モンスター新入社員の特徴。注意をしたら「パワハラだ」「訴える」対策はあるのか

モンスター新入社員の特徴。注意をしたら「パワハラだ」「訴える」対策はあるのか

  • 日刊SPA!
  • 更新日:2022/09/23

「モンスター新入社員」が取り沙汰される一方で、「パワハラ上司」が槍玉にもあげられる昨今。上司と部下の付き合い方は、ますます難しくなりつつある。

「新入社員にきつくあたったら、パワハラで訴えられたという事例が増えている」と話すのは、『あなたの隣のモンスター社員』(文春新書)、『モンスター部下』(日本経済新聞出版社)などの著書がある、フェリタス社会保険労務士法人の石川弘子さん。現代における、新入社員との適切な距離感や付き合い方について話をうかがった。

◆なんでもかんでも「パワハラだ!」「訴える!」と騒ぐ若手社員

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※写真はイメージです。以下同

いわゆる「Z世代」が入社してくる近年、価値観の違いすぎる部下や後輩のミス、マナー違反について、どこまで注意していいのか悩んでいる中堅社員も多いのではないだろうか。

まずは、いくつかの実例を紹介していこう。

石川さんによると、客観的には全くパワハラではないにもかかわらず、若手社員から「パワハラだ!」と社内で騒がれたり、時には弁護士を雇って「訴える!」と言われたりするケースが非常に増えているという。

「とある営業職の社会人2年目の社員のケースです。あまり結果が出ていなかったので上司がアドバイスをしつつ、『どうしても結果が出ずに苦しかったら、環境を変えて、たとえば別の営業所でチャレンジしてみるというのもありだよ』と提案したところ、すぐに退職代行を利用。さらに『無理やり異動させられそうになった』と訴えられたケースがありました。

弁護士から強めの文書が突然送られてきて、その上司はかなり落ち込んでしまったようです。こうした異動の提案は客観的に見てもパワハラには当たりません。しかし若手社員は『パワハラをされた』と騒ぐのです」(石川さん、以下同)

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ほかにも、ミスをした若手社員に「間違っていたから次は気を付けて」と伝えたら「私はいつも頑張っているのになんでですか!」と逆ギレ。同僚を巻き込み、勤務時間内外問わず「この職場はおかしい!」と大騒ぎされたという事例も。

さらに、若手社員が客からちょっとしたクレームを言われて落ち込んでいたので「気にしなくていいよ」と慰めたものの、翌日「抑うつと診断されたので休みます」と診断書を会社に提出。さらに親が「うちの子が客からクレームを言われたのに上司は何のフォローもしなかった、これは労災だ」と会社まで来たケースもあるとか。

◆世代間で捉え方が大きく違う

昭和世代にはにわかには信じがたいが……。これはなぜなのか?

「いちばんは『捉え方の違い』だと思っています。こちらは普通の注意をしているつもりでも、若手社員にとっては『パワハラ的に脅された』と捉えられてしまう。これは、若手社員の世代があまり親から怒られてこなかったからではないかと思っています。むしろ親がモンスターペアレント的に教師に文句を言うことさえある。先生など自分たちの目上の人に対して親がそういうことをしているのを目の当たりにしているので、『それでいいんだ』と思ってしまっているのでしょう。

また、若い人同士でも本音を言わずに耳ざわりの良いことばかりを言い合うことが多く、喧嘩もしない。嫌な相手に対しては自然とフェードアウトしてしまう。それは『空気が読めないと思われたくない』ことが理由のようですが、そんな学生時代を経て、会社に入って初めて注意や指導をされると免疫がなく驚いてしまうのではないでしょうか」

◆モンスター新入社員の特徴は「裏表がある」

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企業から多くの「モンスター新入社員」の相談を受けることがあるという石川さんが感じる彼らの特徴とは、一体どのようなものか。

「まずは裏表があるということです。昨日まで『仕事がんばります!』と言っていたのに、次の日には退職代行を使って突然辞めてしまう。言っていることと考えていることが違うんだろうな、という印象の子が多いです。

さらに人間関係を断ち切ることに躊躇がない。30代よりも上の世代だとどんなに嫌なことがあっても『そうは言っても先輩にはお世話になったし、お礼くらいは言わないとな』なんて考えますが、彼ら(彼女ら)はどんどん断ち切る。情のようなものは全くありません。

また、極端に『残業はありえない』と思っている傾向にあります。どんな会社でも多少、数十分程度の残業が発生することはあると思うのですが、『残業がある会社=ブラック企業』と捉えていることが多い。『昼休みに先輩が話しかけてきたのが不快』と話すなど、業務時間以外の時間は1分も食い込まれたくないと考えているようです」

このように権利の主張が激しく、たとえ先輩が残業していても黙って帰るなどの行動も珍しくないという。

「おそらく、仕事よりもプライベートが何よりも大事だと考えている。そのこと自体はダメなことでは決してありませんが、長いスパンで仕事というものを考えていない感じも見受けられます。根拠もなく『自分は仕事ができる』と妙な自信があるのも特徴です」

◆若手との適切な距離感や付き合い方

その思考を理解するのもひと苦労だが、どのように接し、付き合っていけばいいのか。

「前提として今の若手社員は、注意をすると“人格を否定された”と思ってしまう傾向にあります。仕事のやり方を注意されたのに、彼らの中では『お前はダメだ、無能だ』と言われたと“変換”されている。Twitterなどで『会社からこんなひどいことをされた!』と書かれているものの中には、事実を都合の良いように捻じ曲げ、まるで自分がすべて正しいかのように書かれているものもあります。

具体的にどんなことを言われたのか聞くと、まったくひどいことでもなんでもないことだったりする。それでも心から『パワハラされた』と認識しているのです」

なにも話しかけられなくなってしまいそうだが、それでは仕事にならない。お互いを理解するためには、どのようにコミュニケーションを取るべきなのか。

◆飲みに誘うのは危険

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かつては困ったことがあれば「とりあえず飲みに行くぞ」という流れが定番だった。しかし現在は「飲みに誘うのは危険です」と石川さん。

「今の若い人たちはお酒も飲まないですし、プライベートを侵食されたくないという傾向が強い。とはいえ、共通点があると共感しやすいのはあります。こちらからしつこく質問をすると“詮索されている”と嫌悪感を示されてしまいますので、まずはこちら側から自己開示をして“挨拶+一言”ぐらいのイメージで話しかけてみてはいかがでしょうか。

若い人から年上の上司や先輩などに対しては声をかけづらかったり、何を話せばいいのかわからない、という声もありますから」

短い会話を頻繁に行うことで少しずつ信頼関係を築く作戦だ。たとえば「おはよう、僕は昨日〇〇に行ってきたんだ」といった程度の声かけ。相手も興味があれば「僕もそれ、好きなんですよ」と乗ってくるかもしれない。

◆どうしようもない「モンスター」は事故に遭うようなもの

そんななかで前述のように突然、退職代行を利用して辞められてしまったり、指導をしたら逆ギレされてしまったりするようなことは防げるのだろうか。

「当然、すべての若手社員がそういうことをするわけではありません。『モンスター社員』の暴走は事故に遭うようなもので、どんなに気を付けていても防ぐことは難しいと思います。なので、できるだけ“自分には非がない状態を作っておくこと”しかないでしょう」

若手の育成をするには注意や指導をしなければならない場面が必ず出てくる。その際に大切なのは、「ここからはパワハラ、ここからはパワハラではなく指導の範囲内の注意」という境界線を理解し、自信を持って指導することだと石川さんは話す。

パワハラの境界線を越えていない自信があれば、「パワハラだ」と騒がれても堂々としていられるからだ。

「怒鳴らない、モノを投げない、手を出さない」は当然のこととして、注意などをする際に「人格を否定しない」ということがポイントになるそう。

◆人格否定はせず“事実”にフォーカスする

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たとえば、若手社員が遅刻をした際、「遅刻をすると周囲に迷惑がかかるから次からは気を付けてね」は遅刻そのものを叱っているのでOK。しかし、「遅刻、何回目だよ。馬鹿じゃないの?」は人格否定にあたるのでNGとのこと。

人ではなく、注意しなければならない“事実”にフォーカスして話をすることが大切なのだ。

また、口頭とメールのどちらで注意すればいいのか迷うこともあるかもしれない。

「ケースバイケースではあるものの、基本的に文章はテンションが伝わりづらいこともあり、キツく捉えられてしまう恐れがある。できれば口頭で伝えた方が安全でしょう」

加えて、のちのち何か大きな問題になった場合に備えて「指導記録」として、いつどのような注意をしたのかメモ程度で構わないので記録しておくといいという。

「最近の若者はこっそりと会話を録音していることもあります。こちらに非がなければいくら録音されていても全く問題はありませんが、人間はどうしても感情的になると口調が強くなってしまいがちです。注意をするときは勢いで言うのではなく、あらかじめ話すことを決めたうえで、理路整然と伝えるようにしましょう」

◆自分たちが変わるしかない

しかしながら、なぜ部下や若手社員に対してこちらがそこまでへりくだらなければいけないのか……納得がいかない部分もあるかもしれない。だが、まずは「若手社員が毎日会社に来てくれるだけでも感謝すること」が大事だと石川さんは言う。

「今の若い人たちの習性をこちらが変えることはできないので、私たちが変わっていく必要があると思います。『若い人が目上の人たちに合わせるべきだ』と主張していても結局困るのは私たち。会社は若い人が気持ちよく活躍してくれないと、今後存続できませんから」

【石川弘子(いしかわひろこ)】

青山学院大学経済学部経済学科卒業。企業で総務業務に従事する間、社会保険労務士資格を取得。その後、平成16年10月に石川社労士事務所を開業。平成28年4月にフェリタス社会保険労務士法人に組織変更し、代表社員に就任、現在に至る。特定社会保険労務士、産業カウンセラー、ハラスメント防止コンサルタント。労働・社会保険手続き代行、就業規則作成等の他に、中小企業から上場企業まで、様々な企業の労務相談を受けている。また、障害年金請求手続きや、産業カウンセラーとして、企業のメンタルヘルス対策などにも携わる。著書に『あなたの隣のモンスター社員』(文春新書)、『モンスター部下』(日本経済新聞出版社)がある。

<取材・文/松本果歩>

【松本果歩】

恋愛・就職・食レポ記事を数多く執筆し、社長インタビューから芸能取材までジャンル問わず興味の赴くままに執筆するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり、店長を務めた経験あり。Twitter:@KA_HO_MA

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