障害のある人にも使いやすく。家具アダプターのデータを公開したイケアの取り組み

障害のある人にも使いやすく。家具アダプターのデータを公開したイケアの取り組み

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2020/11/20
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2019年のカンヌライオンズ贈賞式で、拍手喝采を浴びた広告コミュニケーションがある。ヘルス&ウエルネス部門でグランプリ他を受賞した、イケアのキャンペーン「ThisAbles」だ。

コピーライターとしてプロジェクトに関わった、自身も脳性麻痺をもつエルダー・ユスポフ氏が登壇すると、観客席の全員がスタンディングオベーションで賞賛した。

このキャンペーンを行なったのは、イケア・イスラエル。そこから世界に広がり、関連商品の売上は33%アップを記録したという。

障害者のためのアダプターを開発

イケアのミッションは、「より良い毎日を、多くの人に」というものだ。購買しやすい価格で、使いやすく、優れたデザインの商品を提供しようとしている。

しかし、障害のある人たちにとって、多くの家具は決して使いやすいものではない。例えば、ソファから立ち上がるのにもひと苦労だし、ベッドサイド・ランプのボタンを押すのも大変で、ドアを開けるのも簡単ではない。

障害者用の家具を買うことはできる。だが、その価格は普通の家具の2倍以上もし、デザインの選択肢も非常に少ない。そこで、イケア・イスラエルが考えたのが、13の既存商品に付けることで障害のある人が使いやすくなるような「アダプター(Ad-on)」の開発だった。

例えば、ソファの脚にはめることで座高を高くし、障害のある人でも立ち上がりやすくするアダプター。ベッドサイド・ランプのボタン部分に装着することで格段に押しやすくするアダプター。あるいは、引き手が小さく開けにくいドアに付ければ、肘を使って開けることができるようになるアダプターなどだ。

「ThisAbles IKEA - Cannes Lions 2019 Winners」

この取り組みには、次の3つのポイントがある。

1. アダプター自体は売り出さず、ウェブサイトを通じてデータを配布し、誰もが3Dプリンターで製作できるようにした(結果、127か国4万5000人がデータをダウンロードした)。

2. アダプターの開発に際し、非営利団体と協力、障害がある人にも参加してもらい、前出のエルダー氏をスポークスパーソン(広報担当)として起用した。

3. データをフリーで公開することは、一見イケアに「得」がないように見える。しかし、アダプターはイケアの既存商品用のものであり、結果としてイケアの商品の購入につながる。

「ソーシャル・グッド」と言われる社会にとって良いことを実現し、ブランドの評判を高めながら、しっかりとビジネスの「果実」も手にしているわけだ。

この1. のオープンソース的なふるまい、そして2. に見られる「共創型」のプランニングは、まさにイマドキの手法だと言える。

時代はオープンソースと共創型に

さて、この事例から、われわれが学び得るものは何だろうか?

それは、まずは、自分あるいは自分たちが開発したものを囲い込まず、むしろ開放し、オープンソース的にふるまうことで、自らにも実りの果実をもたらすことだ。

昔は自分の開発物は自分のもの、自分たちの課のメソッドはその課のもので、なるべく秘密にし、門外不出とするのが普通だった。しかし、デジタルやソーシャルメディアが発達して以来、考え方は一変した。むしろ、開放し、オープンにすることで、評判を上げ、できれば実質的な「利益」にも繋げることを模索したほうが良いのだ。

自分たちの課でプランニングメソッドをまとめたら、積極的に社内でオープンにして、「良ければ使ってください」と言ってみる。評判が良ければ、本家本元であるあなたの課に、ビッグ・プロジェクトの依頼が舞い込むかもしれない。

実際、某広告代理店の若手プランナーが、自ら整理した「バズの起こし方メソッド」をネット上に公開したら、それが評判を呼び、実際の仕事でも成果を挙げることとなり、ついには独立して活躍している事例も知っている。

次に学び得るのは、解決策を策定するときに、共創型を模索することだ。中学校や高校に通う子供にもう少し勉強をしてもらいたいと思ったときに、親が勝手に勉強の枠をつくって、押し込めようとしないほうがいい。

子供の意見をよく聞いて、むしろ本人にアイディアを一緒に出してもらって、なんとか勉強に気持ちが入る方法を探すのだ。学校で勉強してから帰って来るのがいいのか、塾の自習室に行く習慣がいいのか、勉強部屋をつくるのがいいのか、思い切って家庭教師を試してみるのか……。

勉強するのは、親ではない、子供だ。本人と「一緒に」考える機会をつくることが、いちばん成果につながりやすい。

イケアのキャンペーンから学ぶ、オープンソースと共創型。時代のキーワードとも考えて良いだろう。

連載:先進事例に学ぶ広告コミュニケーションのいま

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