市内全校の野球部を「合同チーム」に再編 “松本モデル”「持続可能な部活を」 模索続く地域移行

市内全校の野球部を「合同チーム」に再編 “松本モデル”「持続可能な部活を」 模索続く地域移行

  • NBS長野放送
  • 更新日:2023/11/21
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3校の「合同チーム」(中信地区中学校新人大会・軟式野球 10月21日)

特集は変わる中学校の部活動です。国は2023年度から3年を学校主体の部活動を地域クラブなどに移す「地域移行」の推進期間にしています。長野県松本市では2023年度から複数のモデル事業を実施。その一つが全ての学校の軟式野球部を「合同チーム」に再編するという思い切った取り組みです。目指すは「持続可能な部活」です。

■「合同チーム」新人戦がデビュー戦

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信明中の選手(中信地区中学校新人大会・軟式野球 10月21日)

10月21日―。

中信地区の12チームが参加した、中学校の軟式野球・新人戦。

私立・松本国際中学の対戦相手は、ユニフォームがバラバラです。

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3校の「合同チーム」

松本市の鉢盛中、菅野中、そして信明中。

この夏、結成された3校の「合同チーム」です。「部活動の地域移行」に向けたモデル事業が動き出しています。

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松本市の軟式野球部の合同チーム

松本市では2023年度、3年生の引退後から、14校の野球部を5つの「合同チーム」に再編。

同じエリアの2校から3校が合流していて、さらに野球部がなかった8校も参加できるようにしました。

少子化で人数が少ない学校同士がチームを組むことは珍しくありません。

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松本市スポーツ事業推進課・三井正勝 課長補佐

松本市スポーツ事業推進課・三井正勝 課長補佐:

「一つの学校で、人数満たしていて、単独でチームを組むことができる学校もあるんですけど、長い目で見たときにやはり少子化の影響で子どもが少なくなっている。今から、継続して野球が取り組める環境をつくっていこうと」

■部員、保護者の声は

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新人戦が「合同チーム」のデビュー戦(10月21日)

この新人戦が「合同チーム」のデビュー戦となりました。

「合同チーム」は0対4で敗北―。

部員たちはー。

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菅野中の生徒はー

菅野中の部員:

「負けちゃったんですけどチーム一丸となって戦えたのでよかったです。結構、仲良くできてました」

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鉢盛中の生徒はー

鉢盛中の部員:

「これから練習試合とかあるので、チームワークをしっかりやっていきたいです」

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信明中の生徒はー

信明中の部員:

「僕よりも全然うまい人がいるので見本になって、まねしてうまくなれるのでうれしいです」

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観戦する保護者

保護者はー

鉢盛中の保護者:

「違う学校同士がキャッチボールすることも増えてきて、交流もだいぶ取れてきているんじゃないかと」

菅野中の保護者:

「いろんな練習できたりというのが人数多いとできますし、メリットの方が多い気がしますけどね」

■持続可能な部活に

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信明中の平日練習(10月23日)

10月23日―。

3校のひとつ、信明中学校。

平日は各校で練習です。

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信明中の平日練習(10月23日)

信明中の1年生:

「WBCで日本が優勝してからやってみたくなって」

「WBCを見て、かっこいいなと思って」

WBCで日本代表が活躍した影響で、今年度は男女10人が入部。

しかし、ほとんどが初心者で、2年生はゼロです。

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信明中 軟式野球部顧問・大塚佑生教諭

信明中 軟式野球部顧問・大塚佑生教諭:

「俺は1年後を想像しながらやってるから。1年後頑張ろうな」

顧問は野球経験者の大塚佑生教諭(40)。

信明中 軟式野球部顧問・大塚佑生教諭:

「しっかりぐーっと曲がってから投げる。そうそうそう」

女子部員:

「おー」

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信明中の平日練習(10月23日)

信明中の野球部は2022年度まで9人以下が続き、試合では合同チームを組んでいました。

その年の人数によって組む相手校は変わり、最大5校で組んだこともありました。

同じ「合同チーム」に固定することは「持続可能な部活」に必要な策だと大塚教諭は感じています。

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信明中の平日練習(10月23日)

信明中 軟式野球部顧問・大塚佑生教諭:

「野球をやりたい子をちゃんと野球をやらせてあげたい。これから始めたい子にも気軽に始められる環境を整えたい。初年度なので、戸惑いはあるんですけど、野球をしたい子たちがこの地域だとここでできるとわかってもらうには、この活動が軌道に乗ることがいいことなのかなって思います」

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信明中の平日練習(10月23日)

皆1年生ということで見本になる「先輩」はいませんが―。

信明中の1年生:

「合同のときは先輩のプレーを見て学ぶっていう感じですね」

「週末はみんな他校の人たちと触れ合えて一緒に野球ができるので、そういう環境でできることをチームみんなでうれしく思ってて」

■これまで単独チームだった中学校も

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休日は3校合同練習(11月3日・菅野中)

11月3日、菅野中―。

3校が合同で行う休日の練習。

普段は別々ですが、部員たちはすでに打ち解けています。

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休日は3校合同練習(11月3日・菅野中)

人数が増え、試合形式の練習もできるようになりました。

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休日は3校合同練習(11月3日・菅野中)

これまで単独チームだった鉢盛中と菅野中。

試合に出る機会が減ってしまうことにもなりますが、前向きに捉える部員もいます。

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部員は―

鉢盛中の2年生:

「(試合に)出ている人も、ミスしたら代えられるとかプレッシャーの中できてるので、より緊張感のあるプレーができると思います」

菅野中の2年生:

「(合同チームは)楽しいんですけど、しっかりやりたいという意識が高まりました。もっとちゃんとやらないと試合出られないなと」

■教員の働き改革にもつながる

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教員の働き方改革にもつながる

「合同チーム」は「地域移行」の目的の一つ、教員の働き方改革にもつながっています。

この日は3校のうち、2校の顧問が指導。3人の顧問が出る必要はありません。

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外部コーチの岩垂さん

もともと菅野中の外部コーチだった岩垂佑哉さん(25)が加わっており、指導陣は十分です。

■指導者の確保、報酬の設定など課題も

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今後は休日の部活動を地域クラブ化する狙い

「合同チーム」はいわば第1段階。

次の段階として市は2026年度までに休日の部活動を「地域クラブ」に移行し、外部の指導者に託す計画です。

ただ、それには指導者の確保、報酬の設定、運営ノウハウの確立といった課題をクリアしなければなりません。

5つの「合同チーム」の中には、現時点で外部の指導者がいないチームもあります。

松本市スポーツ事業推進課・三井正勝課長補佐:

「目標としてはクラブチーム化を目指すが、大きな課題は指導者が足りない、少ない。学校と市と地域の方で、指導者を探していくことが必要になっていきますし、適正な指導ができるよう、指導者の研修、教育も必要になってくるのかなと」

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外部コーチ・岩垂佑哉さん(左)

外部コーチの岩垂さんはー。

外部コーチ・岩垂佑哉さん:

「学校側には協力してもらえるとこちらも楽かなと。今後、長く地域移行でやっていくなら、地域に全部お任せでやっちゃうと指導者も大変だと思うので、学校の教員と指導者とでうまくやっていければ」

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3校合同の休日練習(11月3日 菅野中)

持続可能な部活動。

その仕組みを作るには自治体、学校、地域の協力や理解が不可欠のようです。

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部活動の地域移行 松本市のモデル事業

松本市では他に、新たな受け皿となる民間事業者のバドミントンクラブができた他、合唱やバスケットボールなど一部の休日の活動は指導者を確保した上で既に地域クラブ化もしています。

地域や活動によって事情が異なるため、進み具合には差があり模索が続いています。

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