
サポーターに向けガッツポーズを見せる坂本紘司氏©︎SHONAN BELLMARE
2000年に湘南ベルマーレに移籍後、チームのレジェンドとして多くのサポーターから愛された坂本紘司氏。2012年に現役を引退するとフロント入りし、現在では副社長GMとして選手やクラブを大事にするチーム作りに日々奔走している。そんな坂本紘司副社長GMに、元チームメイトで日本代表の遠藤航選手についてや印象に残っている試合などの話をうかがった。
ーー坂本さんは日本代表でカタールW杯にも出場した遠藤航選手(シュツットガルト)とはプレー時期も被っていますが、遠藤選手の印象はいかがでしょう? どんなところが優れていましたか?
彼は高校生の時からトップチームのゲームに出場していて、3年くらい一緒にプレーしましたね。それこそ彼は「賢さ」を持っていましたし、高校3年生でトップチームに参加した時に、当時の反町康治監督から「守備の時のポジションをちゃんと取っているのは航だけだ」とも言われていたのを記憶しています。当時は一緒にプレーしていてそういうことはあまり分かっていなかったんですけれども、上からピッチを見る機会が多くなった時に「いちばんいいポジショニングを取って、次のプレーを予測してプレーしていたのは航だったんだな」と、今思うとすごく感じますね。
当時は足も速くなかったし、飛び抜けてテクニックがあるというタイプではなかったので。「航の特徴って何だろう?」って思っていたんですけれども、いま選手を退いて、SDの立場から言うと、「航みたいな賢さを持って次のプレーを予測して動くプレーヤーが上にいくんだな」ということを彼から学ばしてもらったというか。今では「航の若い時はこうだったんだよ」とか、いろいろな選手に話すことも多いですね。
ーー現役時代だけでなく現在も含めて印象に残っている選手などはいますか?
印象に残っているという意味では航(=遠藤航)もそうなんですけれども、中村祐也(浦和レッズから2008年湘南ベルマーレに完全移籍)もすごく印象に残っていますね。祐也は一緒にプレーした選手の中ではめちゃめちゃセンスのある選手でした。ケガが多かったりフィジカルの面ではそこまで強い選手ではなかったのですけれども、サッカーセンスでズバ抜けていたのは祐也かなという気がしますね。
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湘南ベルマーレ2023新体制発表会©︎SHONAN BELLMARE
ーーでは現役時代、現役引退後を含めて印象に残っている試合などはありますか?
3つあって、1つ目は2001年J2開幕戦の横浜FC戦。この試合がJリーグデビュー戦で自分がゴールを決めて1-0で勝ったんですけれども、それがきっかけでずっと試合に使ってもらえるようになって。それまではなかなか試合に出ることができなかったんですけれども、ある意味選手としていいスタートを切れたということで、「自分、持ってるな」なんて思っていましたね。
2つ目は2006年のJ2最終節、ホームでの試合で柏レイソルに負けたんですけれども、その試合に勝ったレイソルがJ1昇格を決めて。目の前でレイソルの選手たちがめちゃめちゃ喜んでいたんです。それを見て、「俺もコレをやらないとプロじゃない」と思ったことを覚えています。
3つ目は2009年のシーズンでJ1昇格を決めた水戸ホーリーホック戦ですね。自分が湘南に来てから目標にしていたものを達成できたということで、自分の人生を大きく変えたなという試合ですね。湘南でJ1昇格を達成できたというのは、今も湘南で仕事ができている大きな要因の1つかなと思っています。デビュー、屈辱、昇格という3つを味わった試合は、自分の中ですごく色濃く残っています。
ーー最後に中学生、高校生の選手たちに上達のためのアドバイスをお願いします
自分の中学・高校時代と比べると上手い選手は増えたような気はするんですけれども、1つ尖ったものを持った選手というのは少なくなってきているかなというような印象はありますね。じつはプロの選手でもどこかで壁にぶち当たることが多いんです。試合に出られない時間も長かったりする。そんな時に、1つ尖った部分、誰にも負けない特徴とかを持っている選手と、そういった特徴の無い選手では、特徴を持っている選手の方が、それを軸にメンタルを立て直したりできたりするような気がします。逆に比較的になんでもできる選手の方がスランプに陥りやすいというか、「自分はどの部分で他人と差を付ければいいのか」などと悩んでしまったりすることも多い。
なのでアドバイスとしては、中学や高校の時に「これだけは絶対に誰にも負けない」というものは身に付けておいた方がいいと思います。1つ自信を持つことができると、それをきっかけにいろいろなものができるようになったり、後から付いてくるものってたくさんあるので、まずは1つを磨きに磨いてほしいなと思います。
自分は高校の時(静岡学園)はFWで足も速くなかったですし、フィジカルもなかったんですけれども、めちゃめちゃ点を取っていて。逆に言えばそれしかなかったんですけれども、点を取る能力だけでプロになれたという感じなんです。プロのキャリアの終盤ではボランチとかもやっていたんですけれども、ボランチをやりながらも大事なところでは点を取っていたりして。調子が悪くても点を取ることで調子を取り戻したりできたので、何か1つでも自分が信じられるものを持っているか持っていないかで全然変わってくるのかなと思います。なので、まずは1つ誰にも負けない特徴を身に付けてほしいなと思います。