【インタビュー】上野優華、切ない“恋愛あるある”が心に迫る『ヒロインにはなれなくて』

【インタビュー】上野優華、切ない“恋愛あるある”が心に迫る『ヒロインにはなれなくて』

  • BARKS
  • 更新日:2021/06/10
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自身で作詞作曲を手掛けた「好きでごめん」、川崎鷹也提供曲「愛しい人、赤い糸」とデジタルシングルを精力的にリリースしてきた上野優華が、その2曲に新曲5曲を加えたミニアルバム『ヒロインにはなれなくて』を完成させた。叶わなかった恋のなかに生まれる切なさ、恋が実るか否かの瀬戸際のきらめき、相手の出方を伺いながらのアプローチ、近くにいるのに遠くに感じてしまう悲しみ──様々な恋のシーンを切り取った楽曲たちは、聴き手の心の傷に寄り添いながら、新たな世界へと導いてくれる。

“わたしが歌詞を書くと、幸せな要素が出てこない”と語る彼女は、どんな気持ちで今回の制作と向き合ったのだろうか。それを紐解いていくと、表現者としての彼女の姿と、ひとりの人間としての姿が浮かび上がってきた。

◆   ◆   ◆

■いろんな恋愛と女の子を描きたかった

──『ヒロインにはなれなくて』、言葉を選ばずに言いますと、最後まで聴き終えたあとにどっぷり情緒不安定になりまして(笑)。

上野優華:あははは! 素晴らしい~!(笑)。

──この7曲で、10年分くらいの恋愛を一気に体感したような感覚があったんですよね。上野さんが恋する人の気持ちに寄り添った結果なのではないかと思います。

上野:ありがとうございます。今回4曲作詞、2曲作曲をしているんですけど、ラブソングという大きなテーマのなかで、いろんな恋愛を描きたかったんです。差別化するためにもほかの曲と同じ言葉や言い回しを使わないようにして、自分からナチュラルに生まれてくる言葉をどうやって選択して、どう振り分けていったらいいのか……というのは今までにない悩みでした。

──様々な恋愛を、様々な主人公で描きたかった、ということでしょうか。

上野:聴いてくれた人が1曲でも“これは自分の曲だ!”と思ってもらえるように、レパートリーを増やしたかったんです。わたしの楽曲は切ないものが多いけれど、そのなかでも状況に変化をつけたり、ちょっと気の強い女の子を主人公にしたり、感情の言語化が苦手な女の子を主人公にしたり……いろんな女の子を描きたかったんです。

──「好きが残った」は、鶴﨑輝一さんのメロディから受けたインスピレーションで歌詞を書き上げたそうですが。

上野:サビの終わりのメロディを聴いて、何かから取り残されたような、自分のなかにぽつんと残ってしまった気持ちになって。そこから“好きが残った”という言葉が浮かんできて。それをきっかけに歌詞を書いていったので、鶴﨑さんのメロディのおかげで書けた曲です。歌い出しに《ただの友達でもそれでいいんだって》と書いたんですけど、“ただの友達”は恋愛においてかなりキーワードだと思うんですよ。想いを寄せている相手から、“ただの友達”なんて言われたら、めちゃくちゃ嫌じゃないですか。

──そうですね。“友達”と言われたらそこまで深く考えないけど、“ただの”がつくだけで恋愛対象外であることを突き付けられるというか。

上野:友達という関係のなかで恋愛感情を持ってしまうのはとてもつらいことだな……と書きながらすごく感じていました。好き同士のふたりの失恋だと、過去の幸せにすがりつきたくて未練が生まれるんだと思うんですけど、友達に片想いをしたまま失恋してしまった場合は、未練にすら達せないような気がして。すがりつく幸せが何もないから“好き”という気持ちだけが心のなかに残って、どこにも行けなくなってしまうんだと思うんです。

──縋る思い出すらない。だから“好き”だけが残った……。その事実は痛烈なほど切ないですが、その失恋の悲しみを“好きが残った”と表現されることで、救われる人は多いと思うんですよね。実らない恋心を肯定するマインドは、川崎鷹也さんの提供曲「愛しい人、赤い糸」にも通ずる気がします。

上野:ああ、そうですね。「愛しい人、赤い糸」も「好きが残った」も片想いの恋心の尊さを感じてもらえる曲だと思うけど……川崎さんが書いた「愛しい人、赤い糸」は断然幸せな曲ですよね(笑)。わたしが歌詞を書くと、幸せな要素が出てこないんですよ。

──(笑)。幸せな要素が出てこないのは、上野さんの人間性が影響していると。

上野:同世代の方々に共感してもらっているからこそ、あんまり作り物の言葉たちで歌詞を書きたくないというか。今のところは自分から溢れてこない言葉をわざわざ歌詞にする必要はないと思っているし、上野優華の言葉として受け取ってもらうものには、嘘はひとつも入れたくなくて。だからつらい曲ばっかり出てくるんだと思います(笑)。提供していただいた曲では、歌手としてしっかりその主人公や楽曲の物語を表現したいなと思ってますね。

──今作はそれがわかりやすいですよね。様々な作家さんが参加している「今日も君でした」や、ex. Shiggy Jr.の原田茂幸さんが提供した「君の街まで」は、歌の色味がまったく違いますし。

上野:あはは! 「君の街まで」は可愛らしさや恋愛に発展する前のわくわくを歌にしたいなと思ったので、声色もテンション感もほかの曲とはだいぶ変えていて。面白い1曲になりました。きらきら感が溢れ出てる!(笑)。こういう状況になったことがないので、わたしの“こういう女の子が自分のなかにいたらいいな!”という憧れを存分に出しましたね。

──そのコントラストがなおさら、上野さん作詞曲だと言葉も歌も上野さんの等身大を強く印象づけるんですよね。

上野:ふだん発する言葉はプラスでいようと思っているんですけど、その根っこにはどんなこともマイナスで考えて、最悪の事態を想定するクセがあって。恋愛について歌詞を書くと、その根っこの部分が出てくるし、それがナチュラルなんです。わたしと同世代の二十歳前後の女の子って、好きな人に振り向いてもらうための努力をしていることが多いと思っていて。「好きでごめん」のように、自分の大切な何かを捨ててでも好きになってほしい──それは今この年齢だからこそだとも思うんです。

──なるほど。自分というものが確立しきっていない、自分に自信を持つまでに至っていない時期だからこその恋愛、ということですね。

上野:もっと大人になって経験を重ねていくことで、今気付かないことに気付いていくんだろうけど、若い子たちには偽りの自分でもいいから好きになってもらいたくて、自分のことを卑下してしまったり、悲観的になってしまう子は多いと思うんです。だからわたしのマイナスの要素が強い曲も受け入れてもらえるんじゃないかなと思っているんですよね。

◆インタビュー(2)へ

■“これは女子あるあるだと思います!”と押し切って(笑)

──「好きが残った」のMVのYouTubeコメントを見ていると、同じような経験をしている人が悲しみに浸っているパターンもいれば、この曲を聴いて前に進もうとしている人もいて、そのどれもが素直であたたかいなと感じたんですよね。それは上野さんが作り物の言葉を並べていないからこそ起こる現象だと思うんです。

上野:わあ、うれしい! 自分の書いた歌詞を歌うことと、作家さんが書いてくださった歌詞を歌うことには、優劣はないけれどまったく感覚が違うんです。やっぱり自分が書いた歌詞を歌うのは、あまりにも自分すぎて恥ずかしい。シンガーソングライターさんならそれが当たり前なのかもしれないけど、歌手として活動しているわたしにとっては、そういう緊張感や自分に入り込んで歌うことは、やっぱり特別なんですよね。

──そういう熱が入った歌は、共感の範疇を超えて響くとも思うんです。“恋はしているけれど失恋をしたことがないから、こういう引きずる恋をしてみたい”という10代の方のコメントは、その最たる例ではないでしょうか。

上野:わたしもそのコメント読みました。多くの人が苦しむ恋愛あるあるに憧れてくれたり、“こういう状況になったら自分はどんな感情になるんだろう?”と興味を持ってもらえたということですよね。その子の恋愛の豊かさにちょっとお力添えができたのなら、本当にうれしいです。早く失恋を味わってほしいですね……!(笑)

──その言葉だけ切り取ると語弊がありますが(笑)。失恋は人を成長させてくれますからね。

上野:そうそう! そうです!(笑)。

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▲『ヒロインにはなれなくて』初回限定盤

──上野さんが作詞だけでなく作曲にも参加している「ヒロイン」は、複雑で面倒な乙女心をとてもドラマチックに描いていて、じつはこれ全年齢対象ソングなのではないかと。

上野:あ! やっぱりそうですよね!! 制作している時にチームのみんなから“ちょっと押しが強すぎるんじゃない?”という話が出たりもしたんですよ。それを“いや、これは女子あるあるだと思います!”と押し切って(笑)。

──《カッコつけたりとかいらないの一言くれたらいいの》や《君から言って》などなど、声に出してないけど多くの女の子が恋する相手に思うことだと思いました。積極的に見せて《全部君次第》と他力本願なところも(笑)。

上野:そう! 《帰りたくないの》と思っているけど肝心なことは言ってほしいという、駆け引きしているようで出来てないところが重要なんです!(笑)。こういう女子あるあるの感情は80~90年代のバブリーな時期のキラキラ感と親和性が高い気がして、上野優華には珍しくホーンやピアノ、弦楽器を入れたゴージャスなバンドサウンドになりました。押せ押せではないけど引いてもいない絶妙な温度感を出したかったんですよね。いわゆる草食系と言われる男の子との恋愛を、なるべく可愛く描きたかったんです。

──そして先ほどの“幸せな歌詞が出てこない”という言葉にもつながってくるのが、ラストを飾る「幸せ」。「幸せ」というタイトルの曲でここまでつらい曲はないんじゃないかと思うほど痛烈で……。

上野:(笑)。“ほかの人から見れば幸せではなかったとしても、これが今の自分の幸せと信じたい”と思う女の子を主人公にしたんですけど、自分の恋愛観やネクラな部分がいちばん赤裸々に詰まった曲だと思います。だから恥ずかしいし、書いていてつらかった。歌い出しの《さよならの後 振り返らない癖をつけた/さっきまでの笑顔が消えてるような気がしてて》という歌詞は、まんまわたしのことなんです。昔から家族にも友達にも、さよならのあとに振り返ることができなくて。

──たしかに一気にオフになった顔を見ることになるかもしれないのは、少し怖いですよね。振り返らないのは自己防衛のためである、と。

上野:そうやって生活の端々で、現実逃避しちゃうんです。それ以外にも“叶った恋が幸せかどうかはわからない”や“付き合っているのにこんなに悲しいの?と思うことは多い”というのも、常々思っていることで。だからこの曲はわたしの気持ちそのままで歌っているんですよね。

──ボーカルからあれだけ生々しい苦しみが伝わってくるのには、そういう背景があったんですね。

上野:わたしの音楽を必要としている人たちにも、こういう曲は必要なんじゃないかなとも思ったんです。片想いのままなら良かったのに……と思うくらい、付き合っているからこそつらいと感じることはたくさんあると思っていて。この関係はもう恋じゃないかもしれないし、いつかそれを目の当たりにする日が来るかもしれないけど、今はこの人と一緒にいることがわたしにとっての幸せなんだ、というある種の諦めも感じている。それでも“好きだよね?”と聞いてみたら、いい答えが返ってくるんじゃないかという希望もあって……それが女の子のリアルなんじゃないかなって。現実を直視しないからこそ生きていけることって、あると思うんですよね。

──そうですね。この曲を聴き終えたあとに落ち込んで、ふと“自分の幸せってなんだろう?”と考えてしまいました。

上野:女子会でよく“自分のことを好きでいてくれる人といるのと、自分が好きな人といるの、どっちが幸せ?”という議題が上がるから、わたしも“幸せってなんだろう?”と考えるようになって──その現時点での結果が「幸せ」だと思います。自分の好きな人を追いかけていたいタイプであることを自覚しましたね。必死に追いかけながら“ねえ好きだよね?”と聞き続けたいタイプ(笑)。それで“好きだよ”と言われても“本当に?”と疑心暗鬼になってしまうタイプだとも思いますね……。ずっと追いかけてるほうがラクなんでしょうね。

──ああ……。上野さんと悲しみは切っても切れない縁なのかもしれない。

上野:そうですね(笑)。こういう人間だからこそ発信できる音楽があるし、同じような感覚を持つ人が共感してくれる歌詞を書けるとも思うんです。それってネガティブなわたしだから得られるハッピーもあるということでもあると思うんですよね。歌手に向いているのかなと思ってます(笑)。聴いてくれた人が“自分の幸せってなんだろう?”と思ってくれたら、この曲も浮かばれますね。

──好きな人の人生というドラマのなかでヒロインにはなれなかったとしても、自分の人生というドラマはまだまだ続いていきますしね。

上野:好きな人のヒロインにはなりたいけれど、そこまでの道のりで耐えられないこともあるだろうし、待ってられないこともあるだろうし、思い続けることが難しくなることもあるだろうし……その結果失恋が起こると思うんです。“あなたのヒロインにはなれなかったけど、あなたのドラマの登場人物ではあったよ”という最後の切なさを込めての、『ヒロインにはなれなくて』ですね。7曲それぞれで、忘れられない特別な恋を描けたんじゃないかなと思っています。

取材・文◎沖さやこ

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▲『ヒロインにはなれなくて』通常盤

New Mini Album『ヒロインにはなれなくて』

2021年6月9日(水)発売
■初回限定盤(CD+DVD)
¥5,000(tax in) BZCS-91191
■通常盤(CD only)
¥2,500(tax in) BZCS-1191

[CD]
1. 愛しい人、赤い糸
作詞・作曲:川崎鷹也 / 編曲:時乗浩一郎
2.好きが残った
作詞:上野優華 / 作曲・編曲:鶴﨑輝一
3.君の街まで
作詞・作曲・編曲:原田茂幸
4.好きでごめん
作詞・作曲:上野優華 / 編曲:時乗浩一郎
5.ヒロイン
作詞:上野優華 / 作曲:上野優華、時乗浩一郎 / 編曲:時乗浩一郎
6.今日も君でした
作詞:岩里祐穂 / 作曲:青葉紘季、角野寿和 / 編曲:角野寿和 / Strings Arrange:角野寿和、時乗浩一郎
7.幸せ
作詞:上野優華 / 作曲・編曲:松岡美弥子

[DVD]
◆ Music Video
1. 好きでごめん
2. 愛しい人、赤い糸
3. 愛しい人、赤い糸(Acoustic ver.)

◆ 愛しい人、赤い糸 Recording Document

◆ Live Shooting
Special Online LIVE〜今夜あたしが泣いても〜
2020.10.23@KANDA SQUARE HALL
1. はじまりのうた
2. 空
3. こっちをむいて
4. 好きな人
5. good feeling
6. Song for You
7. メロンパンのうた

■「ヒロインにはなれなくて」ダウンロード&サブスク
https://lnk.to/heroine_album

ライブ情報

<上野優華 23rd Birthday & Debut 8th Anniversary LIVE ~Smile & Song~>
日程:2021年7月11日(日)
会場:東京・大手町三井ホール
時間(2回公演):
(1)開場15:15 / 開演16:00
(2)開場18:45 / 開演19:30
料金:¥6,800(税込)
*バンド編成
*来場者特典あり

<チケット一般販売中>
https://eplus.jp/yuuka-ueno/

<上野優華 Debut 8th Anniversary LIVE ~Smile & Song~ in 徳島>
2021年7月24日(土)徳島市グランヴィリオホテル 1Fグランヴィリオホール
時間:開場15:30 / 開演16:00
料金:¥6,000(税込、ドリンク別¥500)

<オフィシャルHP先行>
期間:6/9(水)12:00?6/20(日)23:59
https://eplus.jp/yuukaueno21-hp/

関連リンク

◆上野優華 オフィシャルサイト
◆上野優華 カラオケ楽曲一覧
◆「ヒロインにはなれなくて」ダウンロード&サブスク配信リンク

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外部リンク

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