「沖縄の心を発信してくれた」「政治パフォーマンスだ」。沖縄県の玉城デニー知事が国連人権理事会で、米軍基地問題を巡り政府方針と異なる演説をしたことに、県内では19日、さまざまな声が聞かれた。基地問題などに対する県民の意見は割れており、玉城氏が国際社会に向けて一方的な意見を表明したことには、批判も上がっている。
「国際社会に誤解」
スイス・ジュネーブで18日に開かれた国連人権理の会議。玉城氏は米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画について、自国の政府方針をあからさまに批判した。
《日本政府は貴重な海域を埋め立てて、新基地建設を強行しています》
玉城氏を支える「オール沖縄会議」は、この演説を「県民の願いが込められた内容」と評価する。共同代表の糸数慶子元参院議員は「米軍基地の存在が県民の負担となり、人権をも侵害しているという現実に、国は真剣に向き合うべきだ」と話した。
玉城氏は今回、政府の防衛政策にも反対した。
《軍事力の増強は日本の周辺地域の緊張を高めることが懸念されるため、沖縄県民の平和を希求する思いとは全く相いれません》
これに対し保守系の識者からは懸念や批判が上がった。自民党県連政調会長の座波一(はじめ)県議は「知事の発言は国際社会に誤解を生じさせかねず、極めて残念」と強調。沖縄在住のジャーナリスト、仲村覚氏も「軍事力を増強し、緊張を高めているのは中国だ。知事の演説こそ県民の思いと相いれない」と指摘する。
「反対運動は無意味」
基地を含む安全保障問題について、県民の意見は一枚岩ではない。
明星大などの研究グループが6月に発表した県民への意識調査では、沖縄に基地が集中する現状に約7割が「不平等」と感じる一方、中国の軍事力増強にも約8割が「脅威」を抱き、約4割が「日米安保の強化」に肯定的だった。
また、18~34歳の若い世代の5割以上が「国防政策は政府に決定権があるので基地反対運動は無意味」と考え、国との対決姿勢を強める県に批判的な雰囲気が広がっている様子もうかがえた。
今回の演説について那覇市内で聞いたところ、30代女性事務員は「沖縄の現状を国際社会に知ってもらうのはいいことだと思う」。20代男性会社員は「国連で訴えても何かが変わるとは思えない。政治パフォーマンスだ」と話していた。(川瀬弘至)