忘れたころにやってくるものは、もうはじまっている【12年前の今日:リーマン・ブラザーズ経営破綻】

忘れたころにやってくるものは、もうはじまっている【12年前の今日:リーマン・ブラザーズ経営破綻】

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  • 更新日:2020/09/16

12年前の今日、アメリカの投資銀行リーマンブラザーズが経営破綻。いわゆるリーマンショックという世界金融危機がはじまったのは記憶に新しい・・・ いや、もうこのニュースですら忘れられたのか。忘却はある意味、幸福に生きる条件かもしれない。どんなに世界から食い物にされようとも思考停止している限り気持ちは穏やかだ。しかし、確実に変わってしまった状況がコロナ以後の世界では「他人ごと」ではいられない修羅場が待っているというお話です。

◼︎破綻は、時間をかけて準備されている

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12年前の今日、2008年9月15日、日本は敬老の日だった。その日、当時アメリカ第4位の投資銀行・証券会社だったリーマン・ブラザーズが破綻、いまだにアメリカ史上最大の倒産記録だ。「リーマン・ショック」は和製英語で、日本のメディアや役所に特有の、事象を矮小化する呼称なので要注意。世界では普通に「世界金融危機」と呼ぶ。

崩壊するバブルを招来したのは様々な金融派生商品だが、とくにサブプライムローンという低所得者に高金利で大金を貸し付ける、無茶な住宅ローンが主犯だった。金融用語はわかりにくい。金融商品はもっとわかりにくい。しかし、理解しようと思えば簡単だ。ローリスクローリターンか、ハイリスクハイリターンのどちだかだからだ。ハイリスクハイリターンなやつを身の程知らずに買い続ければ、そりゃいつか破綻する。まだ大丈夫というその一歩先に、阿修羅が待っている。

証券化されてガンガン投資マネーを集め注ぎ込む。満期があるから、いつでも処分できるものでもない。半グレ情報商材と何が違うのかというヤバさは冷静に考えれば、わかりそうなものだが、目先の成績だけを追うエリート集団が売りまくった。

さかのぼって1997年、日本四大証券の一角を占めた山一証券が損失隠しで廃業に向かっていったのも同類。業界4位の大手は危ない。政府が莫大な資金を投入したり、他行が救済を申し出て、終息する。リーマンでは「大きすぎてつぶせない」という名言が残った。

つぶれるのは張本人たちではなく、巻き添えを食ったその他大勢だ。山一の従業員も「社員は悪くありませんからっ」と号泣する社長のおかげで多くは外資大手のメリルリンチに引き取られた。これらはみな、誰もがおかしいとうすうす思っていながら止めず、「やばすぎて止められない」限界以上に積み上げた結果、ダムが決壊した例で、ある日突然起きるわけではない。時間をかけて起きている。いまローン担保証券(CLO)というハイリスク金融商品の残高は世界で82兆円(2018末)、サブプライムローンのピーク時(2007年)残高130兆円に比べればまだ少ないが、本邦金融機関の世界シェアは18%もある。農林中金はこれを7・7兆円(2020年)も保有している「クジラ」だ。

80年代の不動産バブル、90年代のバブル崩壊は日本国内限りのローカルな出来事だったが、リーマンショックではアメリカから世界中に津波が押し寄せた。現在、あらたなリスクを言われるCLO、あらたな金融商品も世界中にばらまかれている。

欲張りすぎて破綻するというシンプルな話だが、被害は無辜の民に及ぶ。戦争を起こした連中は戦死しない。戦争で稼いだ連中も損害賠償してくれない。金融危機の結果、ツケを払うのは平民だ。政治の腐敗でバカを見るのも必死で納税する平民だ。根拠も無く、欲深い他人や、お国を信じて任せるからバチが当たるので、これは自己責任。市場では誰かの損は誰かの得である。地震雷火事、親父がいなくて金融だ。天災と大差はない。市場はいつもチキンゲームだ。

◼︎いつまでカモられれば眼が覚めるのか

仕掛け方はいつも欧米にいる。いまだにジャパンはいいカモだ。バブル崩壊で、日経平均は約5週間で半分にまで下がった。自分はやばい金融商品に投資したわけでもないのに、リーマンショックのせいで、何が起きているのかわからないまま会社は倒産、派遣切り、雇止め、リストラ、解雇にあって、仕事を失い、路頭に迷った人は多い。これを自己責任というのは酷だ。翌2009年、日本の就業者はおそよ200万人減った。アメリカではすでに前年から700万人いた失業者が、翌2009年には1400万人に及んだ。

そんな記録もコロナがあっさりと塗り替えている。昨年夏から、米中摩擦と消費税引き上げで、足元景況感の悪化は始まっていて、そこにコロナが乗ってきた。コロナインパクトはリーマンショックをはるかに凌駕する。アメリカでは3―4月で2200万人が失職し、それから回復したが、8月末時点、アメリカではいまだに1200万人が失職したままだ。ただ、あちらには緑の紙の印刷機がある。9月からは少し給付額が下がるが、8月までは、マックで働いていたような普通の人で毎月4500ドル(47万円)の給付金、失業給付をもらってヒャッホーだと、日本人は信じるだろうか。しかし、それもいずれは切れる。いくらドル刷り放題のアメリカでも、働かない数千万人に、普段以上の金を払い続けることはできない。

コロナが引き金を引いた世界危機がもたらすものは短期的ダメージに終わらない。コロナのおかげで、よく考えたらあれもこれもいらない、なくてもいいことに気づいた。物を買わなくていい。無理して高い都市部に住まなくていい。マネーは手元においておく。自宅でゲーム、アマゾンで缶詰買って、ネットフリックスでカウチポテト。人との会話も減ったが、慣れた。欧州ではマスクをしてセックスしろと言われている。ジャパンはもともとセックスレスだが、フーゾクNGは痛い。コロナは世界のありかたを変えている。

これからもっと変わる。

コロナ危機が早晩終わるということは、もちろんもとの世界に戻ることでは決してなく、その他の危機が過ぎ去ることも意味してはいない。コロナによって目覚めた何かが、新たな危機を呼び込む。さらなる危機の波状攻撃が訪れるたびに、政府から少々の一時金をもらってしのぐことなどできない。いつまでも店や会社がそこにあるとは思わないことだ。国難以前に私の、あなたの生存がおびやかされる状況は、むしろこれからだ。それでも日本はたぶん大丈夫だ。根拠はないが、たぶんオレもオマエも大丈夫だ。考えないジャパンは怖いもの知らずだ。

そんな未曾有の危機の真っただ中で、憲政史上最長記録を更新した後、総理大臣が体調不良で辞めてしまう。ろくに説明もなく「体調不良で、会社やめるってよ」と。なのに、どこからともなく同情論が湧きだし、よくやった、乙、批判しちゃいけない、かわいそうぢゃないかという空気が支配する。風と共に去りぬ。ゴーン・withコロナ。そういや、カルロス・ゴーンも100億円つかんでバックレたままだ。

◼︎常に強いものに従うことで私たちは何を失い続けているのか

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レイテ島に再上陸を果たすマッカーサー/パブリック・ドメイン

次の総理大臣も同じシステムのナカで、ウラで決まる時、口だけは勇ましい若手中堅政治家も、親のコネで入った会社のサラリーマンの本質を露わにする。われ先と勝ち馬に乗る。野党は野党でおこぼれを拾いにいく下請け根性丸出しだ。一握りの長老たちが利益配分ゲームで楽しく遊んでいるだけの茶番で、事実上の超長期政権が続く。アメリカ大統領選挙をどれだけ謀略史観で見ても、謀略前提の中国共産党の党内闘争を見ても、こんなイージーな手法がまかり通る国は世界になかなかない。これはそうとうに、なめられている。やらずぼったくりとはこのことだ。

世界に例の無い珍妙な光景の数々をテレビで見ることができる。数多の不祥事責任論も、政治的結果に対する議論も総括もないままチャラになった。国家指導者、政治エリートたちはこんなにも軽く、薄く、安くなった。

軟弱化をすすめるジャパンは止まらない。鉄拳制裁はおろか、怒鳴りつけることすら犯罪だ。政治家に質問するのは子供記者たちだ。体調不良の診断書一枚で何でもできる。相撲部屋、電通、宝塚はもういない。古き良き体育会は遠い昭和の思い出の彼方だ。表面だけが軟弱化し、目に見えない狂暴と残酷が深く静かに潜航する。DVはマンションのドアの向こうにあり、うかがい知ることはできない。つらい仕事、安い仕事は下へ下へと流れ、ブラック企業は地下水流に潜る。街を半グレが支配する。一人暮らしの老人に容赦などせず、獲って喰らう。養護施設の中は、北朝鮮より遠い。

次の総理大臣がすでに言っている。まずは自助努力だと。他人に頼るな、甘ったれたことを言うな、自分で頑張れと言っている。ダグラス・マッカーサーは「日本人はまだ12歳の少年だ」と言って、畏くもこの国をアメリカの養子としてお守りになり、育ててくださった。少年が高齢者となったいま、自助せよとは、養父に命をお任せしているジャパンそのものに対するメッセージでもある。

自分の国は自分で守れと。民が国を守るとイキっても、国は民を守ってはくれない。だから平民は空っぽの財布でも、自分で守る覚悟が必要だ。高度福祉社会が訪れることは100年はないだろう。国家百年の計がないからだ。寧ろ世界は無法地帯に逆行する気配すらある。

赤の他人に全財産と命を預けて、思考を停止していたら生存できはしない。信じていたら騙される。寝ていたら食われる。メディアを信じない。トレンドを後追いしない。リスクを分散する。ましてや、国(もちろん外国も)をあてにしないことが重要だ。ケータイを無くしたら、全財産と全人間関係を失う緊張感を持とう。

1945年8月をもって、日本人は現人神を、天皇陛下からマッカーサー元帥に乗り換えた。権力にからきし弱い、権威にめっぽう弱いのが村人ジャパンの特徴だ。危機の最終段階、生存をかけた瞬間においては、あきらめと変わり身の早さがモノを言う。良くも悪くも忘却力と転向力で生存してきた。新たな占領者が現れても、きっと大丈夫だろう。幼児と老人のはざまで、彷徨うジャパン。引退することの無い亡者たちがいまだ国家・企業において人事を握るジャパンにおいて、世界規模の金融危機など、たかが天災の一種に過ぎない。

老いはからだと頭を鍛え、若きは失敗を繰り返して精神年齢を向上させよう。来週の月曜日、敬老の日、そして火曜日、秋分の日に次の世界金融危機が訪れても、そこは持ち前の思考停止と自助努力で乗り切ろう。

猫島 カツヲ

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