2020年3月、4割以上のアメリカ人が、キッチンのテーブルや、部屋の隅に急いでこしらえた自宅オフィスで働き始めました。
その時は、1年近くが経過しても同じことを繰り返していると予想した人はほとんどいなかったでしょう。ところが、今の状況を見てください。
多くの社員やリーダーたちの頭のなかには、大きな疑問が浮かんでいるはずです。こうした事態は仕事の未来に一体どのような影響をおよぼすのだろうか?と。
2020年に在宅勤務の大実験が行なわれたことで、「いずれはオフィスがなくなる方向に向かうだろう」と主張する人もいます。
一方で、「2020年が実はオフィスの必要性を証明した」という意見もあります。共同作業をしたり創造力を培ったりするために、あるいは単なる外出の口実のために、オフィスは必要だというのです。
未来予測はさておき、確かなことが1つあります。それは、リモートワークとは実際にどういうものなのかが、今までよりずっと明確になったということです。
リモートワークでうまく会社を経営できるのか、従業員を管理できるのか、自分の仕事の目標を達成できるのか。
そうしたことは、当然ながら各自が置かれた状況に大きく左右されます。その状況を変えることは恐らく無理でしょう。
けれども、先の見えない今後数カ月のために、あるいは、将来的に働き方を柔軟に選択できることが当たり前になった時のために、環境を整備してもっとうまく事が運ぶようにすることは可能です。
そこで今回は、パンデミックを通して私たちが学んだ、在宅勤務を改善するための教訓をまとめて紹介していきましょう。
1. もっと意識的に行動する
通勤する。オフィスの休憩室でコーヒーを飲む。近くのデリでサンドイッチを買う。
こうした日常生活のルーティンが、いかに「コロナ前」の平日を作り上げていたか、あなたは恐らくあまり理解していなかったでしょう。
そういった、心も体もホッとできる何気ない合間がなければ、1日24時間・週7日間、休まず働いているような気になるのは当然です。
それでいながら、集中力がなくなっているせいで、働いている割りには仕事が捗っているとは思えません。
ここで必要なのは、意識的な行動です。
快適な仕事環境を整えたり(必要な時にドアを閉められる場所ならさらにベター)、スケジュールを立ててそれに沿って仕事をしたりという、わかりやすい対策以外にも、自分と仕事の間に、いつ、どのように距離を置くかについて、よく考えましょう。
1日の初めと終わりの通勤のあいだに、自分の考えをまとめるのが大切な日課だったという人は、仕事前後に散歩に出かけて、その日課を再現してみてはいかがでしょうか。
区切りを設けることが、場面を切り替えやすくするうえでのカギです。
特に、1日で一番風景が変わるのが寝室からリビングに移動する時だという人には、いい刺激になるでしょう。
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2. 人間関係を構築するスキルを磨く
ZoomやSlackなどのコミュニケーションツールに対して、いまや愛憎相半ばする思いを抱くようになったとしても無理はないでしょう。
こうしたツールは、コミュニケーションを交わすという目的は果たせますが、それだけでは同僚たちが心から繋がりを感じ合うことはできません。
仕事が終わった後に、「ハッピーアワー」と称するSlackミーティングに1度でも参加して、気まずい思いをしたことがある人なら、分かりますよね(カメラをオンにしたほうが、互いに弱さをさらけ出しやすくなり、心を通わせるのが容易になるという説もありますが)。
必要なのは、人間としてお互いに心から興味をもち、相手を気遣う気持ちです。
それには、同僚や従業員と他愛のない雑談をしてみるのがいちばんです。仕事仲間の子どもの名前を憶えていますか? 同僚には、空き時間に楽しんでいる変わった趣味などはありませんか?
「週末は楽しかった?」という質問は、実際に楽しい週末を過ごしたなら話のきっかけになるのでしょう。でも、それよりむしろ、お互いの日々の様子をよく知ることができる、具体的な質問を投げかけてみましょう。
「お子さんのKevinは幼稚園に初登園したんですよね。どうでした?」とか、「瞑想は続けていますか?」といったことです。
心の知能指数(EQ)を最大限に発揮してください。形だけの質問を順番にしていくのではなく、共感を中心にした人間関係を築きましょう。
それは、どのような仕事環境であっても重要なことです。
3. メンバーへの信頼を示す
チームの共同作業がうまく成り立つのは、あなたがメンバーを信頼し、彼らがどこで働いていようとも、きちんと仕事をやり遂げられると信じている場合だけです。
メンバーがオフィスで働く様子を見ることにこだわっていたリーダーであれば、リーダーシップのあり方を変えなければならないかもしれません。
たとえば、独大手製造企業シーメンスのローランド・ブッシュ最高経営責任者(CEO)は2020年7月、従業員が週2~3回のリモートワークを取り入れることを新基準にするという、ごく月並みな内容の発表を行いました。
ただし、ブッシュCEOはその際にあえて、新たな基準では今までと異なる方法で社員の成果を計る必要があるとつけ加えています。労働時間ではなく、その成果に注目するというわけです。
今後、リモートワークの方針を検討したり定めたりする必要が生じるだろうと考えているなら、1つ提案させてください。方針はシンプルにしましょう。
イレギュラーな事態が発生した場合に、何を、いつ、どう対処すべきかといった詳細にこだわってはいけません。(シーメンス社と同じように)文章2つで十分です。
社員が働いた時間で成果を判断せず、彼らが何を達成しようとしているのかに着目してください。
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4. 文章スキルを新たな強みにする
企業がリモートワークで働く社員の環境整備と管理を行なえるようサポートするプラットフォーム「Firstbase」の創業者でCEOのChris Herd氏は、「文章スキルを新たな強みにしよう」と提案しています。
同氏によれば、メールやSlackをはじめとするリアルタイムのコミュニケーションアプリは、どれも便利なツールになりうるものの、その価値を決めるのは、やり取りされるメッセージそのものなのだそうです。
文章力は、リモートで働くチームにとって暗黙のスーパーパワーです。
チームの共同作業を強化するうえでもっとも簡単な方法の1つは、文章の書き方を工夫することです。
手順を説明する際には、明瞭さや簡潔さを念頭に置きましょう。フィードバックを述べる際は、文章のトーンが相手にどう受け止められるかを考えましょう。
新しい人間関係を築く際には、信頼と自信が相手に伝わるかどうかに留意しましょう。
このように考えることは、相手と直接顔を合わせていない場合にはより一層大切です。
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5. 社員が必要としているものを見つける
このアドバイスは、現在だけでなく今後も役に立ちますし、社員がどこで働いていようと役に立ちます。
そろそろ、会社の福利厚生を見直して「ニューノーマル」に合わせるべき時なのではないでしょうか。
バーチャルのフィットネスやウェルネスのクラス、瞑想や睡眠のアプリを利用する社員に補助金を出すのも1つの案です。
社員が「常にインターネットに接続していなければならない」とプレッシャーを感じているようなら、会議をしない日を設けたり、デジタル周りの仕事に関する全社的ガイドラインを明確にすることを検討してみてください。
目的は、燃え尽き症候群が問題化する前に防止することです。
また、育児と仕事の両立は大変ではあるでしょうが、幼い子どもを持つ社員のことばかりを考えてはいけません。そうした同僚の仕事をカバーしている可能性のある社員に感謝の言葉をかけると、大いに喜ばれるでしょう。
気分転換のために休憩を取ることのメリットをしっかり伝えることも大切です。

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Image:Maskot/Getty Images
Source:Stanford News
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