「スポーツ=儲からない」という二元論を壊したい、とあるソフトウェア開発者が語る思いとは

「スポーツ=儲からない」という二元論を壊したい、とあるソフトウェア開発者が語る思いとは

  • ココカラネクスト
  • 更新日:2021/06/10

一言で「スポーツ業界」と言っても、スポーツチームやその運営会社、スポーツ新聞社やスポーツ番組制作などのメディア、スポーツ用品店など、その携わり方は幅広く存在する。

だが、その中心となって業界を動かしているのは、各競技でプレーする選手たちではないだろうか。

そんな選手たちが日々活躍するためには練習やトレーニングのみならず、体調面や精神面含め、あらゆる形でのサポートが必要となるが、その中で選手のコンディショニング管理を支える、あるソフトウェアに注目した。

そのソフトウェアというのが、「ONE TAP SPORTS」だ。

「ONE TAP SPORTS」はスポーツ選手のコンディション管理をデータ化し、可視化することでパフォーマンスの向上をサポートするソフトウェアである。

今回、この「ONE TAP SPORTS」の開発元である、株式会社ユーフォリア共同代表・橋口寛氏を、元フジテレビアナウンサーでスポーツアンカー・田中大貴さんが取材。

後編となる本記事では、スポーツビジネスの難しさや、新型コロナウイルスによって大きく変わった世の中だからこそ貢献できる橋口さんの今後の展望について話を聞いた。

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「スポーツ=儲からない」という二元論みたいなものを壊したい

田中:「スポーツ界」を深く考えていくと、例えばラグビー日本代表は、プロアマ含め数多あるチームのトップオブトップ。そしてそこを中継するテレビ局やメディアは全体で見ると凄く少数だと思います。スポーツ界はもっと大きいはずではあるものの、そこをどう広げて行くかということは僕の課題でもありますが、その点橋口さんはどう考えていますか?

橋口:「ONE TAP SPORTS」を使ってもっと役に立てると思っているチームが現在5万以上あるのですが、ラグビー日本代表ってその中の1チームに過ぎないんですよね。ですが、日本代表チームは、その5万チーム全てに共通する要素を持っているトップオブトップのチームなんだと思います。彼らはロングスパンで強化を考えていて、現場で最先端のスポーツ科学を活用して強化に資するというのはもちろんありながら、それと同時に連綿と強い選手を輩出し続けるシステムを作ろうという思想がある。それはここ10年くらいで強くなった思想だと思います。
ラグビー日本代表のベースとなるのはトップリーグですが、その下に続くのは大学、高校、中学そして小学校のスクール。この細い鉛筆みたいなタレントプールの中で、上の人たちだけを鍛えるのではなく、このピラミッドを設計して下の若い世代が湧き上がってくるようなシステムを作らないといけないという思いが彼らにはあるんですよ。トップだけでなくいかに若い世代に怪我なく強く大きくなってもらうかということですよね。
なのでこれから我々が対象とする5万以上のチームに共通する要素が、ある種の大本として入っているのがラグビー日本代表チームだったなと思います。

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田中:スポーツをビジネスとして捉えることは非常に魅力的でありながら非常に難しい世界だと思います。その辺りは実際に当事者となってみていかがですか?

橋口:一昔前はスポーツ=教育の場であり、基本はボランティアベースで成り立っていて、それを金稼ぎにするのはけしからんと言った風潮はあったと思います。ですが、流石に最近それはかなり減ってきたと思うんですね。一方で、スポーツをビジネスにすることはそれほど簡単では無いということも痛感しています。
その中で一つ大きなことは、スポーツと一般ビジネス界におけるバジェットの使い方に関する感覚の違いですね。
メディアを通じた存在感は大きいですし、アテンションは凄く大きいので、バジェットが大きい産業であるように一般的には捉えられがちだと思います。ですが、実際にやってみると、アテンションに対してバジェットの大きさは極めて小さかったなと。
だからこそチャレンジングで、やりがいがあるし、チャンスだなとも思います。
我々もこの事業をやり始めた時に、「スポーツって儲からないでしょ。スポーツやめて他に行った方がいいのでは?」と言われたことがあります。一般的に短期的な視点でみると、それを真に受けてスポーツから離れて他の市場に行くと思うんです。それを理由に長期に腰を据えて本格的に取り組む手強い競合がいなくなるという要素は少なからずあったなとは思います。
僕たちはその「スポーツ=儲からない」という二元論みたいなものを壊したい、その証明を僕らがやりたいという思いは凄くありますし、そのチャレンジはやりがいがある。そしてそれができるという感覚は年々強くなってきていると感じています。

「オッズを変え」、個人のポテンシャルを十分に発揮させる

田中:「ONE TAP SPORTS」というサービスも含め、新型コロナウイルスによって世の中の状況が変化してきています。その中で、御社としてどのように変遷していく、または大きく切り替えたのでしょうか?

橋口:先ほど2020年までマーケットでレディネスの重要性への認識が高まっていなかったというお話をしましたが、そこが急速に変化したのはコロナの影響が大きいかなと思います。一般の産業でもDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んだと言われていますが、スポーツ界においてもそれはまったく変わらないですね。
今までは皆が集まって練習するのは当然のことでしたし、感染症対策をしなくてはいけないというニーズもそれほど高くなかった。ですが、圧倒的にそこが1丁目1番地になって、安全でクラスターを発生させずにいかにスポーツを維持させるかが1番大事なことになっている。
その中で、「ONE TAP SPORTS」は元々体調やコンディション管理のソフトなので、感染症予防のための体調把握にも凄く役立つものです。さらに、リモート環境下で離れた場所でトレーニングをするとか、トレーニングメニューを共有できると言ったニーズが高まったのが2020年でした。

そういった意味で、コロナ禍で「ONE TAP SPORTS」を使うことの素地というのは急速に耕された1年だったかなと思います。

また、我々は昨年4月に、「ONE TAP SPORTS」に感染症対策機能というものを開発し、無償提供することを決めました。これはスタートアップ投資としてはかなり大きなものでしたが、このような状況の中、スポーツ関係者の皆さんは非常に苦しんでいるし、医療従事者の皆さんも必死になって戦っている。その中で我々ができることは何か無いかというのを社内で協議しました。かなり短期間での決断になりましたが、2020年内いっぱいまで希望する全チームに無償提供しました。
約2000チームという凄く多くのチームに使っていただけるようになり、皆さんから本当に感謝の言葉をいただいたので、やって良かったなと思っています。

田中:なるほどですね。これまでの経験から色々なエビデンスやデータが溜まってくると思いますが、それを活かしてユーフォリアさんだからこそできる今後のビジネス展開などは考えていらっしゃいますか?

橋口:現在「ONE TAP SPORTS」を使っているアスリートの方が約7万人、指導者やドクターなど専門家と呼ばれる方々が1万人以上います。この方々との繋がりや、日々オンライン上でデータを生み出し、体調管理やパフォーマンス向上に役立ててもらっているということそのものが我々にはとってはアセットですし、スポーツ界全体にとってもアセットだと思っています。これをもっともっと広げていきたいというのがまず一つです。

もう一つは、今我々が直接サービスを提供させていただいているのは、選手や指導者、プロフェッショナルの方々ですが、この基盤をもっと大きくしたいと思っています。それに加え、ジュニアの子たちにとって保護者って凄く重要な関わりを持っている。なので、その保護者の方々に直接的に情報提供できるようになりたいと思っています。

これまで「ONE TAP SPORTS」はチームでしか使えず、個人使用に関してはお断りせざるを得なかったんですよね。これを個人向けでも使えるようにしようということで、今開発を進めています。

この他、既にスタートしていることとしては、法人向けの事業です。これは、スポーツチームというフィールドで、企業さんが作っているプロダクトやサービスの効果やエビデンスをとって検証したいというニーズを汲むものです。その企業に適したスポーツチームのユーザーを集めて両者をマッチングできるプレイヤーってなかなかいないんです。でも、我々はそれができる。企業さんに対してチームを紹介し、試験のデザインや一般の方々に届けるためのプロモーションのお手伝い、ひいては、それがスポーツチーム側としても非常に喜んでいただけるようなものですね。
元々こういう栄養補助食品や治療器具を使ってみたいと思っていたけれど、継続的に使うのは手が出ないといったチームに対して法人の方から活動資金が提供されると言ったケースもあるので。これにより両方がwin-winになり、我々としても事業となるようなものを作っています。これが今2本目の大きな柱となりつつありますね。
なので「ONE TAP SPORTS」の色々なプラットホームの上に、この新しいビジネス展開を乗せていきたいと思っています。

田中:最後になりますが、ビジネス展開をしていく上で、どうしても利益が必要ではあるものの、それ以上に助けてあげたい気持ちだとか、「もっと競技力が向上するはず」と困っているところに対して、一緒に人生に乗っかっていきたいという気持ちが僕の中ではあります。それが最終的に成就するのではないかという勝手な美学をもっているのですが、それに関してはいかがでしょうか?

橋口:まさにその通りだと思います。我々が直接目の前で触れて、話しをし、困っていることを解決して、感謝の言葉をいただけるケースって氷山の一角だと思います。ですが、その裏側に、物凄く多くの人たちが、本来避けられたはずの怪我をしてしまうだとか、こういう指導者に出会っていればいい未来があったはずなのに、といったことって無数にあるなということを、色々な経験を通して嫌というほど感じたんですよね。それを一つでも解決したいと思っています。

よく、「オッズを変えよう」という表現をすることがあります。オッズは、人生の掛け率みたいな感じです。それが運によって規定されるって、こんな理不尽なことってないと思うんですよ。だから、どんな人であってもその人の持っているポテンシャルを十分に発揮できる状況にしたいなという思いがあります。ここでは自分は伸びない、上手くなれないと本人が認識して求めているケースもあれば、本人は認識していないけど求めているケースが物凄くある中で、ポテンシャルが発揮できないような状況を解消したいと思っています。

これは社内全体で共有をし、時々ミッション・ビジョン・バリューを皆で議論しながら噛み締めてそれに向かっているという感じです。

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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