【木瓜】なんと読む?春先に美しい紅色の花を咲かせ、「放春花」の別名をもつ植物

【木瓜】なんと読む?春先に美しい紅色の花を咲かせ、「放春花」の別名をもつ植物

  • 婦人公論.jp
  • 更新日:2023/03/19
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日本の草花を四季に応じて紹介する『日本の花を愛おしむ 令和の四季の楽しみ方』(著:田中修 絵:朝生ゆりこ 中央公論新社刊)から、身のまわりの植物クイズを出題。今回のテーマは「【木瓜】」です。

【イラスト】木瓜、春先に咲く花は、明るくあざやかな紅色

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ウリのような実をならせる木

この植物は、平安時代の初期に中国から日本に渡来したといわれます。観賞用の植物として、鉢植えや庭木として栽培されてきました。「春告草(ハルツゲグサ)」とよばれるのはウメですが、この植物は、「放春花(ホウシュンカ)」とよばれます。

この植物は、暖かくなりはじめると、葉が出るより先に花を咲かせはじめます。咲いた花は、明るくあざやかな紅色をしており、緋色(ひいろ)と表現されることがあります。近年は、花が白色やピンク色などの品種も出まわっています。まれに、一つの花の中に、紅色と白色の入り混じった花が咲いているものもあります。いずれの花も、明るい春の香りを放っているように感じられます。そのため、「放春花」という名前をもっているのです。

「ボケ」という、この植物の名前を耳にすると思わず、「なぜ、こんな名前になったのだろう」と考えてしまいます。でも、《ボケ》という音は同じですが、私たちが考えなければならないような深い意味はありません。

この植物の果実の姿は、ウリの果実に似ています。そのため、ウリのような実をならせる木という意味で、漢字名は、「木瓜」と書かれます。「木瓜」は、「もっけ」や「もけ」とよばれて、それが「ボケ」と訛(なま)ったといわれます。「ぼっくわ」と読み、この音から「ボケ」になったという説もあります。

ボケの学名は、「カエノメレス スペシオーサ」で、「スペシオーサ」は、ギリシャ語で「美しい」や「はなやかな」を意味します。属名の「カエノメレス」は、「裂けたリンゴ」や「口を開けたリンゴ」を意味します。果実の形が、球形か楕円体で、リンゴのように見えるからです。

日本では、リンゴではなく、ウリの果実にたとえられて「木瓜」なのです。

葉っぱより先に花を咲かせる

この植物の花がきれいに咲いているのを見ると、「木瓜」という漢字が思い浮かびます。むずかしい漢字名です。これをきっかけに、同じようにむずかしい漢字名をもつ、春に花咲く植物を思い出してください。馬酔木(アセビ)、蒲公英(タンポポ)、辛夷(コブシ)、金雀枝(エニシダ)、射干(シャガ)などです。このようにすると、木瓜は「惚け防止」に役立ってくれるでしょう。

ボケは、ウメ、ロウバイ、サクラなどと同じように、春に葉っぱが出るより先に花を咲かせます。これらの花木は、木の幹や根に栄養を蓄えているので、葉っぱが先に出てタネや実をつくるための栄養をつくる必要がないので、葉っぱが出るより先に、花を咲かせることができるのです。

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ボケは葉っぱが出るより先に花を咲かせる(写真提供◎photo AC)

葉っぱが多く出たあとで咲く花より、葉っぱが何もない状態で花が咲けば、花が目立ちます。ですから、花粉を運ぶ昆虫たちに、花が咲いているよとアピールできます。だから、植物にとって、花が葉っぱより先に出ることに、メリットがあることは、フクジュソウの回で紹介しました。でも、花が必ず葉っぱより先に出るのは、やっぱり不思議です。

この不思議は、春には、葉っぱを包み込んだ芽と、ツボミを包み込んだ芽の二種類があることに気づけば解決します。二つの芽には、暖かさに反応する敏捷(びんしょう)さの違いがあるのです。

ボケやウメ、ロウバイ、サクラなどでは、ツボミを包み込んだ芽のほうが、葉っぱを包み込んだ芽より低い温度で先に成長します。ですから、葉っぱが出る前に、花が咲くのです。

紅白入り混じった花が咲くことも

この植物では、一つの花の中に、紅白に色が入り混じった花が咲くことがあります。「紅色の花の中に白色が混じった花が咲いた」、あるいは、「白色の花の中に紅色が混じった花が咲く」という現象です。「絞(しぼ)り」とよばれることもあります。これは、花びらの中で、突然変異がおこっている可能性があります。

花の紅色は、花びらの中でつくられる「アントシアニン」という色素の色です。ですから、紅色の花の花びらの中では、アントシアニンをつくるための遺伝子がはたらいてアントシアニンがつくられているのです。

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紅白に色が入り混じった花が咲く(写真提供◎photo AC)

ところが、花びらの中で、この遺伝子が正常にはたらかないことがおこると、紅色の色素がつくられなくなります。紅色の色素がつくられなければ、花びらのその部分は白色になります。「紅色の花の中に白色が混じった花が咲いた」と表現される現象がおこるのです。

この現象をおこす一つの原因に、「トランスポゾン」とよばれるものがあります。これは、「動く遺伝子」ともいわれます。これは、紅色の色素をつくる遺伝子の中に割り込むように入るのです。

すると、紅色の色素をつくる遺伝子が正常にはたらくことができません。そのため、紅色の色素はつくられず、白色の花になります。

トランスポゾンは、割り込んでいた場所から、また突然に飛び出していくこともあります。この場合、紅色の色素をつくる遺伝子は正常に戻ります。ですから、白色の花の花びらの中に、紅色の色素ができ、「白色の花の中に紅色が混じった花が咲いた」ということもおこるのです。

ボケ(木瓜)

[科名]バラ科
[別名]ホウシュンカ(放春花)、カラボケ(唐木瓜)
[原産地]中国
[花言葉]平凡、魅力的な人、知恵、熱情

田中修

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