
テレビ西日本
戦前から使われてきた物もあるという、九州大学の古い家具。
本来なら箱崎から伊都地区へのキャンパス移転の際に捨てられるはずでしたが、いま、新たな形で保存・活用されているんです。
福岡市西区の九州大学伊都キャンパスにオープンした新たな施設、「フジイギャラリー」。
学内のみならず、地域との交流の場として使われる展示スペースです。
近代的な外観と開放的な空間が特徴の真新しい施設ですが、インテリアとして使われているのはー
◆九州大学 総合研究博物館 三島美佐子教授
「こちらもあちらの家具もですね、もともとは箱崎キャンパスで移転の時に廃棄されかけていたものですね」
箱崎キャンパスからの移転の際に捨てられるはずだった、古い家具。
しかも、戦前の旧帝大時代から使われてきた年代物です。
箱崎から伊都地区への九州大学のキャンパス移転では、役目を終えた教室の机や研究室の棚が大量に廃棄されました。
◆九州大学 総合研究博物館 三島美佐子教授
「ほんともうどんどん捨てられていくので、見てられない感じですよね」
三島教授は、歴史が刻まれた机や棚を文化財の一種と捉え、回収・修繕して再利用する活動に乗り出し、およそ2000点を保存してきました。
しかも、ただ単にしまい込んで保管するのではなく、個人や事業者に貸し出して実際に使ったり鑑賞したりしてもらう、「在野保存」と呼ばれる新しい文化財保護の形を研究しています。
◆九州大学 総合研究博物館 三島美佐子教授
「使ってなんぼの家具、使ってなんぼの道具類ですから、使ってたほうが長持ちする。そういう資料については、在野保存の考え方は適用できると思います」
在野保存されている九大の家具は、キャンパス外のこんな所にも。
◆福岡県立美術館喫茶室 花田典子店長
「これ、九大で使われていた机ですね」
福岡市中央区にある、県立美術館の喫茶室です。
昔懐かしい雰囲気をたたえるレトロな空間に、九大の古い家具がよくなじんでいます。
◆福岡県立美術館喫茶室 花田典子店長
「木製の味わいがあって、それとすごい年数がかかって今日まで残ってきてるっていうことで、その時代時代の何かが、なんかその時間の流れまで什器に感じられた」
店長の花田典子さんは、市内で長く営んできた喫茶店を通じて、九大の三島教授と知り合いました。
使いながら残す在野保存の考え方に共鳴し、この喫茶室を手がけることになった2022年1月、実験台や本棚など10点ほどを借り受けました。
よく見てみるとー
◆福岡県立美術館喫茶室 花田典子店長
「こういう跡が残っているんですよね、なんでしょうね、実験の跡かな、なんでしょう。ビーカーかなんかわからないけど、ずいぶん前につけられた、すべすべになってますもんね」
さらにほかにもー
◆福岡県立美術館喫茶室 花田典子店長
「硬くなってるけど・・・」
使い込んだ跡も「味がある」とお気に入りです。
訪れる客からも、「どこか懐かしい」と好評なんだそうです。
◆福岡県立美術館喫茶室 花田典子店長
「ある場所に保存して、そこに行かないと見れないとなると、限られた人が限られた情報の中でしか扱えないけど、いろんな人が見るとまた全然違う活用法とか活かし方が出てくると思うんですよね。なので、不特定多数の人が来る場所こそ生きてくるんじゃないかなと思って。それにはこういう喫茶室が一番いいのではないかなと思います」
本来なら役目を終えて捨てられていたはずの、九州大学の古い家具。
使いながら残す「在野保存」が、新たな価値を生み出しています。