【3x3.EXE PREMIER 2022 PLAYOFFS】おばあちゃんが配信で見守ったMVP

【3x3.EXE PREMIER 2022 PLAYOFFS】おばあちゃんが配信で見守ったMVP

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  • 更新日:2022/09/23

チーム創設のコンセプトを体現し、頂点に輝いたG FLOW.EXEと矢上若菜

9月19日は「敬老の日」だった。この日、3x3プレーヤー、矢上若菜は最高の“おばあちゃん孝行”をしたに違いない。

福島県出身の矢上は、福島西高、専修大を卒業後、社会人の秋田銀行RED ARROWSに入団、同チームのメンバーとして2015年から5年連続で日本一を経験した。今年30歳、競技生活の長さから言えばベテランの域に差し掛かっているが、5人制を引退後の2020年からプレーしている3x3のフィールドで今、矢上は実にハツラツとプレーしている。

矢上が所属しているG FLOW.EXEは、横浜市都筑区を拠点に介護事業を展開する株式会社NEXT FLOWが、「3x3というスポーツチームを活用し、もっと介護を誰もが身近に感じ、介護が必要となった時に困らない世の中を作りたい」という思いから設立された、まだ若いチームで、今季より3x3.EXE PREMIERへの新規参入を果たした。前出の♯5矢上をはじめ、♯6李人竹、♯8井齋沙耶、♯9吉武忍という、それぞれに経験を持つメンバーが集い、戦いに臨んだG FLOW.EXEは、#6李がシーズンMVP&得点王に輝くなど、ロスター全員が高いアスレチック性を発揮し、シーズンを15勝1敗と圧倒的な成績で勝ち抜いた。

3人制バスケットボールのグローバルリーグである3x3.EXE PREMIER。今シーズンの国内リーグは男子が5月に開幕し、42チーム(7カンファレンス)8ラウンド、女子は6月に開幕し、6チーム(1カンファレンス)4ラウンドにわたり、全国13都市14会場で熱戦を繰り広げてきた。同リーグは日本に加えて、タイ、ニュージーランド、チャイニーズタイペイの4つの国と地域で展開されてきたが、各国の上位チーム(各カンファレンス上位2 チーム、男子=26チーム、女子=8チーム)が一堂に集い、トーナメント形式で頂点を競ったのが、9月18・19日に開催された「PLAYOFFS」だ。

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「PLAYOFFS」の会場となった大森ベルポート(写真:村山純一)

女子大会は、日本1位のG FLOW.EXEが、1回戦でタイ2位のCHULALONGKORN UNIVERSITY.EXEに21‐10、準決勝ではチャイニーズタイペイ1位のTAIPEI CHUNGHWA TELECOM.EXEに21‐11とそれぞれノックダウン勝利を収め決勝進出。その決勝では、チャイニーズタイペイ2位のNEW TAIPEI CHUNGHWA TELECOM.EXEとの対戦となったが、チーム名が示すとおり、NEW TAIPEI CHUNGHWA TELECOM.EXEは、準決勝で勝利したTAIPEI CHUNGHWA TELECOM.EXEのいわばアンダー世代ともいえるチーム。“先輩の分も!”という思いはすさまじく、コートサイドに陣取ったチャイニーズタイペイの仲間たちによる力強い応援も後押しし、G FLOW.EXEは押され気味の展開で試合は進んだ。

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決勝前の記念撮影。G FLOW.EXE(写真左)は常に“見られる”ことを意識したこんなポーズでカメラに向かった

©3x3.EXE PREMIER

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NEW TAIPEI CHUNGHWA TELECOM.EXEとの決勝は両チームの気迫がぶつかり合う激戦に(写真:村山純一)

しかし、「それを楽しさに変えて、心の強さを見せることができたのかなと思います」と試合後に語ったのが#5矢上だ。その言葉どおりのプレーを見せ、G FLOW.EXEはレギュラーシーズン中、そしてこのプレーオフも貫き通してきた強気でハツラツとしたプレーで、最後に勝利を手繰り寄せた。

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厳しい状況さえも「楽しさに変えて」戦ったという#5矢上(©3x3.EXE PREMIER)

今大会、チームを優勝に導くプレーでMVPを獲得した矢上が3x3を存分に楽しんでいることは、先の「それ(逆境)を楽しさに変えて…」というコメントからも伝わってくる。「(地元の)福島でおばあちゃんが配信で見ていてくれたみたいで…」と矢上は、笑顔をいっそうほころばせ、うれしそうに語った。おそらく矢上が抱いていたはずの「喜んでくれる顔が見たい」という思いは、きっとG FLOW.EXEというチームが生まれたコンセプトにも通じるもので、それを忠実に実行したメンバーの真摯な姿勢が導いた優勝だった。

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優勝を決めて、思い思いに喜びを表現するG FLOW.EXEのメンバー(©3x3.EXE PREMIER)

「いいことばかりじゃない」。だからこそ正面から向き合ったUTSUNOMIYA BREX.EXEと飯島康夫

男子大会は、UTSUNOMIYA BREX.EXEが、準決勝では昨年の東京2020オリンピックに日本代表として出場した#91落合知也を擁するALPHAS.EXEに、そして決勝では、昨年も最後に覇を競ったTRYHOOP OKAYAMA.EXEを破り、見事4連覇を達成した。いずれの試合も、お互いの激しいディフェンスに抗い、削り取るようにリングを目指した壮絶な試合だった。

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決勝は、昨年と同じUTSUNOMIYA BREX.EXEとTRYHOOP OKAYAMA.EXEの顔合わせに(©3x3.EXE PREMIER)

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大会最終日、UTSUNOMIYA BREX.EXEにとってはまったく気を抜けない連戦となった(写真:村山純一)

昨年9月に行われた『3x3.EXE PREMIER JAPAN 2021 PLAYOFFS presented by PORSCHE』、UTSUNOMIYA BREX.EXEにとっては、通常1チームあたり4人の登録で試合中には自由に交代ができるところ、♯7齊藤洋介、♯5ドゥサン・ポポビッチ、♯7飯島康夫の3人のみという布陣、交代なしのフル出場でトーナメント全4試合を戦い抜かなければならないというチーム事情を乗り越えて獲得したタイトルだった。今季、チームには新たにポポビッチと同じセルビア出身で、193㎝/92㎏とサイズも同等、そしてポポビッチより2歳年下の26歳、♯10ドゥサン・サマルジッチが加わったが、今プレーオフでは、サマルジッチの献身性、激しさと冷静さのバランス、そして確かな技術力がいかんなく発揮され、見事MVPに輝いた。

振り返れば、5月に東京都千代田区の「ワテラス」で行われたレギュラーラウンド開幕戦でUTSUNOMIYA BREX.EXEは見事に優勝、MVPを獲得したのは飯島だった。しかし、表彰式を終えた飯島の表情はどこか曇っていた。その直前に出場した3x3の世界最高峰サーキット、「FIBA3x3ワールドツアー」の今シーズン開幕戦(栃木県宇都宮市で開催)で、UTSUNOMIYA BREX.EXEはセルビアのLIMANに17‐22、リトアニアのŠAKIAIに16‐22と敗戦を喫していた。スコアが示す以上の力の差を体感したという飯島は、「あの次元の強度をどうやって国内の試合で身に付けるかが課題」と厳しい表情で語り、タイトルホルダーとして臨む国内シーズンに、「全身全霊をかけて、挑戦者として頑張りたい」と決意を示していた。

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世界の壁の厚さを痛感し、強い決意で今シーズンに臨んでいた#7飯島(©3x3.EXE PREMIER)

あれから4か月、熱戦の余韻が残るコートで、戦いを終えた飯島の表情は5月の時とは異なり、しみじみと優勝の喜びを味わっているように見えた。「日本で勝ち続けるのも年々難しくなってきていると感じています。対戦するチームがそれぞれものすごくレベルアップして、一段も二弾もクォリティーが上がっているのが印象深く、自分たちも驚かされることばかりのシーズンでした。でも、それがうれしい、素直にうれしいと感じています」と飯島はかみしめるように語った。

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勝つことの重みと深さを感じさせたUTSUNOMIYA BREX.EXE(©3x3.EXE PREMIER)

「でも、宇都宮(UTSUNOMIYA BREX.EXE)は日本では負けちゃいけないチーム」と、飯島は底上げを実感しながらも、なおかつ自分たちが頂点に立っているという自負と責任を込めて、次のように続けた。
「(シーズン中は)いいことばかりじゃない。ドゥサン(ポポビッチ)とつかみ合いの言い合いになったり、洋介さん(齊藤)が骨折してしまったり、誰かがセルフィッシュになってしまったり…。そういったことに対してもみんなでしっかりフォーカスし、乗り越えてきたことがすごくプラスになり、その集大成として今日の結果がある。だから、(喜びも)ひとしおです」

勝ち続けるためには、決してとどまっていてはならず、自身に厳しく臨み、たえず成長が必要であることを、今回のUTSUNOMIYA BREX.EXEの優勝は物語っていた。

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女子優勝のG FLOW.EXEとともに(写真:村山純一)

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今回の3x3.EXE PREMIER 2022プレーオフ、当初の会場は、初日が屋内の大森ベルポート(東京都品川区)、2日目は屋外の増上寺大殿前(東京都港区)を予定していたが、台風14号の接近を考慮し、安全な競技進行のため2日目も大森ベルポートでの開催となった。都市や街の空気に包まれた中でのプレーや観戦も3x3ならではの醍醐味だが、日本の文化が色濃く漂う増上寺で、再び開催の機会が訪れることを楽しみにしたい。

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大会2日目の開催が予定されていた増上寺大殿前(写真:AC)

取材・文〇村山純一(月刊バスケットボール)

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月刊バスケットボール編集部

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