閉経後の女性は、転びやすく骨折しやすい。健康寿命を延ばす「骨」を守る方法とは?

閉経後の女性は、転びやすく骨折しやすい。健康寿命を延ばす「骨」を守る方法とは?

  • mi-mollet(ミモレ)
  • 更新日:2023/09/19

こんにちは、医療ライターの熊本美加です。

更年期世代の女性が集まると、「机の角に足をぶつけた」「スカートの裾が絡まって転んだ瞬間についた手が痛い」「ちょっとした段差につまづいて足首をひねった」など、慌てん坊エピソードがてんこ盛り。「やだ〜年かしら〜」なんて笑って慰めあってきましたが、最近はやや雲行きが怪しくなってきました。

負傷した部位の痛みや腫れが治らず、病院で診てもらったら「骨にひびが入っていた」「骨折していた」との報告がじわじわ増えてきたのです。これが、いわゆる更年期以降の骨の衰えなのでしょうか……。

明日は我が身と怯えながら、今回お話をお聞きしたのが女性専門の整形外科「ゆりクリニック」 院長の矢吹有里先生。矢吹先生は女性の健康寿命の鍵を握るのは骨だといいます。

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「平均寿命と健康寿命という言葉をよく耳にすると思います。日本人女性は世界一平均寿命が長いのですが、実は健康でいられる期間は日本人男性と大差がなく、晩年の平均12.5年は寝たきりで過ごしてる人が多いです。

家事や子育て、親の介護など、いろいろなことから解放され、いざ自分の人生を楽しもうと思った矢先に骨折して寝たきりになってしまう……。そうならないために、あなたが何歳であっても骨の強度をマネジメントし続けることが重要です」

更年期以降、急速に弱まってしまう骨。どうやって守っていけばいいのか、その方法についてお聞きしました。

ちょっとした刺激で骨折! 閉経後の骨クライシスはなぜ起きる?

更年期以降、女性の骨折が増えるのはなぜでしょうか?

「理由はふたつあります。

ひとつは、骨密度の低下。骨密度の維持には女性ホルモンが深く関わっているのですが、閉経が近づくと女性ホルモン(エストロゲン)の減少により、閉経前後で約20%も骨密度が下がります。その方のもともとの骨密度によって個人差はありますが、将来の骨折が心配な方が出てきます」

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「もうひとつの原因は、加齢による感覚の鈍化です。よけたつもりの壁の角にぶつかったり、ちょっとした段差にひっかかってしまうことが増えます。これは、視力や聴力といった感覚器の老化により、距離感やバランス感覚に少しずつ誤差が生じてくるからです。

また、エストロゲンが減ってくると筋力が低下し、筋肉や腱の柔軟性も失われて硬くなってきます。それによって正しい姿勢を保つことが難しくなったり、全身のバランスが不安定になり、転びやすくなってしまうのです。

ぶつけやすく転びやすい状態で、さらに骨が弱っていると、骨折のリスクは格段に高まります」

閉経前に骨密度を測ると、未来に向けた対策ができる

更年期は、まだまだ続く人生のために転倒防止や骨粗しょう症のリスクを意識するべき年代といえます。そのためにまず何をするべきかを矢吹先生に聞きました。

「まずは自分の骨密度を知ることです。骨密度がどんなに低くても、骨折しない限り自覚症状はありません。なので、骨密度が低い状態で生活するというのは常に爆弾を抱えているのと同じことです。

閉経前の方でしたら、40歳くらいを目処に一度骨密度検査をすることをおすすめします。特に症状がなければ自費診療になりますが、5000円もかからずに調べることができます。

骨密度は20歳をピークに閉経前まで維持されます。閉経前のご自分の骨密度を知っておけば、骨粗しょう症のリスクがどれくらいあるのか、ある程度想定し対策を立てることができます。骨密度は簡単に増やすことはできませんが、運動や食事で減少を食い止めることは可能ですし、骨粗しょう症リスクが高い方についてはお薬の処方もできます」

特に以下のチェックリストに当てはまる方は、40代以前であっても早めに骨密度を測ったほうがいいそうです。

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骨密度のために、整形外科医が勧める運動習慣

人生の骨密度のピークは20代で、これには遺伝や成長期の食生活、運動習慣が深くかかわっています。骨密度検査で骨密度が低いとわかっても、今から成長期のように骨密度を増やすことはできません。ただ、減少スピードを緩やかにすることは可能です。

「基本的なことになってしまいますが、今から運動の習慣をつけておくことです。

おすすめの運動は歩くこと。週3回、4000〜8000歩が理想的です。そして筋力トレーニングも。有酸素運動との組み合わせが最も効果があるとされています。

ただ、40、50代の女性は多忙です。運動する時間が取れず、肩こりや腰痛もつらいのに、更年期症状までもが重なって、ギリギリの状態で我慢しがち。でも何もしなければ、骨も筋肉も落ちていきます。一駅前で降りて歩くなど、日常生活の中でできることからでもいいので、身体を動かす習慣をつけていきましょう」

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写真:Shutterstock

矢吹先生は、週に2回マシンピラティスに通っているそうです。自分の体の状態を感じ、弱いところを調整したり、自然に正しい体の使い方が身につくのがよいのだとか。また、普段の体の使い方を正しく知るには武田淳也先生の『カラダ取説』という本がおすすめとのこと。

健康寿命を延ばせるのは、ほかならぬ自分だけ。「Exercise is Medicine」、運動は何よりの薬です。身体を動かすことを習慣にすることで、未来の寝たきりや認知症も防ぐことにつながるのです。

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矢吹 有里(Yuri Yabuki)
ゆりクリニック院長。東京女子医科大学を卒業後、慶應義塾大学整形外科医局に入局、関連の急性期病院で整形外科全般の治療に携わったのち、東京都済生会中央病院整形外科医長に。整形外科疾患の中にも女性特有のものが多く存在することを実感し、2017年に女性専門の整形外科「ゆりクリニック」を開院。運動器リハビリテーションから体力維持のためのトレーニングまで、女性の健康に寄り添うほか、「骨美容®」を提唱し、若い世代からの骨密度維持の大切さを啓発している。

取材・文/熊本美加
構成/宮島麻衣

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熊本 美加

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