保育士を辞めざるをえなかった過去を、時間が癒してくれるのを待つ

保育士を辞めざるをえなかった過去を、時間が癒してくれるのを待つ

  • かがみよかがみ
  • 更新日:2023/03/19
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将来への不安は、常につきもの。

つい最近も、そんな不安に対して漠然と恐怖心を抱き始めたばかりでした。

やっぱりどこか心が満たされていないのです。一日中家にいる生活に。大好きでなった保育士を辞めてしまったことに。

誰かと話したくて電話をかけてみようとするけれど、いざ名前を探すとみんな出られない人ばかりなのです。だって、社会に貢献して今日も仕事に行っているから。そんな時は、猛烈に疎外感を感じてしまうのです。「家にいる時間が一番、苦しいな」と思ってしまいます。

1LDKの部屋は、夫と一緒に理想の空間を目指して、何度もカスタマイズしながら作り上げてきました。棚には私たち夫婦の写真が飾ってあって、好きな映画のポスターが壁一面に貼り巡らされています。所々に趣味のお香が並べてあって、ドライフラワーも飾ってあります。

まさに思い描いていた理想の空間でした。けれどもたった一人家にいる私には、ただただ虚しく寂しい箱でしかないのです。

ついつい「仕事をしていた方が気が紛れるかな」なんて考えてもみたけれど、一度壊れた心を治す作業は、とてもじゃないけどすぐには出来ません。瞬間接着剤で簡単にくっついてくれたらいいのにとも思うけれど、こればっかりは、時間が解決してくれるという言葉に、身を委ねることしか出来ないのです。

お金がなかった私と一緒にいてくれた彼女を思い、娘のために貯金する

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仕事を頑張っているから、休みに価値を見出せる。忙しくしているから、たまの休日くらいゆっくり過ごしたくなる。じゃあ、毎日家にいる私は?どれも当てはまらないのです。

寂しくて、虚しくて何かで気持ちを埋めようとする。ある時は、物を買うことで心を満たしていました。けれど、また違う日になると物を捨てることで心が満たされることもあるのです。「人間って不思議だなぁ」と感心してしまう時さえあります。

そんな私は、やっぱり何かで心のスキマを埋めようとしているんだと思います。

子どもたちに会えないスキマは何で埋めているんだろう。お金が減っていく不安は、一体どこで解消しているんだろう。物欲が溢れて止まらない時は、どうやってセーブしていったらいいんだろう。

毎日が、疑問だらけの生活です。

働いていた頃は物欲はあったけれど、今よりずっと満たされていました。きっと、私の中で一番大切だった保育士を奪われてしまったから、そこにできた大きすぎる心のスキマを、なんとかして埋めようとしているのかもしれません。

大好きだった子どもたちと会えなくなった寂しさを。

心を壊す羽目になった怒りを。

どうしようもない虚無感を。

なんとかして埋めようとしているのかもしれません。

いつか埋まるでしょうか、この心のほころびたちは……。

いまだに整理がついていないのです。保育士を辞めたことに対しての未練というか、後悔が。

もしも「私はやり切ったし、もうこれで思い残すことはない」と自らが思えていたら、こんな風にはなっていなかったと思います。少なからず誰かの力を借りて、辞めざるを得なかったから、どこかで「もう少し、我慢していたら」なんて考えてしまうのかもしれません。

かといってあのまま続けていたら私は、間違いなく壊れて修理もできなくなるところまで堕ちてしまったでしょう。助けてもらって離れることができたことは、すごく感謝しています。私が決断できなかったことを、周りが背中を押してくれたから。

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この選択が正しかった。

それも自分ではわかっているのです。だからきっと、私が言っていることは贅沢なことなんだと思います。子どもたちのそばにいたいって思うことも、平和に仕事を続けたかったってことも。今はどうすることもできない気持ちと、折り合いをつける方法を毎日探しています。

いつか本当の意味で、心が晴れてくれるといいなぁ。私の心は、今日も雨みたいです。

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