■連載/カーツさとうの週刊★秘境酒場開拓団

(写真はイメージです。本文とは関係ありません)
オヤジナリティー ★★
家計貢献度 ★
エルドラ度 ★
コロナ対策度 ★★
土曜日の昼下がり。家の近所の武蔵小杉駅と新丸子駅の間にある呑み屋街を歩いていた時のこと。
前から気になってた居酒屋『U(仮名)』の入口に『昼飲み大歓迎』という張り紙。
このご時世(この一年で何度この単語を使ったことか!)、昼呑みに活路を見いだしたい気持ちは痛いほどよくわかる!
そもそも昼だろうが夜だろうが、アクリル板、co2検知器、充分な席の間隔、換気などでしっかりコロナ対策した店ならば、一人で入店して、オーダー程度の会話しかせず、小一時間呑んで店を出るんだったら、なんも問題ないとオレは思ってる。
問題なのは、昼だろうが夜だろうが多人数での会食だもん。
で!! ここからすごい大変なこと書くからちゃんと読んでいただきたい。
飲食店の検索サイトっていうか予約サイトってあるじゃん。大手は4ツくらいあるんだけど、
「もしや?」
と思って調べたら、そういうサイトからネット予約すると、平気で多人数でも予約できるようになってんのね、4ツのサイトとも全部。
もちろん元々ネット予約できない店もあるからそういう店は別だし、予約できる最高人数は店の規模とかレイアウトで店ごとに変わってくるんだけど、デカイ店なんて平気で何十人も予約できるワケ。
“5人以上の会食はお控えください”って政府がいってるのに……まぁ政府もあてになんないけどさぁ……それでも、正直なところ、
「エ~マジかよ?」
って思ったよ。なんとなく、できないようになってんじゃないか? って思い込んでた。
でも、やり放題でやんの!
個人営業の店が電話で6人くらいの予約受けちゃうのは気持ちもわかるよ。でもさ、大手の企業がやってんでしょ、こういうサイトって。
オレ如きがエラソーなこと言えた義理じゃないけど、何考えてんだろ? って思ったよ。
まぁなんも考えてねェんだろうな。
サイト上で予約人数を制限するようにしないまでも、5人以上で予約しようとすると、注意喚起の一文が出てくるとかさ。ほら、マスク会食とかあるワケでしょ? せめてそのくらいやった方が企業としての信用も上がると思うけどなァ。
ってことでこの話終わりで、さっきの店の話に戻る。
ホッピーにプレミアム不要論!
この店が前から気になってたっつうのは、どうやらこの店は魚の刺身と肉のモツを両輪のように売りにしている店らしく、それって珍しいじゃない? “二兎を追う者は一兎をも得ず”の諺でいえば、不安な部分もあるんだけど、“塵も積もれば山となる”というけど、塵が積もってできた山なんて見たこともないという“諺、あてにならない理論”もあるんで、そりゃあ気になってた。
入店すると、テーブルごとにアクリル板で仕切られた店内は、“昼飲み大歓迎”の張り紙が効いたんでしょうなぁ、密にはならない程度の5分の入り。
カウンター席はなく、二人がけのテーブルに案内される。まずは“高そうなイメージ”も持ってただけに、すぐさま酒の値段をチェックする。
すいません、。少々お高うございました。ホッピーがナカ・ソトともに330円。つ~ことはセットだと660円ですよ。“キンミヤプレミアムホッピー”なんて書いてあるけど、ホッピーにプレミアム感なんてものはちっとも求めてない!
一時期は“やっぱりホッピーはキンミヤが…”なんてウンチク垂れてた時期もありましたが、ホッピーの焼酎に対して、もはやこだわりなんてない! こだわるのは安さだけだ!!
でも入店しちゃったからには腹決めて、その店の価格を良しとし、できる限り楽しむのが酒呑みの生きざま! プレミアムなホッピーのセットを頼んで、料理メニューに目を移す。
“朝〆モツ串”っていううれしいジャンルがあったので、そこからテッポウとコブクロを一本ずつ注文ただしこちらも一串220円という、そこそこの価格設定。でもその部位ごとに塩かタレかが決まってて、テッポウはタレ、コブクロは塩なんすが、むしろ好きに選べるよりも、こういうシステムの方が店として味にこだわり持ってる傾向があるので全然OK!
ちなみにモツと並ぶもう両輪のもうひとつの魚の刺身は、千円オーバーの盛り合わせしかないんで、ちょっと一人呑みで頼むのには適さない感じ。ん~、このご時世(また使うけどね、この便利フレーズ)、一人用の刺身も用意してほしいなァ~、淳子のお願い。
で、モツに話は戻るけど、いや、これがやっぱり旨かった! となると、もう一つ、メニューの中で気になるヤツを頼みたくしてしょうがなくなった。
モツの刺身であるッ!!
6点盛り1408円ってのは、ちょっともうオレには貴族の料理価格なんだけど、清水の舞台から飛び下りる気持ちになれば、4点盛り1078円ならば頼んでもバチは当たらないないだろう。
いや、正確に書くと、この時の精神状態はもう少し複雑だ。
突如訪れる精神メロメロ状態!
この店に行ったのは、まだ3月だったんで、メニューの価格表記も税抜きだったんすよ。だから4点盛りの価格表示は980円。その980円って数字を見たんで“千円以内ならば一人呑み最大の贅沢として許す”的な精神状態で頼んでしまった。
これがもし税込み価格の1078円って書いてあったら、今思えば絶対に頼まなかったなぁ~。
考えてみりゃ、たかだか百円程度の違いなんだけど、その百円がこういう時ものすごくデカク感じられるんだよなァ~。百円の出費がものすごくもったいなく感じられるんだよなァ、根っからの貧乏性体質の人間には。
しかし、貧乏性体質は一回頼んでしまったら、それこそそれをできうる限り堪能しないと、それこそ最大のもったいないカタストロフィなので、そりゃ堪能させていただきますよ~ってな気分で、モツ刺しを待つ。
「今日はすごいの頼んじゃったぞ~!」
と自らを鼓舞し、期待値マックスで待つ。そして届いたモツ刺しをみてオレは驚愕した!!
四角い皿の左半分に、低温処理を施したと思われるモツ刺しが三種。それぞれには小さな短冊が添えられ、そこにはタン、レバ、ハツと部位名が書いてある。
問題は右半分だった。ニンニクと生姜の薬味。そして付けダレ……ニラ醤油という、聞くだけで期待させるヤツ……の入った小鉢。そしてそれより大振りの小鉢がドンと置かれ、中にはポン酢に浸されたモツの切り身が盛られていた。さらにその鉢にも部位名を書かれた短冊が刺さって添えられていたのだが、その短冊がなんと3枚。
そこにはミミ、コブクロ、ガツとあった。
ということはこの皿全体のモツの種類というのは、タン、レバ、ハツ、ミミ、コブクロ、ガツ…。
あの~みなさんにも数えていただきたいんですけど、タン、レバ、ハツ、ミミ、コブクロ、ガツって、どっからどう数えてもモツの種類が6種類ありますよね……ってことはもしや4種盛りを頼んだはずなのに、これってお値段お高い6点盛りじゃないのオオオオオオ!!
となると、オレのツマミ価格の常識を打ち破る1408円じゃんか! オマエ、オレは大富豪の跡取りじゃないんだぞ!
いやいや待て待て待て。ポン酢部分にモツ種は3点入ってるといっても、一つの小鉢に入ってるんで、これで1点と数えるのではないか? となるとやっばり4点盛りか? いややっぱり6種は6種あるんで6点盛りか?
一体どっち? 聞くのもヤボだし、いざ会計時に6点盛りの価格を請求されたとしても、
「うんにゃ、オイドンが頼んだのは4点ですたい!!」
と薩摩男児のように堂々と言い張るような度胸はこのオレにはなんもないですたいッ!!
それどころか、なんもいわずニコニコとうすら笑いを卑屈に浮かべ、心の中では涙をボロボロ流しつ金を払うオレの姿が手にとるように見える。
もうそこから先は、4点なのか6点なのか、頭の中がグワングワンしちゃって、精神状態メロメロだ! もう呑んで酔って忘れるしかオレに残された道はないと、ホッピーを5杯呑んでから、ついでに638円という、これまたオレにしてみれば高額な芋焼酎も頼んでしまうという、もうミイラ取りがミイラになってる状況で呑んでしまいました。
いや、そのくらい実際に旨かったんてす、モツ刺し。結局、精算の時に伝票見たらちゃんと4点盛りでした。いや、結果オーライでウマイ酒と料理をイイ気分堪能いたしました!
次行く呑み屋は絶対に安いとこにして、支出バランスとらないとなァ、カバトット。

文/カーツさとう
コラムニスト。グルメ、旅、エアライン、サブカル、サウナ、ネコ、釣りなど幅広いジャンルに精通しており、新聞、雑誌、ラジオなどで活躍中。独特の文体でファンも多い。