残念なマーケティング担当者に見られがちな特徴

残念なマーケティング担当者に見られがちな特徴

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2022/11/26
No image

他部署と衝突してしまうような組織設計が根本的な問題だ(写真:Graphs/PIXTA)

会社でマーケティングを担う組織について、他部署の社員が「何の成果を出している組織なのかわからない」というケースがある。マーケティング組織は得てして、どのような成果を目指して活動しているのか、そのために日々何をしているのか、曖昧になりやすい。これがなぜなのかを、BtoB企業を例に解き明かそう。

拙著『BtoBマーケティングの定石~なぜ営業とマーケは衝突するのか?』でも詳しく解説しているが、マーケティングの部署が成果に繋がらない曖昧な仕事ばかりに傾倒してしまうと見られがちなのは、営業を始めとする他部署と衝突するような組織設計をしてしまうことが最大の要因である。

マーケティング組織が浮世離れする原因

まず理想的なマーケティング活動の前提になる「顧客視点」について考えてみよう。顧客は「商談前」「商談中」「購入後」という体験を、連続した出来事として捉える。「企業視点」では、別の部署が担当していたり、対応履歴が残っていなかったりで、対応がバラバラになりがちだが、「顧客視点」では一貫した体験が期待されるのだ。

体験が連続していないと、例えば「商談前の担当を信頼していたのに、違う人が営業に来た」「買う前にお願いしたことが、サポート担当に引き継がれていない」などの、さまざまなネガティブな反応を引き起こす。

理想のマーケティング活動では、「顧客視点」にコミットすることが求められる。サイロ化されて「企業視点」に陥りがちな他部署に対して、働きかけを行うことが必須だ。しかし組織間の壁が高すぎる場合や、組織の壁を打ち破る力がマーケティング組織に備わっていない場合、このような理想は実現されない。マーケティングがうまくいくかどうかの肝は、マーケティングを担う組織の作り方にあると言っても過言ではない。

よく見かける組織設計の失敗例の1つは、マーケティングの定義を狭く捉えすぎた経営者が、局所的な役割だけを任せるパターンだ。組織の目的を「リード(見込み客)獲得」や「認知獲得」などに限定してしまい、「Webサイト運営」「広告出稿」「セミナー企画」など営業の手前までの業務を担当する組織が作られる。

確かに営業の手前の業務は企業にとって必要だが、これらは本来のマーケティング活動のごく一部にすぎない。理想のマーケティング活動に照らせば「営業に顧客を引き渡せば仕事が終わり」となるはずがない。

この組織の正しい名称は、あくまで「リード獲得」や「プロモーション」であり、位置づけはマーケティングを担う部門の1ユニットだ。本来の意味でのマーケティングをミッションに持つ組織は、商談中の顧客と接する営業も、購入後の顧客と接するカスタマーサポートも、それぞれ1ユニットとして束ねるような組織だ。そうであってはじめて、全社の活動を顧客視点で再設計するような大仕事が果たせる。

部門横断組織に他部署との調整力を与えない

こうしたことは、部門横断でマーケティングを担う組織を立ちあげるときに、よく見られるパターンだ。こういった組織には「マーケティング本部」や「営業企画本部」という名称がつけられていたり、デジタルに特化して「DX本部」「CRM推進本部」「デジタル統括本部」などという名称がつけられていたりする。

先ほどの例とは異なり、マーケティングは全社で取り組まねばならないもの、と認識されている点は、一歩前進といえるかもしれない。しかしながら、このアプローチはこれまでことごとくが失敗に終わってきた。失敗の原因は、ひとえにマーケティング組織に付与された社内調整力が脆弱であることに尽きる。

「顧客視点」への変革は、短期的な売り上げ増加が起こりにくい一方で、個別の担当分野で取り組みを積み上げてきた部署に対して、全体最適の観点で別のことを優先してもらったり、やり方を変えてもらったりする必要がある。たとえば短期売り上げにコミットしてきた営業部門からすれば、ぽっと出の部署からどう見ても面倒くさそうな仕事を提案されたと感じるため、当然のように反発したくなる。

そうであれば、この新しい横断部署に与えられる権限は、他部署と対等ではまったくもって足りない、ということになる。また権限だけでなく、社内からの人望が足りない場合も即失敗する。

この部門に求められる仕事は、顧客視点を持って、他部門を説得・調整することだ。社内の人間関係を理解し、時には泥臭く人間関係を築き、時にはファクトを駆使して正面突破しなければならない。

しかし得てして部門横断で立ち上げられる組織は、外部から「マーケティング」や「デジタル」の専門家を集めることに執心し、社内の人間関係に詳しい生え抜きの人材がいないか少数にとどまることが多い。結果として、ミッションの完遂に最も重要な「社内調整力」が極めて弱い組織になることが多い。

社内調整に必要な権限も人望も欠いたマーケティング横断組織は、各部署から単純作業を押し付けられるだけの「便利屋」になり、集めた専門知識を持ち腐れさせることになる。

組織設計の失敗によって他部署への影響力を行使できないマーケティング部門がたどり着くのは、自分たちの部署だけで完結する「やった感のある自己満足の仕事」の量産だ。典型的には、「ツール導入」「データ統合」「デザイン刷新」の3つが挙げられる。

新しい「ツール導入」は、マーケティング活動を始めるにあたって一定は必要になるもので、ツール自体が悪いというわけではない。一方で、導入の目的や活用方法、業務への組み込み方を考えることなしに、とかくツールさえ導入すれば何かができるようになるというのは、都合の良い幻想である。

社内に無用の長物として眠ってしまうのが関の山

ベンダーの営業文句に乗せられるままに導入しても、目的と仮説がない場合、社内に無用の長物として眠ってしまうのが関の山だ。せっかく導入したツールが、社内でまったく使われなくて困っているという話や、導入成果が出ているのやら、そもそも効果測定の方法から見当がつかないという話など、困った相談を受けることは枚挙にいとまがない。

同じく「データ統合」も、社内に散らばったリソースを集約するという大義名分のもと、マーケティング部門の実績として標榜されやすい施策である。これもまた、データを集める目的と、活用方法の仮説がないままに進めてしまえば、何の成果も生まない。

データ分析はふつう、演算の部分を機械に丸投げしてしまえるとしても、設計の部分には人の思考が挟まる必要がある。どのようなことを検証したいかを定め、必要な集計を定義して初めて、必要なデータが特定される。これが奇跡的に、社内のどこかにすでにたまっているデータと一致する可能性は限りなくゼロに等しい。偶然たまっていた顧客データを集約する「データ統合」からは、役立つ使い道や結果が出てくることがないのは当たり前である。

最後に「デザイン刷新」もまた、やった感のある施策として好まれやすい。具体的には、Webサイトのデザインリニューアル、ロゴのリブランディング、カタログのデザイン刷新などが該当する。これらはコストがしっかりとかかる一方で、成果を測定しづらい施策ゆえに、成否そのものがうやむやにされることが多い。

取引経験のあるBtoB企業を思い浮かべて、「ロゴのデザインが良くなったのでA社からB社に乗り換えた」「サイトの色調が変わったので取引量を増やした」という経験があったかどうか振り返ってみてほしい。察しの通り、「デザイン刷新」で顧客が喜ぶことはないと考えてよく、これのおかげで「顧客視点」への変革が進むこともない。

例に挙げた3つの施策はいずれも、他部署との利害関係が生じにくく、権限の十分に与えられなかったマーケティング部署にも取り組みやすい。また、作業を淡々と進めて完了すれば、それ自体を成功したプロジェクトのように仕立て上げて喧伝できてしまう。

加えて、ツール・データ基盤・デザインのいずれも、トレンド感のある関連のバズワードが生まれては消えていく領域である。バズワードのお祭り騒ぎに乗ってしまうと、ベンダーに呼ばれてカンファレンスに登壇したり、それがメディアに取り上げられたりと、ともすれば先進企業になったかのような錯覚すらできてしまう。

顧客視点にコミットできる権限と人材を揃える

ところが、事前に目的や仮説を立てることなしに、加えて各部署との調整もなしに、前述のような施策が売り上げ増加やコスト削減に貢献することはない。また、当然のことながら、顧客視点への改革にもまったくつながらない。こうして他の事業部の目線からすれば、事業とは距離のあるところでよくわからない横文字の施策をやっている、浮世離れしたマーケティング部署ができあがってしまう。

No image

顧客対応を複数の部署や担当者で分担すること自体は、組織が大きくなれば仕方のないことだ。また、あらゆる組織設計には一長一短があり、完璧な組織設計がないのもまた事実である。

ところが、本来のマーケティングが「顧客視点」へのコミットであるとすれば、担当の部署が組織を横断的に監査する権限を持ち、社内調整力の高い人材を揃えていることは、必須の要件なのである。

特に社内調整力の高い人材というのは、さまざまな部署において高いパフォーマンスが出せる。故に、各所からの引き合いが強い人材であることが多い。このような人材を、マーケティング部署にあてがえないということは、組織設計に責任を負う経営者のマーケティングへの考え、ひいては顧客の心地よい体験を実現しようという「顧客視点」への考えが甘いといえる。

(垣内 勇威:WACUL代表取締役)

垣内 勇威

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加