「ウィズコロナ」をめざす北朝鮮 コロナ禍よりも食糧不足が深刻

「ウィズコロナ」をめざす北朝鮮 コロナ禍よりも食糧不足が深刻

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  • 更新日:2022/06/23
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北朝鮮の金正恩氏

北朝鮮がミサイル発射を続けている。新型コロナウイルスの感染拡大はいったん落ち着いたもようだが、経済再建の道筋は見通せず、国民生活は苦しいままだ。AERA 2022年6月27日号より紹介する。

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北朝鮮は6月5日、国内4カ所から計8発の短距離弾道ミサイルを日本海に向けて撃った。7回目となる核実験も、いつでも強行できる準備が整っているとみられている。国際社会からの経済制裁で、ただでさえ疲弊した国民生活が、コロナ禍で痛手を負っているさなかのミサイル発射だった。

首都・平壌で新型コロナウイルスの感染者が確認されたと、北朝鮮が明らかにしたのは5月12日。感染者の存在を公式に認めたのは初めてのことだ。朝鮮中央通信によると、この日に金正恩総書記の出席のもと、朝鮮労働党の幹部を集めた政治局会議が開かれ、オミクロン株の流入を受けて「最大非常防疫態勢」に移行することが決まった。

■初めてマスク姿で登場

金総書記はマスクを着けて会場に入った。マスク姿が公になったのはこれが初とみられる。同日午前に公開された写真では、会場の時計の針が3時前を指しており、未明に会議を開催したようだ。金総書記が人民のために、全力で対応していることをアピールする狙いが透けてみえる。金総書記は「全国のすべての市、郡で地域を徹底して封鎖」するよう指示したという。

国家非常防疫司令部は、翌13日に全国的に17万人以上の発熱者が発生し、21人が死亡したと報告した。金総書記は14日、「建国以来の大動乱だ」と危機感を示した。北朝鮮ではPCR検査を広範囲で実施できる環境は整っておらず、実態は当局自身も把握できていない模様だが、感染が拡大したことは確実視されている。

北朝鮮はなぜここにきて、感染者の発生を公表したのか。

「世界の潮流と同じく、北朝鮮も感染者の存在を前提にしたウィズコロナの方向に進むという意思表示だろう」

こう話すのは、北朝鮮に詳しい環日本海経済研究所調査研究部の三村光弘・主任研究員だ。

三村さんは「北朝鮮は国民に新型コロナへの恐怖感を植え付けすぎた」と指摘する。「オミクロン株は感染力は強いが、死亡率は低いとされている。そろそろ感染者がゼロだという建前から脱却し、恐怖心を解く時期だと判断したのではないか」

筆者の取材でも、こうした見方に沿った証言が相次ぐ。

新型コロナの流入を恐れる北朝鮮は、中国で新型コロナが拡大した2020年1月下旬に国境を封鎖した。しかし、中国にいる北朝鮮の内情を知る複数の関係者によると、北朝鮮が感染者の存在を公表してから状況は変わった。オミクロン株は重症化の可能性が比較的低いという認識が、政権の上層部にも庶民にも浸透してきたというのだ。

北朝鮮は連日、発熱者の人数を発表しながらも、5月下旬からは状況が「安定している」と強調。4月末から6月15日までの発熱者は累計で455万人を超えたが、一時は40万人に迫った1日ごとの新たな発熱者は2万人台まで減ったとしている。

■神経をとがらせる中国

金総書記は6月8~10日に開かれた党中央委員会総会で、「国家防疫事業が重大な峠を越え、封鎖を基本とした防疫から、封鎖と撲滅闘争を並行させる新たな段階に入った」と述べた。封鎖一辺倒はやめ、人やモノの移動をある程度は許容するという宣言と受け取れる。

この方針に沿うように、北朝鮮は中国に対し、4月下旬ごろに停止された両国間の貨物列車の定期的な運行を再開するよう要望している。防疫対策として列車の往来を止めるよりも、深刻な食料・物資不足の解消を優先するとの判断がある。

厳格な「ゼロコロナ」政策を続けている中国は5年に1度の共産党大会を秋に控え、国境からの新型コロナ流入を防ごうと神経をとがらせており、列車の運行再開の時期は見通せない。(朝日新聞瀋陽支局長/金順姫)

※AERA 2022年6月27日号

金順姫

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