「YouTubeは昔のテレビに近づいている」「NHKはまさにサブスク」テレビ東京退社から半年...佐久間宣行が考える“テレビの今”

「YouTubeは昔のテレビに近づいている」「NHKはまさにサブスク」テレビ東京退社から半年...佐久間宣行が考える“テレビの今”

  • 文春オンライン
  • 更新日:2021/10/13

『ゴッドタン』『あちこちオードリー』など数々の人気番組を手掛けてきたテレビプロデューサーの佐久間宣行さんが、今年3月にテレビ東京を退職。様々なフィールドで八面六臂の活躍を見せる佐久間さんに、フリーランスに転身する決断、YouTubeチャンネルの開設などについて聞いた。(全2回の1回目/後編を読む)

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45歳でフリーになった理由

――佐久間さんがテレビ東京を退社されてから半年が経ちました。20年以上勤めた会社を辞めるのには相当な勇気がいると思いますが……。

佐久間宣行さん(以下、佐久間) 会社を辞める1年くらい前からずっと悩んでいました。ある時、ふと5年後の自分をイメージして、会社にいた方がいいか、フリーになった方がいいか考えたんです。いま45歳ですから、5年後には50歳になる。それまでに、テレビの制作以外のクリエイティブをやらないと、いつか人生を振り返った時に、絶対後悔するなって思ったんですよ。

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©文藝春秋

――周囲の方々はどんな反応をされましたか。

佐久間 驚きはしませんでしたね。テレビ局の中で働いている人間は映像制作業界の変化を肌で感じているから、辞める選択肢もあるよね、と思っていたみたいです。それに僕は2019年からラジオ番組のパーソナリティをやっているので、会社の中ではちょっと特異なポジションにいたんです。むしろ番組でご一緒している芸人さんの方が「順調なのに、何で辞めるの?」と驚いていましたね。「何かあったんですか」と心配されたり(笑)。

――今年7月にはYouTubeチャンネル『NOBROCK TV』を開設されました。あえて「TV」とつけた理由を教えてください。

佐久間 「テレビプロデューサーやってるよ」というのが視聴者にわかるようにしようと思って。あとは、昔のテレビみたいな、いろいろなジャンルの笑いの側面を出していきたいからです。自分でYouTubeチャンネルを始めて思ったのが、YouTubeは昔のテレビにどんどん近づいているということ。インフラとして完全に一般化して、老若男女が観ていますよね。テレビ業界は個人視聴率にシフトしつつありますが、それ以前のテレビって、上の世代を意識してか、情報がきちんと入っている番組が多かったじゃないですか。あれと同じ感覚で、YouTube番組もサムネイル画面にちゃんと情報が入っているものの方が観られるんです。

――特に反響が大きかった企画を教えてください。

佐久間 オードリー春日くんのドッキリ企画の再生回数が多いです。春日くんが偽番組の楽屋で謎の薬を飲みまくる「嘘ドーピング」を行って、それを見た女性アシスタントがどういう反応をするか検証するという内容なんですけど、撮っている時からとにかく面白かった。春日くんがここまでやれば、絶対に面白くなるという確信が元々あったけど、ターゲットの椿原愛さんがものすごく信じやすい人で。ドーピングしまくる春日くんを真剣に心配して泣いてくれたから、想定していた以上の出来になりました。

「出演者」になり見えてきたこと

――YouTubeやラジオで「出演者」の立場になって見えてきたことはありましたか?

佐久間 出演者になって大変だと感じたのは、発言を「誤解」されてしまうことです。僕の言いたいことを、きちんと文脈をとらえて理解してくれる人って滅多にいなくて。ラジオは僕のことを知っている人たちが中心に聞いてくれているから、安心感があります。でも放送内容が切り取られてネットニュースになると、真意が伝わらない形で拡散される。それに対して物申したい人たちの悪意ある言葉がSNS上で増幅していく。そういうのが直接ぶつかってくるから、今の時代の出演者は本当に大変ですよ。

――プロデューサーとして、現場では盛り上がって面白くても、誤解を避けるために編集でカットすることもあるのでしょうか。

佐久間 沢山あります。この10年ずっとそうだったけれど、さらにセンシティブになってきていますね。

――テレビとYouTubeで、番組の作り方に違いはありますか?

佐久間 僕のYouTubeチャンネルでは「トーク企画」と「バラエティ企画」が2つの柱になっていますが、どちらもテレビ番組の作り方とあまり変わりません。バラエティ企画では、「僕じゃなきゃこんなに狭いところやらないよな」っていうドッキリをやっています。とはいえ、初めから“自分がやりたいこと”だけで勝負していません。僕の持っている特性の中から「強み」となる部分をまずは1、2年やってみて、そこから徐々に僕にしか出せないものを作っていこうと思っています。

動画配信サービスの台頭は歓迎

――佐久間さんの「強み」とは、具体的にはどんなところでしょうか。

佐久間 例えばラジオの場合だと、最初の1年間は、お笑いや芸人さん、収録の裏話などをしていました。リスナーはただのおじさんの私生活には興味ないだろうと思って(笑)。2年目の途中から、コロナ禍で何も起きないこともあって、普通にプライベートの話もするようになりましたが。

それと同じで、YouTubeでも視聴者を獲得するために、まずはテレビプロデューサーならではのコンテンツを作ろうと思ったんです。芸人さんたちが出演するテレビっぽい企画を中心に作れば、観に来てくれる人は多いだろう、と。いま登録者数が20万人なので、30万人を超えたら、実験的な企画にも挑戦してみたい。テレビで培ったものとYouTubeでしかできないものの間で、ちょうどいいバランスを探そうと思っています。

――YouTubeの他にも、Netflix、ABEMAなど動画配信サービスが台頭しています。

佐久間 視聴者としてはめちゃくちゃ嬉しい。サブスクのおかげで“視聴人生”が充実しています。僕は「作り手」というよりは、「ソフトの受け手」という感覚の方が強いので、好きなものを死ぬまで観続けたい。番組作りはあと10年くらいでしょうね。

――「作り手」としては、どう感じていますか?

佐久間 単純に企画を持ち込める場所がいろいろあるのはいい状況だと思います。ただ、Netflixとか大手はバジェット(予算)も大きいと思いますけど、新興の配信サービスだとテレビの深夜番組よりちょっといい位だったりするし。テレビ東京は全然バジェットがないから他局が羨ましかったけど、フリーになって他局でも番組を作り始めて、そこまで大きな差があるわけではないな、と。テレビ市場全体がシュリンクしていますからね。

逆に、テレビ東京で少ないバジェットで番組を作る方法を学んでいたから、そのノウハウが役立っています。いま、テレビ業界で潤沢な予算があるのはNHKくらいじゃないですか? NHKは日本国民のほとんどが加入していて、受信料もかかる。まさにサブスクじゃないですか。

「僕が就活したのは“氷河期”真っただ中で…」テレビプロデューサー・佐久間宣行が“天職”に就くまでの「意外な道のり」へ続く

(池守 りぜね)

池守 りぜね

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