1兆6000億円「超巨額上場」で激震、ヤバすぎる国際諜報企業の正体

1兆6000億円「超巨額上場」で激震、ヤバすぎる国際諜報企業の正体

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/10/17
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裏の世界から表舞台へ

9月30日、時価総額150億ドル(約1兆6000億円)の巨額上場が市場を揺るがした。米パランティア・テクノロジーズ(以下パランティア)がニューヨーク証券取引所に上場したのだ。

「諜報の世界では知らぬ者がない巨大情報企業が、いよいよ表舞台に姿を現した」

世界各国の情報機関の動向に通じる外事関係者は、そう指摘する。

パランティアは今年7月6日に米証券取引員会(SEC)に新規株式公開(IPO)の申請を行った。同社は2004年に米カリフォルニア州パロアルト、いわゆるシリコンバレーで創業されたデータ分析企業であるが、来歴からして興味深い会社だ。

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Photo by gettyimages

そもそも「パランティア」とは、英国の著名なファンタジー作家J・R・Rトールキンの代表作『指輪物語』に登場する不思議な霊力を持った石の名称で、全世界ばかりか過去も未来も見通す水晶玉のような道具のこと。データ分析によって、ありとあらゆるものを見通す「神の目」たらんという意図を込めて命名された。

パランティアの創業者はかのペイパル創業者ピーター・ティールで、その際の資金はCIA(米中央情報局)が直接運営するベンチャーキャピタルIn-Q-Telが提供した。In-Q-Telは、諜報活動を通して世界中から集まる膨大な情報を解析するための技術開発を目的に1999年に設立され、1億7000万ドルの資金を運用し、数多くのIT企業に投資を行っている。

In-Q-Telの社名の由来も奥が深い。Intel (Intelligence=情報、諜報の略)の間に、スパイ映画「007」に登場する英国諜報機関の管理者「Q」(QはQuartermaster「需品係将校」の略で、研究開発課の責任者の意味もある)を挟んだとのこと。初代CEO(最高経営責任者)が、人気のコンピュータ・ゲーム「テトリス」のライセンスを旧ソ連の開発者から最初に取得したことで知られるゲームの開発者であった点も興味深い。

ともあれ、パランティアはCIAの資金で創設された情報解析企業なのである。

「Xキースコア」の脅威

そして、そのパランティアの代表的な業績が「Xキースコア」という驚異的なメール・ハッキングソフトだ。外事関係者が語る。

「パランティアは創業からわずか数年で優れた情報解析システム『Xキースコア』を開発し、めざましい実績を上げた。最たるものは、CIAが血眼になって探していたイスラム過激派『アルカイダ』のトップで、米同時多発テロの首謀者と目されたオサマ・ビン・ラディンの追跡任務への協力だった。同社はこれを見事にやり遂げ、ビンラディンは2011年5月、パキスタンにおいて発見され、射殺された」

こうしたことが評価され、パランティアは米情報機関の御用達となった。CIAを筆頭にNSA(米国家安全保障局)、FBI(米連邦捜査局)、さらにはDIA(米国防情報局)などが顧客となったというが、その存在を世に広く知らしめたのは、NSAの世界的な監視網の実態を暴露した元CIAおよびNSA局員であったエドワード・スノーデン氏だった。

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2013年6月、スノーデン氏はNSAが採用している情報収集プログラムについての機密文書をジャーナリストに渡し、その実態を暴露した。この告発によってまず明らかになったのが、「プリズム」というプログラム。NSAはこれを用いて、グーグル、ヤフー、フェイスブック、マイクロソフト、アップル、ユーチューブ、スカイプなど米大手IT会社のサーバーにアクセスし、通信記録を入手していたのである。

世界中でサービスを提供するIT企業が情報収集に加担しているとの暴露は大きな反響を呼んだが、このときNSAが採用していた「Xキースコア」の威力にも注目が集まった。

スノーデンの告発の契機に

前出の外事関係者が話す。

「スノーデン自身、CIA局員として2007年にスイス・ジュネーヴへ派遣された際にこのプログラムを知ったというが、その使われ方を見てショックを受けた。

たとえば、『攻撃』『殺し』『ブッシュ』などとキーワードを入力して米大統領への敵対的な発言をネット上で検索すると、メールはもちろんチャットやブログ、フェイスブック、さらには非公開のネット情報をも含めて世界中の人々の通信内容が即座にリストアップされてくる。

しかも追跡能力も高く、マークした情報の発信者の身元などはもちろんのこと、その人物と情報をやり取りしている人たちまですべて把握できてしまう。さらに、それらの人物の位置情報や立ち寄り先、接触相手、さらにはネットの閲覧内容や商品購入など、ネットを通じる情報は遺漏なく網羅することも可能だという。

こうなると、秘密などもはや存在しない。これをもとに、さまざまなこともできる。やろうと思えば、名誉棄損どころか実生活に被害を与えることや、身体や生命を脅かすことも難しくない。ビン・ラディンの追跡と殺害はまさにその威力を示すものといえるが、スノーデンはこの実態を知って危機感を抱き、告発へと動いた。『神の目』と言えば聞こえはいいが、実際のところは神をも恐れぬネット監視。覗き見だ」

これについては、日本の国会でも問題になった。2017年5月の衆院外務委員会で共産党の宮本徹議員が、同年4月に米インターネットメディア・インターセプトが公開した「スノーデン・ファイル」(スノーデン氏が持ち出した機密文書)をもとに政府を追及したのである。

宮本議員は、「Xキースコア」をNSAが内閣情報調査室経由で防衛省情報本部電波部に提供したという記述があるとしたうえで、「国内外のネット上のさまざまな情報を収集しているのか」と問いただしたが、政府側はこう答弁した。

《内閣情報調査室におきましては、平素から関係各国との間で必要な情報交換を実施しているところでございますが、その具体的な内容や時期等を明らかにすることは、他国との信頼関係を害することにもなりかねず、今後の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、お答えは差し控えたいというふうに存じます》

《防衛省におきましては、我が国の防衛に必要な情報を得るため、我が国上空に飛来する軍事通信電波や電子兵器の発する電波などを全国各地の通信所などで収集し、整理、分析しております。電波情報業務の具体的内容につきましては、将来の効果的な情報活動の支障となるおそれがありますことから、お答えを差し控えさせていただきますが、防衛省・自衛隊におきます情報収集活動は、我が国の防衛に必要な情報を得るために行っているものでありまして、インターネット上のメールの傍受を含め、一般市民の監視を行っているものでは全くありません》

これに対し、宮本議員は「内閣情報調査室が音頭をとって、『Xキースコア』を手に入れて、防衛省、警察(情報本部の歴代電波部長は警察庁から出向)、一緒になって、個人の情報を監視できる体制をつくっていっている。とんでもない話ですよ」と批判を浴びせたものの、糠に釘であった。

もっとも、日本政府の答弁は詭弁に近いと言えるようだ。「ネット監視」を否定したというよりも、「一般市民の監視」を否定したというのが正しい読み方とみられる。しかも、政府にとって都合が悪ければ、「一般市民」はいつでも「特定の市民」になりうる。

その証拠に、防衛関係者は当時、こんな証言をしていた。

「2012年、日本はインターネット諜報を開始した。NSAから提供された『Xキースコア』を稼働させ、日本全国のデータを網羅的に収集している。活動拠点は福岡県の太刀洗通信所に置かれている」

日本も関与している「タブー」

大刀洗通信所とは、1997年にDIAに習って設置された日本最大の電子諜報機関・防衛省情報本部傘下の6つの通信所のうちの一つで、巨大なレーダードーム施設を有し精鋭部隊が配備されている。

「通信所内には、B地区と呼ばれる閉鎖エリアがある。出入りには公道の下をくぐる地下道を利用するのが原則で、道路に面したゲートは機材の搬入等以外に開けられることはない。そして、地下に広大な基地が設けられ、他の部署と交流を断った別働部隊が常駐している。これこそが、インターネット諜報部隊だ」(防衛省関係者)

つまり日本は、パランティアの驚異的なプログラムを、それがスノーデン氏の告発によって世の中に知らしめられる以前に導入していながら、現在に至るまで公には決して認めようとしていないのである。

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自衛隊太刀洗通信所(画像:Google Earth)

その意味では、パランティアという企業を詮索すること自体が一種のタブーなのかもしれない。だが今回、同社は株式公開を行い、その事業内容を公にした。上場の目的はいったいどこにあったのか。

「有名になり過ぎたために、CIAが手綱を放すことにしたのだろう。これまでのような諜報業務には、すでに別の会社が用意されているのではないか」

前出の外事関係者はそう分析するが、防衛関係者の見方は異なる。

「もっと多くの企業から機密情報を吸い上げるためだろう」

富士通、SOMPOも出資

パランティアについては、別の興味深い話がある。日本の著名企業も出資しているのだ。

今年6月、大手IT企業の富士通がパランティアと戦略的提携をし、約53億円を出資すると発表。また、損保ジャパンをはじめとする保険会社を傘下に持つSOMPOホールディングスも同月、5億円を出資することを明らかにしている。

防衛関係者によれば、個人資産や金融情報、医療情報といった分野にも手を伸ばそうとしているのではないか、というのである。

同関係者は、パランティアが現在の米政権との関わりが深いことも憂慮する。同社の創設者ティール氏はトランプ大統領の支持者として知られ、政権のアドバイザーも務めている。「アメリカ・ファーストの旗振りのもと、日本の情報が狙われているように思えてならない」(防衛関係者)。

パランティアとは別の「諜報企業」が立ち上げられるにしろ、同社の提携企業が増えるにしろ、日本の情報が危険にさらされていることに変わりはない。政府は米国の技術に便乗し、国民に背を向けている場合ではないはずだ。

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