
朝倉未来 ※画像は朝倉未来公式インスタグラム『@mikuruasakura』より
総合格闘家で、チャンネル登録者数300万人超えの人気YouTuber・朝倉未来(31)が、11月19日に行なわれたオープンフィンガーグローブ(OFG)使用、キックボクシングルールの新格闘技イベント『FIGHT CLUB』(開催場所非公開、ABEMAPPV独占生中継)に出場。キックボクシング団体『RISE』のOFGM-65kg級王者であるキックボクサーのYA-MAN(27)に1R77秒という短さであっさりKO負けを喫した。
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総合格闘技イベント『RIZIN』で活躍し、YouTuberとしても大人気のスーパースターの秒殺劇。この衝撃の展開が世間に与えた衝撃は大きかった。『ONE Championship』元世界ライト級王者で格闘家の青木真也(40)は「この試合、やる意味なかったよね」とぶった斬る――。
朝倉は2012年に総合格闘技イベント『DEEP』でデビューすると、15年には元プロレスラーの前田日明(64)がプロデュースする格闘興行『THE OUTSIDER』で65-70kg級、王座と二階級制覇の快挙を達成。
18年8月に『RIZIN』へ初参戦してからは、タレントの小倉ゆうか(25)との交際報道などもあり、公私ともに格闘技界の盛り上げに一役買ってきた。しかし、『RIZIN』にて20年11月と23年7月の2度挑戦したタイトルマッチではいずれもベルトを逃している。
そんな朝倉が今回、挑んだのはプロキックボクシングのデビュー戦だった。普段は総合格闘技を主戦場とする朝倉がキックボクシングルールという“相手の土俵”で試合に挑んだわけだ。試合前日、自身のインスタグラムでは「総合格闘家は他の分野でも強いってことを証明する、格の違い見せるわ」と言い放っていただけに、1R77秒での早期敗北は誰もが予想だにしない結末だった。
試合は序盤から打ち合いの様相。YA-MANが間合いを詰め放った右ストレートが朝倉にヒット。すると、朝倉はヨロヨロと前のめりで崩れ落ちダウンを喫した。その後、なんとか立ち上がり体勢を整えようとするも追撃の右フックをくらうと朝倉は堪らず2度目のダウン。リングに這いつくばる時代の寵児の姿に、視聴者は衝撃を受けた。
試合後に更新したインスタグラムでは《これはもう引退ですね》とつぶやいた朝倉。ただ翌20日には、総合格闘家の平本蓮(25)から《お疲れ様です、また頑張りましょ》というDMをもらったことを報告するとともに、《RIZINの舞台でやらないといけないことがあるよな》と平本のDMに返事を返す形で投稿をし、復帰に前向きな姿勢をのぞかせている。
■「いちばん良くない話題のなり方」と言う理由
朝倉に対しては、挑戦とその結果はもとより去就についてもさまざまな声が上がっているが、青木は「いちばん良くない話題のなり方。PPV(ペイ・パー・ビュー=有料コンテンツ配信)が後から話題になっても仕方がない。試合の前に話題にならないとカネにならない。この試合、やる意味なかったよね」とバッサリだ。
そもそも、あえて自分の土俵ではない場での試合出場を決めた朝倉の“思惑”は何か。
「朝倉さんからすると、今回の試合は、自分のファンにPPVチケットを買ってもらう課金装置ですよね。YouTuberの視野的な発想というか。よくYouTuber同士がコラボすることで、互いのチャンネルの視聴者を引き連れ合い、結果的にPV増、登録者数の増加などを狙うじゃないですか。ああいう感じ。ただ、こういうことをやり始める時っていうのは、“回収ゾーン”なんですよ」(前同)
“回収ゾーン”とはどういうことか。
「今まで朝倉さんは、自分のブランド価値を高めていくために勿体ぶった露出の仕方をしていたけど、今後はカネになれば消費されていいという腹づもりで参加を決めるのでは、ということです。高まったブランド力を、たとえ(一発の)打ち上げ花火の話題作りだとしても活用する=回収、ということですね。自分の土俵ではないキックボクシングで試合をしたのがその表れです。
ただ、今回の試合に関して僕はずっとSNS上でどう話題になるかを追っていたのですが、PPVの潮目は変わってきているなと。結果だけ分かればいいという人も増えていて、“有料配信限定にすれば見られる”という安直な考えは終焉が近い。音楽系PPVは後から買っても楽しめるけど、スポーツはやっぱりライブ性がいちばん重要視されるからね」(同)
■朝倉未来に“してやられた感”の真意――「予定調和を……」
そんな青木は、この一戦を「朝倉さんに“してやられた感”がある」と言う。その真意は何か。
「『朝倉未来』というブランドで商売をしているなかで、自分で挑戦を表明しておいて、いざやってみるとずっこけるっていうのは、競技としては負けかもしれないけど、表現者としてはさすがだな、最高だなと思いましたよ。だって、普通に朝倉さんが勝って終わったら、“ハイ、お疲れさま”で以上でも以下でもなくなっちゃうでしょ?」
とはいえ、負けるつもりもなかったのでは……?
「もちろん朝倉さんのほうが体格がデカいし(※朝倉は177センチ、YA-MANは173センチ)、YA-MANをさばき切れるという思いはあったでしょう。むしろ、負けたいと思って負けてたら超大したもんだと思いますよ(笑)。
実際、長く格闘技界にいて“引き”で試合を見られるようになってくると、勝ってもしょうもないなと思って、心のどこかでほんのわずか、無意識のうちに(単なる“勝ち”にはいかない)準備をしていたりもするんです」(前同)
そんな青木は、「どうせ(どちらも倒れなくて)判定、引き分けだよねっていう予定調和感があったんじゃないか」と独自の見解を示す。
「今はすべてのコンテンツが“バカでも分かるもの”として制作されるようになっている。だから視聴者側も、勝ち負けじゃないところをどうやって楽しむかという能力が問われると思うんですよ。
僕、自分で自分のことを変態だなと思うんですけど、YA-MANさんと朝倉さんの間で、裏ではどういうやり取りがあったのかなとか想像するのが面白い。互いにバチバチのテイを取ってるけど、もしかしたら何か暗黙の了解の予定調和があったのでは……なんてね。それをツッコんで“本当はどうだったか”なんてどっちでもいいんですよ。妄想なんだから(笑)。
今回、朝倉さんはこちらの勝手な“予定調和”を崩した。見ている側に“想像の余白を残す”という意味で、朝倉さんは素晴らしい試合をしたなと。試合後も、視聴者側がああだこうだと“余韻”を味わうものになっているからね」
たしかに試合はわずか77秒だったが、その後の注目度は抜群。YA-MANにはもちろん、朝倉にとっても自分史に残る一戦だったことは間違いない。
青木真也
1983年5月9日生まれ、静岡県出身。小学生時代に柔道を始め、全日本ジュニア強化選手に選抜。早稲田大学在学中に総合格闘技に転身。修斗、PRIDE、DREAM等で活躍し、修斗世界ミドル級王者、日本人初のDREAMライト級王者。
2012年からアジア最大の格闘技団体ONE Championshipに参戦、2度の世界ライト級王者。2014年からはプロレスにも参戦。17年にNEW、18年からはDDTプロレスリングに参戦、DDT EXTREME級王座、アイアンマンヘビーメタル級王座を獲得。柔術等の道場で講師として後進育成にも力を注ぐ。
青木真也