157キロはただの通過点!?︎ ドラフト1位候補に急浮上した明桜・風間球打の脅威の能力

157キロはただの通過点!?︎ ドラフト1位候補に急浮上した明桜・風間球打の脅威の能力

  • Sportiva
  • 更新日:2021/07/20

こまちスタジアム(秋田)のスピードガンに「157」の数字が表示された瞬間、どう受け取るべきか悩ましかった。

7月18日、ノースアジア大明桜の剛腕・風間球打(きゅうた)が秋田高戦の4回に投じたストレートが、157キロと計測されたのだ。

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秋田高戦で自己最速の157キロをマークしたノースアジア大明桜の風間球打

自己最速を4キロも上回り、しかもこの日一度だけ計測された数値だった。ベンチで見守ったノースアジア大明桜の輿石重弘監督は苦笑交じりに「間違いじゃないですか?」と疑問を呈した。

その一方、投げた本人はこんな実感を語っている。

「正直言ってそんなに出ているのかわかりませんが、感覚はよかったです。いつの間にか(ボールが)キャッチャーのミットに着いているような、今までにない感じでした」

さらに対戦した秋田高の4番打者・佐藤大誠(たいせい)も、試合後にこう証言している。

「あの球を投げられると手も足も出ないと思いました。打席に立って風間くんの気迫を感じて、あの球だけはほかの球とは威力が違うなと感じました」

球速はあくまで数字であり、目安でしかない。この日、苦戦の末にチームを勝利に導いた事実こそ、もっとも重要なことだった。とはいえ、風間が見せたパフォーマンスは結果以上の強い衝撃があった。

試合前、秋田高の最速146キロ右腕・石井夢沙士(むさし)は、三塁側ファウルエリアに設えられた屋外ブルペンで快調に投球練習をしていた。だが、一塁側ブルペンに風間の姿はなかった。

こまちスタジアムはダッグアウト裏にも室内ブルペンがある。「バシン!」という捕球音だけが大きく反響するひと気の少ない空間に、風間はいた。腕を「振る」というより、「叩く」という表現が適切だと思うほどに、豪快な投球フォームだった。

しなやかに体を使うタイプではない。高いリリースポイントから上体ごと叩きつけるような、爆発力のある投げ方だ。照明の薄暗さも手伝い、白球をはっきりと肉眼でとらえきれない。1球で「モノが違う」とわかる、迫力満点の剛速球だった。

もし、風間が屋外のブルペンで投球練習をしていたら、この日球場に集まった大勢のファンが群がり、ちょっとした騒ぎになったかもしれない。また、対戦チームである秋田高への強烈な挨拶にもなっただろう。

だが、のちに室内ブルペンを使った理由を風間に尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「暑かったので、(試合を)投げ切るために体力を削りたくなかったんです」

この日、秋田市の最高気温は33度に達した。準々決勝だけでなく、秋田大会や甲子園を見据えて戦うためのクレバーさを風間の言動から垣間見た気がした。

といっても、試合前のブルペンでは迫力のある剛球を投げ込んだ反面、変化球の抜け球も目立った。本人も「指のかかりが悪いな」と感じていたそうだが、いざ「プレーボール」の声がかかるとエンジン全開。1回には153キロをマークし、スライダー、フォークなどの変化球も制球できていた。風間は「バッターが入ると気合が違うので、勢いが変わってくるのかなと思います」とこともなげに語った。

前述のとおり、風間は高い位置から叩きつけるように投げ下ろす。必然的に縦回転の変化球を得意としており、捕手の中井稜貴は「変化球のサインを出した時はいつも緊張します」と明かす。さらに、捕球が難しいのは低めのストレートだと中井は言う。

「角度があるので、なかなかうまく捕れません。そこは自分の課題だと思っています」

対する秋田高も伝統校らしく、風間対策を練っていた。2メートルの位置にリリースポイントがくるように計算し、台に乗った打撃投手のボールを打ち込んだ。秋田高の伊東裕監督は言う。

「打線として機能するように、下位打線はたとえ打てなくても球数を増やすなど風間くんにプレッシャーをかけられるよう準備してきました。終盤に1点勝負になると想定していたので、選手には『守備で我慢しなさい』と伝えました」

秋田高は粘り強い攻撃で風間を苦しめた。3対1の6回裏には、一死一、三塁の場面でスタートを切った一塁走者が挟まれる間に三塁走者が生還。伊東監督はすべて「サインプレー」による狙いどおりの攻撃だったと語った。8回裏には佐藤が風間のスライダーをとらえ、同点タイムリーを放っている。

それでも、勝負どころでの風間の集中力と球威は凄まじかった。7回裏に二死二、三塁の場面で、風間の151キロの速球の前に三振に倒れた石井は言う。

「ギアを上げてきて、これまでの打席とは球が違うなと感じました」

延長戦までもつれた熱戦は、10回表に土居健太のタイムリーヒットで勝ち越したノースアジア大明桜が制した。試合後、風間は自身の投球内容よりも「勝てたことがうれしい」とチームの勝利を喜んだ。

21日には、ノーシードから勝ち上がってきた横手と準決勝を戦う。その試合に勝てば、中1日で決勝戦を戦うことになる。

仮にこまちスタジアムでの「157キロ」を度外視したとしても、風間が小園健太(市和歌山)、達孝太(天理)、森木大智(高知)と並び立つドラフト1位候補に浮上したのは間違いない。

そして、「157キロ」もただの通過点にすぎないように思えてならない。おそらく、馬力にかけては2021年の高校生ナンバーワン。風間球打が猛烈な勢いで腕を叩くたびに、野球ファンの期待は無限大にふくらんでいく。

菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

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