
さまざまな「学び」が得られることで長年親しまれているNHKの講座番組シリーズ。その2023年春からのレギュラー出演者の顔ぶれに、男女の若手アイドルたちが並んだ。
俳句番組『NHK俳句』に乃木坂46の中西アルノ、語学番組『英会話フィーリングリッシュ〜データで選んだ推しフレーズ〜』にINIの西洸人、手話番組『みんなの手話』(いずれもNHK Eテレ)にはSnow Manの佐久間大介が出演することが決まり、ファンの期待を集めている。
日本語好きの乃木坂46・中西アルノはどんな俳句を詠むのか
『NHK俳句』にはこれまで、スマイレージ(当時)の福田花音、私立恵比寿中学(当時)の廣田あいか、Berryz工房(当時)の嗣永桃子、東京パフォーマンスドールの上西星来と櫻井紗季などアイドルが出演。2022年3月をもって同番組を卒業した櫻井紗季は2022年3月27日付の自身のブログで「わたし俳句できるのかな、、と不安だらけで終わった初めての収録。普段は本も読む方じゃなかったし 俳句についてはちんぷんかんぷんで、まるでポエムのように自分の気持ちをうたっていました。苦笑」(※1)と振り返り、年数を重ねるにつれて「真剣に「俳句」を上達させたいと 気持ちが切り替わりました」とのめりこんでいったという。
俳句初心者だった櫻井に足並みを揃えるように、「推しが出演しているから」と同番組を観て、それまで学校の授業くらいでしか触れてこなかった俳句にハマったファンも多数いるはず。『NHK俳句』を含めて『NHK講座』にアイドルが抜てきされる背景には、そうやって「学習」に目覚めさせる動機作りもあるだろう。特に、中西、西、佐久間は彼、彼女らと同世代やそれよりも下の年齢のファンもたくさんいる。そういった学生ファンが“塾感覚”で番組を視聴し、結果的に学力向上へ結びつくことも少なくないかもしれない。
中西は2023年3月4日付の自身のブログに「本を読むのが好きで 詩集を読むのが好きで 感想文を書くのが好きで オノマトペ探しが好きで というか、日本語そのものが好きでした」(※2)と綴っており、番組では、彼女特有の言葉のチョイスから生まれる新たな感覚の俳句が飛びだしそうな予感だ。
英語環境で育ったINI・西洸人、手話に興味を持つSnow Man・佐久間大介
西が出演する『英会話フィーリングリッシュ』は2023年春からの新番組。西は2022年4月23日出演のラジオ番組『JA全農 COUNTDOWN JAPAN』(TOKYO FM)に出演した際、小学低学年時にオーストラリアで3年間暮らしていたと明かし、洋楽をよく聴いていたと語っていた。「英語とかよく分からないけど」とも付け加えていたが、それでも英語に囲まれた環境で暮らした経験は間違いなく強みである。さらにINIには英語が堪能な許豊凡が在籍。グループ自体も積極的に海外進出を行い、たとえばアメリカのライブではメンバー全員が英語でファンとコミュニケーションを図るなどしていることから、同番組に西はぴったりハマるのではないか。
『みんなの手話』はこれまで三宅健が9年間にわたり、「番組ナビゲーター兼“手話学習中のお客さん”」のポジションを担当していた。番組のコンセプト自体、「“手話学習中のお客さん”の目線で手話を学んでいく」ということから、同ポジションは非常に重要なものだった。そんな番組のコンセプトの立て方と三宅を起用した狙いは見事に的中したようだ。
ラジオ番組『三宅健のラヂオ』(bayfm)の2023年2月18日放送回のなかで、三宅は番組卒業に際し「僕が手話を始めたきっかけはファンのろう者の女の子が手話で話しかけてくれたっていうのだから」とコメント。同放送回では、ファンからも「健くんが『みんなの手話』に出演していらっしゃることを知り、私も健くんのように温かで優しく寄り添う手話が出来るようになりたいと思い、学びはじめました。年月が流れ、今ではアタフタしながらではありますが手話通訳をさせていただけるまでになりました。お陰で、ろう者の友だちや手話通訳者の友だちも出来ました」「昔から興味のあった福祉を学びたいと思って大学に進学し、それと同時に手話を勉強しようとした時に健くんに出会いました。番組を通して、健くんの手話に真っ直ぐに向き合う姿勢に惹かれ、気づけばV6丸ごと好きになっていました」との声が届いた。三宅の存在が、良い意味で手話のハードルを下げたと言えるのではないだろうか。
佐久間は三宅から「番組ナビゲーター兼“手話学習中のお客さん”」を引き継ぐ。公式コメントでは「手話が出てくる少女漫画を読んだことがきっかけで、手話に興味を持ち始めました」とし、「まだまだ初心者ですが、ろう者の皆さんに手話が伝わるとめちゃくちゃうれしくて。ナビゲーターを引き継ぐ者として、これまで手話に触れてこなかった方にも、「手話ってこんなに楽しいんだ」と思ってもらえるようがんばりたいです」と意気込みを口にした。
佐久間の「「こんなに楽しいんだ」と思ってもらえるよう」という考え方は、NHK講座番組全般に言えることだろう。「講座」という堅いイメージがある番組の間口をどのように広げていくのか。もっとも大切なのはやはり「楽しむ」ということだ。
アイドルはライブなどで笑顔を絶やさず、どんなときでも元気を与えてくれる「人を楽しませることのプロフェッショナル」である。その点でNHK講座番組にアイドルが抜てきされるのは最適なことではないか。中西、西、佐久間らが若者たちの知見をどのように広げていくのか、注目したい。
※1:https://ameblo.jp/saki-sakurai-blog/entry-12731058761.html
※2:https://www.nogizaka46.com/s/n46/diary/detail/101239?ima=3606
田辺ユウキ