ナイトクラブの“破廉恥ルーム”で......コロナ感染、タイ大使が受けた“密着接待”の中身

ナイトクラブの“破廉恥ルーム”で......コロナ感染、タイ大使が受けた“密着接待”の中身

  • 文春オンライン
  • 更新日:2021/05/02

3月25日の夜、タイの首都バンコクにあるナイトクラブ。艶やかな閃光が迸る「ウルトラVIPルーム」ではアップテンポなリズムに合わせて、胸や尻を露わにしたホステスたちが一斉に立ち上がり、艶かしく腰を擦り寄せる。

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輪の中心には喜色満面の笑みを浮かべる男性がいた。後にコロナ感染が判明した、梨田和也・駐タイ特命全権大使(60)である。

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写真はイメージです ©iStock

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大使館関係者が明かす。

「その日、梨田氏はバンコクの大使公邸で外務大臣表彰の授与式に出席。受賞者のチョンブリ・ラヨーン日本人会(CRJA)の顧問(当時)の怒和(ぬわ)邦善氏らと高級和食屋で会食した後、ナイトクラブ『クリスタル』に誘われたといいます」

常連客が「破廉恥(はれんち)ルーム」と呼ぶ冒頭の個室で繰り広げられたのは、ホステスの“密着接待”だった。チャージ料は1時間3万~5万円、ホステスに支払うサービス料は1時間5000~1万円と超高額。さらに、女性をお持ち帰りできる“裏メニュー”もあるという。

「(同店では)51人のホステスがコロナに感染していたことが分かっていますが、そのうち約10人が梨田氏を入れ替わりもてなしていました。彼女たちは『スーパーモデルグループ』と呼ばれるVIP要員。梨田氏の飲食代を支払ったのは、日本人会です。梨田氏は『女の子、全員可愛い』と興奮気味だった」(同店の常連客)

梨田氏はクラブを訪れた4日後に体調を崩し、検査を受けたところ、4月3日に陽性と判明。一緒に行った怒和氏も感染していた。

「タイ政府が3月23日の閣議で非常事態宣言の期限を5月末まで延長することを決定した直後のタイミングでした。開いた口が塞がらない」(現地記者)

外務省担当記者から「赤ワインとゴルフが大好き。気さくな性格で記者受けは良い」と評される梨田氏だが、どのような人物なのか。

開成中高を経て東大へ

梨田氏は開成中高を経て、東大教養学部在学中、外務公務員採用上級試験に合格。1984年に外務省に入省し、イラク大使や国際協力局長などを歴任した。

「若い頃、竹下登総理(当時)の欧州訪問の政府特別機に同乗した際、一番年下だった梨田さんはキャビンアテンダントの女性と恋に落ちた。それが今の奥さんです」(外務省関係者)

タイ大使に就任したのは、2019年11月。その約4カ月後の昨年3月15日、梨田氏はパタヤにあるサイアムカントリークラブで、CRJA幹部6人とゴルフに興じていた。

「歓迎会という名目でしたが、当時タイでは新規感染者が100人を超える日もあった。事前に領事部長を通じて梨田大使に尋ねたが、『問題ない』と回答を得たため強行突破で開催することになったのです。タイ全土で非常事態宣言が適用されたのは、歓迎会から11日後の3月26日でした」(CRJA関係者)

A4用紙6枚にまとめられた領収書には、昼食代として1万3372バーツ(約4万6500円)、飲み物代として2985バーツ(約1万400円)が記載されている。

「大使はゴルフ代しか払わず、宴会の代金などはCRJAの会費で支払われた。合計額は約5万7000円です。実は当時、怒和氏の外務大臣表彰に向けた動きが進んでいました」(同前)

「週刊文春」が入手したCRJA幹部らが歓迎会直前に交わしたメールには〈怒和顧問が、大使館表彰をされる予定もあり〉〈あくまで内々の話〉〈口外しないでください〉という記述があった。

接待の締めでホテルに女性を呼ぶことも常態化

実は、タイ大使と日本人会はズブズブの関係だった。CRJAの内部資料を紐解くと、18年以降、同会が梨田氏、佐渡島志郎・前大使を含む大使館関係者をゴルフ接待したのは、少なくとも5回以上。また、支払った昼食代、飲み物代、焼酎などの手土産代は、合計約9万4800バーツ(約33万円)を超える。

とりわけ問題なのは、18年8月23日だ。翌日に「チャリティーゴルフコンペ」を控えたその日、経済公使(当時)が日本人街シラチャに前泊し、怒和氏らと“前夜祭”を敢行した。

居酒屋「姉御」、そして高級カラオケ店「マーマレード」で羽目を外したという。一晩で2万5476バーツ(約8万9000円)が支出されたと会計書類に記録がある。

「このカラオケ店は、女の子をお持ち帰りできる店。男3人で飲んでカラオケをしただけで9万円弱もかかるわけがなく、買春費用が含まれた料金であることは明らか。この日に限らず、接待の締めでホテルに女性を呼ぶことが常態化していました」(CRJA元幹部)

また、19年12月7日に催された佐渡島前大使の送別会では、送別品として約1万5000バーツ(約5万2000円)のゴルフの高級パターが贈られたという。

日本人会から接待を受け、甘い汁を吸っていた大使館幹部たち。ただ、タイの夜の街は危険と隣り合わせでもある。

梨田氏が肝を冷やす“事件”が起こったのは、赴任から約半年が経った昨年6月のこと。

携帯電話を失くしてしまうという失態も…

「その日、梨田氏は大使館員たちと居酒屋で飲む約束をしていました。公用車で向かう途中、雨で渋滞にハマってしまったため、車を下りた。ところが、歩いて店へ行く途中で携帯電話が失くなっていることに気づき、警察に被害届を提出。後日、犯人は逮捕され、携帯も戻ってきたそうです」(前出・大使館関係者)

梨田氏が誘われるままに訪れ、コロナ感染したクラブも“あぶない店”だった。

「4月上旬、『クリスタル』の総支配人が、夜11時までと定められた営業時間を遵守しなかった非常事態令違反と娯楽施設法違反(住宅地での無許可営業)の罪で懲役2カ月、5年の営業停止を言い渡されました。他国の要人がこうした“違法店”に丸腰で入り浸るなんて前代未聞です」(前出・常連客)

一連の接待の法的な問題点について、人事院の担当者が解説する。

「特命全権大使や政府代表などは特別職にあたるため、国家公務員倫理法が適用されません。ただ、大使館職員など一般職は倫理法が適用され、利害関係者から金品を受け取ったり、供応接待を受けたりするのは禁止で、ゴルフや旅行という行為も違反となります」

元警察官僚で危機管理コンサルタントの屋久哲夫氏は次のように指摘する。

「要人は常に周りからの見え方を意識すべきです。この時期、女性の接待を伴うお店にいたこと自体が問題で、ハニートラップも警戒すべき。04年には上海の領事館員が通っていたクラブのホステスとの交際などをネタに中国公安の協力者になることを迫られ、自殺する事件もあった。『自分は絶対大丈夫』という根拠なき自信が最も危ないのです」

“ハレンチ接待”が浮き彫りになった梨田氏や同席した日本人会幹部に対して、目下、タイでは厳しい批判の声が上がっている。

「今回、大使館は取材に対して『(「クリスタル」は)タイの閣僚や著名人も訪れるわけで、いかがわしい店ではない』と主張し、失笑を買った」(前出・現地記者)

外務省に事実確認を求めたが、回答はなかった。

梨田氏は「飲食代は後で精算する予定だった」と言い訳しているという。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年4月22日号)

「週刊文春」編集部

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