仕事も休職に追い込まれた「慢性頭痛」が改善! 100万人以上が悩むと推定されるMOH(薬の使い過ぎによる頭痛)を改善する鍼灸(しんきゅう)治療

仕事も休職に追い込まれた「慢性頭痛」が改善! 100万人以上が悩むと推定されるMOH(薬の使い過ぎによる頭痛)を改善する鍼灸(しんきゅう)治療

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2023/03/19
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桜の開花も始まり、春本番を迎えた日本列島。しかし、季節の変わり目のこの時期に心身の不調を訴える人は少なくない。低気圧や寒暖差による「頭痛」や「疲労」、4月から始まる新生活へのストレスや不安による「不眠」や「メンタルの不調」など、誰もがリスクを抱えていると言っても過言ではない。

いま、こうした心身の不調への解決策として、日本のみならず世界でも注目を集めているのが、漢方薬や鍼灸治療、そしてヨガなどの「東洋医学」であることをご存じだろうか。最新科学で分かってきた効果の秘密、そして、医療現場などでの導入事例などをもとに、治療やセルフケアの最前線に迫っていく。

東洋医学ホントのチカラ取材班

推定患者100万人以上⁉ 「薬の使いすぎによる頭痛」を救う鍼のチカラとは?

日本で少なくとも3000万人が悩むとされる頭痛。まさに国民病と言っても過言ではない深刻な状況となっている。主なタイプには、肩こりなどが原因の緊張型頭痛や、激しい痛みが定期的に生じる片頭痛があるが、この2つのタイプの次に患者数が多い頭痛が「薬の使いすぎによる頭痛(以下MOH)」だ。

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頭痛薬イメージ/NHK提供

最近まで、詳しい調査が行われていなかったが、2021年に新潟県の糸魚川総合病院の研究チームが発表した日本で初めてのアンケート調査によると、25歳~64歳の5,865人のうち136人がMOHに該当。有病率が2.2%に上ることが分かったのだ。この数字を当てはめると、日本では少なくとも100万人以上がMOHということになる。

なぜ頭痛薬を使いすぎるとMOHが起きるのか?

しかし、なぜ頭痛薬を使いすぎると頭痛が悪化するのか? 富士通クリニックの頭痛専門医・五十嵐久佳医師によると、月に10日以上(薬の種類によっては、15日以上)頭痛薬を服用してしまうと、脳の痛みを感じるメカニズムに異変が起きることで薬が効きにくくなり、さらに薬を飲み過ぎてしまう悪循環が生まれMOHになるリスクが高まるという。こうして、一度MOHになると、その後、薬を減らしたとしても頭痛が慢性化した状態が続き、治療が難しくなるケースが少なくないという。

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頭痛専門医の五十嵐医師/NHK提供

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MOHイメージ/NHK提供

慢性頭痛の治療で注目される鍼灸治療

そこで、このMOHやMOHを経て悪化した慢性頭痛の治療で注目されているのが、非薬物療法である鍼灸治療だ。頭痛や慢性痛の診療ガイドラインでも推奨され、医療現場でも標準的な治療に加えて取り入れるケースが増えている。

長年、頭痛の鍼灸治療に携わってきた日本鍼灸理療専門学校・東洋医学研究所の主任研究員である菊池友和鍼灸師によると、鍼灸治療で期待できる効果は、大きく2つあるという。ひとつは、頭痛の引き金となる、肩や首などのコリを和らげる効果だ。

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菊池鍼灸師/NHK提供

筋肉が疲労すると血行が悪くなり、組織が硬くなりコリができる。すると、溜まった老廃物などが周囲の神経を刺激して、「痛み」が生じる。実はこの老廃物などによる刺激は、肩や首だけでなく頭にも到達し頭痛の原因となるのだ。そこで、肩や首のコリに鍼(はり)を打ち、その刺激が神経や血管に伝わることで血流が増加。血行が良くすることで、溜まった老廃物を除去しコリが解消、頭痛も改善されるというワケだ。

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頭痛に関係あるツボを治療/NHK提供

鍼(はり)には「脳の働きを改善」効果がある

そして、もうひとつ期待されるのは、脳の働きを改善する効果だ。MOHやMOHを経た慢性頭痛患者の脳では、先ほども説明したように、多くの場合、脳の「痛みを感じるメカニズム」に異変が生じている。そこで、体に鍼(はり)を打つと、その刺激は末梢神経から脊髄を経て脳に届き、痛みを感じる脳の働きを改善させるという。この体への刺激が脳の機能を改善する効果は、ハーバード大学をはじめ世界各国の科学研究でも詳しく調べられており、効果に個人差があるものの鍼灸の鎮痛効果として認められているものだ。

今回、番組の取材に協力して頂いた青木優希子さん(仮名・29歳)は、MOHを経て2年前から頭痛が慢性化し仕事も休職していた。家事も買い物も満足にできず、引きこもる日々を送っていたという。

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治療前の青木さん/NHK提供

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治療後の青木さん/NHK提供

そこで、主治医である五十嵐医師の勧めもあり、去年11月から週2回の鍼灸治療と自宅でのツボのセルフケアを継続したところ、治療開始から2週間ほどで痛みが和らぐなど徐々に症状が改善。3ヵ月後の診察では、頭痛の重症度を測定するテスト(HIT-6)の結果でも頭痛の頻度が下がり、生活への支障なども大きく改善した。

現在、復職に向けて、準備ができるまでに回復している。頭痛専門医の五十嵐医師によると、薬でなかなか改善がみられない、また薬の副作用が強い場合には頭痛専門医に十分相談の上、鍼灸治療を検討することを勧めている。西洋医学では改善が難しいケースが少なくないMOHや慢性頭痛。鍼灸治療は苦しむ患者に希望を与えてくれる有力な選択肢なのだ。

2023年3月20日(月)よる7:30~8:42(総合)
「東洋医学ホントのチカラ 心と体を整えるSP」
番組HP:https://www.nhk.or.jp/kenko/special/toyo/sp_1.html

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