み出していかないといけない。そうでないと、続けることはできないんです

――7月26日に、『アイドルマスター』がスタートしてまる15年になりました。中村さんは、天海春香役として長くプロジェクトに関わってきたわけですけど、15周年を迎えたことにどんな感慨がありますか。

中村:ちょっとまだ、フワフワとしています。「これくらい続けていきましょう!」みたいな目標を掲げて始まったプロジェクトではないので、毎年振り返るたびに「そんなに時間を過ごせていたんだねえ」と、嬉しく思っていて。15周年は、昨今の事情で直接的にまだ叶っていないものもありますが、その意味では「迎えた15周年がまだ続いていくぞ」っていう感覚もあるし、未来を感じることができています。

――たとえば10周年のとき、どんなことを感じたか覚えてますか?

中村:当時は、「もうこれで終わるんだな」って思ってました。「終わります」って言われていたわけではなくて、ドームと名前のつく場所で『アイドルマスター』のライブをやるのは、当初からセリフの中にもありましたし、いつしかそれがゲームの中だけじゃなく、わたしたちにとってもすごく大きな意味を持つものになっていたんです。そこをひとつの区切りとして、大きな潮目や流れが変わっていくんだろうなって。でも、この先にやりたいことを願うことと、やりたかったことを区切ることは全然違うので。やりたいと願う気持ちは、ありがたいことにその後も叶い続けてるんですけど、振り返ったときに「こうしておけばよかった」を絶対に残してはいけないなって、10周年のときは思ってましたし、実際にそれができたなって思います。

――10周年時点での集大成を、しっかり見せられたと。

中村:はい。

――でも、まだ続くんだよと(笑)。

中村:(笑)そうなんです。やっぱり、これからも変わらないものはきっとあって。毎日アイドルと過ごせる時間であったり、今まで知らなかったその子たちのことを知ることができたり。1日1日の積み重ねである部分は、きっと10年前も1年前も今も変わらないんじゃないかなって思います。

――今回リリースされる『MASTER ARTIST 4』に収録される“New Me,Continued”にも、まさにそういう歌詞がありますね。《変わりゆく景色/変わらない願い》、これはとても印象的なフレーズで、『アイドルマスター』に関わるキャストの方、そして楽しんでいる方にとっても、変わっていくものと変わらないものもがある、という。

中村:本当にどちらも大事だし、「変わってほしくない」って願う気持ちが、新しいものを生み出せるという、逆説的なところもある気がします。変わってほしくないから、今までと同じことを願ってるはずだけど、その気持ちがあるからこそ、新しいものを生み出していかないといけない。そうでないと、続けることはできないですよね。

――『アイドルマスター』が始動した2005年まで遡りますが、当時中村さんにはどういうプロジェクトに見えていたんでしょうか。その後、5年、10年、15年と続けていく中で、その見え方がどう変わっていったのかを教えてください。

中村:最初はほんとにわかりやすく、アイドルを育てていって、デビューするまでをゲームとしてプレイするものだと思っていたんです。なので、オーディションには歌もあったんですけど、ほんとにいわゆる「さあ、お前たちのステージはこれからだ。行ってこい!」みたいなところでエンドロールが流れるゲームなのかな、と思ってました(笑)。でも、そうではなくて、実際にステージに立つ彼女たちを、その後もプロデュースして支えていって、さらに上を目指していくんだと知って、自分の中で「マジか~! 全然違ってたあ」って(笑)。そこで第1の革命がありました。

わたしたちはアーケードゲームからスタートしている作品なので、会いに来てもらう、コミュニケートすることがすごく重要でした。なので、世間が求めていたものにそのタイミングでたまたまアクセスしたことは面白いな、と思います。世界の流れとして、アイドルという存在は人であり、実際に自分たちと同じ時代に生きていて、手を伸ばせば届く。そのリアリティのある質感に、2005年から変わっていったのかなって。

――面白い分析ですね。アイドルって、そもそも偶像という意味の言葉なわけで、当時はそれと真逆の現象が起きていた、と。リアルに体験するものへ、アイドルという言葉の意味が真逆に転換したのが、その年代だったんですね。

中村:そうなんですよ。そう分析したのは、あとからですけど(笑)。皆さんが求めてるニーズ、時代にすごくマッチしたところからスタートしているプロジェクトなんだなあって、年を刻むごとに感じます。直接的に出会えるので、こういうプロジェクトが必要とされてたんだなって。楽曲の作り方も、グループ的な大きな流れでいうと、歌謡曲やアイドルの時代があって、しばらくしてグループアイドルの存在が出てきて、その後に今のAKBグループや坂道グループに続いてきた波がありますよね。あの頃、たとえばハロプロだったり、ほんとにアイドルが大好きなコンポーザーの方々がいて、初期の『アイドルマスター』の楽曲を手がけてくださっていて。歌詞の雰囲気や曲調も、その方々が好きなものをそのまま理想の形で詰め込んでくれていたのが、原型だったと思います。

――思えば、『アイドルマスター』の音楽って、ずっとそうですよね。作曲者の好きな気持ち、熱い想いが、常に込められてるというか。

中村:はい。で、実際にアイドルをテーマにしているからアイドル音楽だけを取り入れているかというと、それだけではなくて、「自分が好きなものをアイドルに渡していきたい」という思いで、EDMやDJっぽいものが入ってきたり、もっとクラシカルなものがあったりして。いろんな好きの気持ちをブレることなく全部吸収して、取り入れて、お返ししていこうっていうプロジェクトなんですね。

――天海春香との関係性についてはどうでしょう。彼女はいわば『アイドルマスター』の中心的な存在なわけですけど、出会ったときの印象と、その後の見え方の変遷について聞きたいです。

中村:初めて会ったときは、「地味な印象の子だな」って、ちょっと衝撃を受けました(笑)。

――衝撃(笑)。

中村:わたしが春香に出会ったのって、もうちょっとで20歳になるくらいの頃だったんですけど、当時のアニメ雑誌、ゲーム雑誌で見ていた女の子たちの顔と春香は、全然違ってたんですよ。目がすごくキラ~ッとしていたり、髪の毛の色もアニメだから成立する素敵なお色だったり、趣向を詰め込んだビジュアルを持つ人たちが、王道を占めていて。ある種、それが当たり前だと思って、声優になるぞ、なれたぞっていうタイミングで春香と出会ったので、「えっ? あれ?」って(笑)。とても、リアルな人間に見えたんですよね。ほんっとに素朴で、顔のパーツの比率もかなり実際の人物に近い方向の絵柄を見たときに、ビックリして。でも、自分が想像していたアニメの中のアイドルはキラキラしていて、「なんとかく~ん♪」みたいな感じがハマらないだろうなって思ったときに、「わたしはこれから声優としてやっていくけれど、この子と向き合うときには思い込みを捨てないと成立しない、この子を人間として感じているから、いわゆるアニメ芝居的なアプローチの仕方では会話ができないだろうな」って、当時は思ってました。

――そういう意味では、その印象はたぶん15年間ずっと一緒ですよね。

中村:はい。強くなっていってますね。ちょっと気味悪がられちゃうかもしれないんですけど(笑)、春香の声が聞こえるときがあるんですよ。台本や曲をいただいたりしたときに、「春香の声がする。彼女はどう歌うかな、どうセリフをしゃべるかな」って、聞こえてくるときがあって。

――気味悪いどころか、超熱い話じゃないですか。

中村:ほんとですか? 「いや、お前がこれからやるんじゃん」「なんじゃそれ」みたいになっちゃうかなあ、と思って(笑)。さすがに妄想の会話にするところまではいかないですけど、彼女がどうやってこの歌を歌うかなって想像して、その声が聞こえてくることが、年数を重ねているごとに徐々に増えてきました。それに安心すると同時に、聞こえているのに自分がそれを表現できないときの悔しさもあります。「春香はこう歌いたがってる」ってわかってるのに、それができてないジレンマを感じたりもしますね。

――中村さんと春香は、これまでの話の通り一緒に生きてきたわけで、遠く離れた何かを表現するというよりも隣にいる感覚が最初からあったのかな、と思うんですけど、その距離がより縮まった、絆が生まれたと感じているエピソードはありますか?

中村: 2014年に、さいたまスーパーアリーナで『(THE IDOLM@STER)M@STERS OF IDOL WORLD!!』という、3ブランドのアイドルを集めた合同のライブがあって。その時期に劇場版を録っていたり、春香とずーっと一緒にいた期間が2,3年続いていて、その流れの中での集大成的なライブだったんですけど、そのときに一緒に歌っていた子のひとりに、ちょっとしたトラブルがあって。イヤモニをセッティングできないまま、ステージに出ちゃってたらしいんです。わたしは、彼女が見えない立ち位置にいたんですけど、歌っていても彼女の声が聞こえないんですよ。「あれ?」と思って、めちゃくちゃ心配になったんです。彼女がすごいのは、曲の途中でちゃんと復調して、最後までパフォーマンスをやり終えていて、来てくださってる方々には問題なく届いていたと思います。

でも、その後で「何があったの?」って訊いたときに、本人もすごく悔やんでいたけど、「ごめんなさい、わたしが最初にちゃんと確認すればよかったのに」っていう言葉を聞いたときに「あっ、よかった」と思ったんですよ。わたしの中で、何か身体に異変が起きていたり、この後もパフォーマンスをするのは彼女にとって無理なことなのに押しつけなきゃいけない状況になっていたらどうしようって思っていたんです。でも、イヤモニを入れ忘れてただけだったら、次はその事故は起きないから、よかったって思って、そのまま言っちゃってたんですね。そうしたら、それを聞いてたスタッフさんが、「お前、それ春香みたいだな」っておっしゃったんですよ。わたしも、「あっ、そうかも?」って思いました。中村繪里子だったらそうは言わなかった、そうは感じなかったのかもしれないなって。「よかった。身体は無事だし、じゃあ問題ないね」って、わたし自身だったら言えなかったかもなって思ったんです。春香の近くで、密な関係を続けてきたことで、『アイドルマスター』でみんなと接するときに、春香がみんなといるときのようなモードに自分もなっていたんだろうなあって、そのときに思いました。

――春香が思考するように、中村さん自身も思考している、という。それは距離が近いというだけでなく、ほぼ一緒の存在ですよね。

中村:そうですね。だから、収録の頻度が落ちているときは、個人的に春香と一緒にいられる期間が空いてくるので、「わたしって性格悪いんだな」って思ったりします(笑)。自分はいい人だって誤解していたけど、「違う、これは春香だ」って。20代の頃の自分がそこそこいい人として、健やかに幸せに思えてたのは、春香のおかげだったんだなって、今は思ってます(笑)。

――(笑)だとしたら、離れないほうがいいですね。常に心に春香をいさせてください(笑)。

中村:(笑)はい、絶対。それで、幸せに人生を過ごせると思います。

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(C)窪岡俊之 (C) BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

(春香は)隣にではなくて、内側に。わたしの灯火になる、という意味で、ずっと一緒にいてほしい

――アイドルとしてステージに立つのは、とても特別なことだと思うんです。中村さんは声優なわけで、歌って踊るために表現の世界に入ったわけではないけれども、春香というアイドルの役を演じて、彼女と一緒にステージに立っている。アイドルとしてステージに立つことの楽しさ、あるいは難しさについて、お聞きしたいです。

中村:わたしが思ってるアイドルって、たぶんステージに立ってる自分ではないんですよね。そこが乖離してる感覚は、ずっとあります。わたしがイメージする「アイドルってこういう存在」と、自分がステージに立ってできることは、まったく違うので。アイドルとして、天海春香としてステージに立ってる感覚ではなく、中村繪里子でしかないのかなって。でも、ステージに立つのは春香がいないとできないことなんだ、とも感じてます。でも、そこが違うからこそ、ライブに声優の姿でステージに立つことが成立するのかな、と思っていて。『アイドルマスター』の世界に関わっている、リアルな人間が立っているから、特別な関係が築けたというか。それは宝物だな、と思います。

――今まで一緒にやってこられたキャストの皆さんがいて、でも実際15年間同じことをやり続ける仲間って、人生の中でもなかなかいないじゃないですか。まさに同志のような関係だと思うんですけど、彼女たちとの会話や出来事で、印象的だったエピソードを教えてもらえますか。

中村:なんだか、どなたも徐々に「融けてきてるな」って感じます。最初はお互いに、人間としてしか接してなかったんですよ。でも、収録をして、ラジオでお話したり、ライブの練習をしていくと、皆さんアイドルに似てくるんです。演じてるからそのモードに入ってる、というだけじゃなくて、きっとみんなの中にアイドルたちがいて、それがジワジワと染み出してきているから、すごく人間味がある765プロのアイドルたちになってるんだなあって、全員から感じます。

――キーワードですね、人間味。

中村:すっごいあるんですよ。ビックリします。そこにいるって感じるんです。収録のとき、自分よりも先に同じ台本で録ってらっしゃる方のお声を聞かせていただくんですけど、奥行き感がめちゃくちゃあって、「あっ、いるな」って感じますね。

――(笑)今回リリースされる『MASTER ARTIST 4』は、新曲あり、カバーあり、ドラマもありで盛りだくさんじゃないですか。聴きどころはいろいろあると思うんですけど、中村さん的にはどのように楽しんでほしいですか?

中村:今回は3人同時で出るんですけれど、3枚でひとつのターンが続いていくので、その色の変化も楽しんでいただける試みだと思います。カバー曲は、自分の思いを伝えつつ、最終的に選んでもらったんですけど、そのときに自分の中で大事に思っていたことを、春香のアルバムとして届けたいです。3枚で楽しんでもらえる試みもあり、1枚をアルバムとして受け取ってもらえるバラエティの豊さを、少しでもお届けできたらいいなあって思いました。

――春香のソロには、“I'm yours”っていうタイトルの曲がありますよね。これ、純粋にすごい言葉だな、と思ったんですけど(笑)。

中村:(笑)ですよね。「you」は二人称、相手を表す対象の言葉ですけど、いろんな人たちが当てはまってくるんですね。春香を主軸にしたときに、それはプロデューサーでもあるし、曲を作ってくださってるスタッフさんたちもそうだし、わたしにとっては春香との関係でもあるし、どこか自分自身も「you」っていう距離感に置いてる、というか。未来に進みたい、先にいる自分を「あなた」って呼ぶような、多面性のあるとらえ方をしました。もちろん、ファンの方たちも「you」に含まれると思っています。

――2月の幕張メッセで『リスアニ!LIVE』を観たときに、中村さんがステージ上で15周年のことを話しいて、「全然手加減しません!」って叫んでたので、わりと激しい人なのかなって想像してたんですけど、やわらかくお話してくれる人で安心してます(笑)。

中村:(笑)ああいうとき、ついつい調子に乗っちゃうんですよ。

――「手加減せずに臨むライブ」を一緒に楽しむお客さん、ライブにおけるプロデューサーさんは、中村さんにとってどういう存在なんですか。

中村:う~ん……共犯者(笑)。相棒とも違うし、味方っていう甘やかしだけでも成立しないし。あと、その場で作り上げたものをニュースにしていただいたり、のちのち知った方たちが「じゃあ、触れてみようかな」って思ってくれるようなきっかけを、一緒に作っているなって思います。

――中村さんの声優としてのキャリアの大半、というかほぼすべての時間の傍らに『アイドルマスター』があったわけですが、一緒に歩いてきた春香に中村さんからかけたい言葉は何ですか?

中村:わたしが春香の隣にいられてるなって思ったのが、2012年に『アニメアワード』という賞をいただいたときなんですね。春香と同じ目線で見てもらえるんだ、わたしも恥ずかしくない存在でいなければって思いました。最初は勘違いをしていて、春香の姿があっても、わたしがお芝居をしなかったらこの子は存在しないんだ、そんな感覚を持ってたんです。でも、いざ発声をし始めたときに、「違う、この子がいるから、わたしもいられるんだ」って思って。当たり前に考えていたことが、とんでもないおごりだったことに気づきました。春香と出会ったときに、年齢はわたしのほうがお姉さんだと思ってたから「演じてあげなきゃ」だなんて思ってたけど、全然違ってたなって。

それからはずーっと、彼女がいてくれるから自分が存在できるって思い続けてます。ずっと彼女が前を歩いて、手を引いてくれてたんですよ。それが、「今は横で手をつないでいる姿を見せることができている」って思えたのが『アニメアワード』でした。そこで少し位置取りが変わった気がするけど、やっぱり彼女がいてくれないと、わたしは必要がないというか、意味がない存在だなって思う感覚は、その後もより強くなってます。だから、隣にではなくて、内側に。わたしの灯火になる、という意味で、ずっと一緒にいてほしいなって思います。

取材・文=清水大輔

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