古くて一番新しい生き方 ドキュメンタリー映画「丸木舟とUFO」 田口ランディ

古くて一番新しい生き方 ドキュメンタリー映画「丸木舟とUFO」 田口ランディ

  • 沖縄タイムス+プラス
  • 更新日:2022/09/23
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ドキュメンタリー映画「丸木舟とUFO」(水本博之監督)の一場面(提供)

渚(なぎさ)の上空から誰かが見ている。青い水晶のような海に浮かび遊んでいる人間は無邪気で楽しげだ。ゆっくりと移動しながら緑の森へと抜けていく。その高い視線の主は誰なのか。

映画の中に時折、挿入される空からの視点。あれはきっとUFOの視点だ。この水に満ち満ちた青い惑星を楽しんでいるかに見える。彼らの故郷には水は存在しないのかもしれない。銀河系の地球は特別な場所。太陽と水が生命を育む楽園。たぶんそうなのだ。だからUFOは、この美しさにひかれてここに来るのだ。

この星に住んでいる者たちが、少しずつ惑星の価値を忘れている。無限にある星々の中で、生命が存在する星がどれほど希少であるのか、奇跡であるのかを忘れている。星を見上げる機会が減ったからか、大地や海と接する機会が減ったからか。それはよく分からない。

石垣島の小さな集落に移住して、舟を作る家族。舟を作る仕事を通して、地域の人たちや、家族との絆を強めていく。その様子が淡々と描かれる。特別なことは何も起きない。親と子と人々が支えあって毎日を過ごしていく。

未来も過去も、舟を作る行為に集約していく。過去を振り返るでもなく、未来に楽観的な希望や悲観的な絶望を見るでもなく、舟を作る行為を通して今この瞬間に集中している。

過去は折り畳まれ、集中している今の課題のために解凍されて立ち上がる。経験とはそういうものとして、描かれている。執着はしない。問題は困難ではなく課題として共有され、そこにそれぞれの過去の時間が呼応しあい、花開き、新しい道が示される。

問題解決を声高に叫ぶことは、問題を大きくしてしまうのかもしれない。彼らは日々の一瞬一瞬に意識を向けて、生きている。それは古くて一番新しい生き方なのかもしれない。(作家)

◇   ◇

ドキュメンタリー映画「丸木舟とUFO」(水本博之監督)は東京から石垣島北部の集落に移住し、サバニの船大工なった吉田友厚さん一家と島の人々の姿を追う。24日からポレポレ東中野(東京)で上映される。

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