頭の中に“よはく”がある状態とは、不要な情報や余計な心配がなく、何か起きたときやピンとくる情報に出会ったときに、すぐに自分らしく考え、決断し、行動できる状態のことを指します。

※画像はイメージです(以下同じ)
本当に大切なことに集中するためには「頭のよはく」が必要です。今回は、忙しい人ほどやっている2つの方法について、人材育成トレーナーおよびコンサルタントとして活躍する鈴木進介氏の著書『本当に大切なことに集中するための 頭の”よはく”のつくり方』より紹介します(以下、同書を一部編集のうえ寄稿)。
部屋が片づかない人の「致命的な問題」
部屋が片づかなくて、年末、一気に大掃除してスッキリ。でも、ひと月もすればリバウンドで散らかり放題。または、収納術の本を読んで実践して部屋がキレイにできても、いつしか元通りに…というパターンの人もいるでしょう。
なぜ、部屋は片づかないのでしょうか。これらのケースでは一時的に片づける作業はできても、根本的な解決ができていないからです。つまり、課題は「荷物の多さ」です。
ぎちぎちにクローゼットや押入れにしまっても、見た目上で片づけただけ。しかし、根本的な解決をするなら物を「捨てる」必要があるわけです。荷物を減らさない限り、整理方法のノウハウを学んでも活かせません。
頭の中のよはくを手に入れるには

鈴木進介著『本当に大切なことに集中するための 頭の”よはく”のつくり方』(日本実業出版社)
これは「頭の中」も同じです。たくさんの情報や仕事を抱える中、それらを整理する以前に、不要なものを捨てて、よはくを作ることが大事です。部屋の片付けも頭の中も、「トレードオフ」の関係にあります。これは、「何かを得ると何かを失う」相容れない関係のこと。つまり、頭の中のよはくを手に入れるには、何かを捨てないといけません。
ムダな情報や仕事を捨てれば、その代わりに頭の中にもよはくができて、考える時間も手に入るわけです。
「余裕がない」と焦る男性の表情が一変した訳

私はあるとき、クライアント企業で働く30代の男性マネージャーから相談を受けました。彼いわく「毎日余裕がなくて、徒労感だけが残る」と。話を聞いていると、やるべき仕事を多く抱えて、すべて全力。残業するも結果が出ないという状況でした。
Todoリストを見せてもらうと、20個以上のタスクがズラリと……。私はとっさに、そのリストを破り捨てました。そして、「これでやるべきことはゼロになりましたね。覚えているタスクを今から書き出してみて下さい」と伝えました。
彼が書き出した項目は3つだけ。ようするに、その3つが彼にとって最も大切な仕事だということがわかりました。「本当に大切な仕事は緊張感を持って覚えているものです」と伝えると、晴れ渡った表情で彼は「やっとこれで前進できます」と話してくれました。
努力の方向性を見極めてムダな仕事量を減らす
そして、必要な仕事が明確になり、それ以外はいったん捨てることで、やるべき仕事に集中できるようになった彼は言いました。「すべてやりきる」「すべて全力でやる」は、思い込みだと気づいた瞬間です。
そうはいっても、割り切って「捨てる」ことができないなら、「減らす」考えもあります。例えば、ダイエットをするにしても一切食事をしないわけにはいきませんよね? 腹八分目にする、カロリーが高いものを減らすなど、できることはあります。
仕事の場合でいえば、無意味に仕事量を増やしても、テンパることもあるし、物理的に不可能なこともあるでしょう。それよりも、努力の方向性を見極めて、ムダな仕事量を減らすことで、余力が生まれて大切なことに時間を使うほうが大事です。
『アクション・バイアス』という書籍の中で、本質的なことに手が付けられない状態を「アクティブ・ノンアクション」という言葉で紹介されていました。私たちの頭の中もそうならないように気をつけないといけません。
仕事を減らした人ほど成果が出るメカニズム

じつは「減らす」ことには大きなメリットが3つあると思っています。ビジネスに通じる部分が多く、抑えておきたい重要な要素です。メリットの1つ目は「本当に大切なことに的を絞れる」ことです。全部を得えようとすると中途半端になります。「減らす」ことでそうした日々を終わらせ、大事な仕事を見極められるようになります。
2つ目は「集中力を発揮して、目標達成がしやすくなる」ことです。取り組む仕事が絞られていけば、仕事がたくさんあった時のように“どれから手をつければ…”、“時間内にできるか不安”な意識はなくなり、目の前のやるべき仕事に集中できます。
最後は、「ストレスから解放される」ことです。やることが多すぎると疲弊していたときよりも、精神的にも体力的にも余力が生まれ、自分で時間や作業をコントロールできるようになります。
このように、「減らす」ことは“全部やらなきゃ”という不安から解放され、自分に必要な仕事に集中して、しかもストレスをためずに取り組めるメリットがあるわけです。そうすれば、自ずと完成度の高い仕事ができるようになります。「捨てる」「減らす」は、ビジネスにおいて、必須なブレインワークとも言えるでしょう。
<TEXT/人材育成トレーナー 鈴木進介>
【鈴木進介】
コンサルタント。1974年生まれ。株式会社コンパス代表取締役。現在は「思考の整理術」を使った独自の手法で人材育成トレーナーおよびコンサルタントとして活動中。大学卒業後、IT系企業や商社を経て25歳で起業。著書に『本当に大切なことに集中するための頭の“よはく”のつくり方』(日本実業出版社)など多数HP:鈴木進介公式サイト
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