汎用型への進化がもたらす「AI新時代」の経済効果は桁外れ!?

汎用型への進化がもたらす「AI新時代」の経済効果は桁外れ!?

  • @DIME
  • 更新日:2023/01/26
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深層学習(ディープラーニング)とよばれる機能が加わることで、2010年代に一大ブームを巻き起こした人工知能(Artificial Intelligence、AI)は、今ではスマートフォンや家電製品など多くのものに搭載され、私たちの生活になくてはならないものになっている。

そんな身近になったAIだが、現在その飛躍的な進化により「AI新時代」ともいうべき状況を迎えつつあることをご存知だろうか。

こうした背景を踏まえ、三井住友DSアセットマネジメントはこのほど、「AI新時代」に関するマーケットレポートを公開した。

1.汎用型への進化がもたらす「AI新時代」

AIは文字や音声、画像などのデータを学習することで、通常のコンピューターでは難しかった柔軟で精度の高い推論・判断をおこなうことができる。こうした「学習・推論・判断」の仕組みが人間の脳に似ていることもあり、「AI・人工知能」と呼ばれるようになった。

画像認識、文章理解、音声認識、予測、機械制御といった知的作業(タスク)が得意なAIは、現在様々な分野で活用されている。分厚い契約書類のチェック、自動翻訳、工場の検品作業といったビジネス用途をはじめ、スマートフォンのバーチャルアシスタント、スマートスピーカー、車の自動運転、家庭のお掃除ロボットなど、幅広い分野でAIが活躍している。

とても便利なAIだが、足元では「AI新時代」ともいうべき、飛躍的な進化が起きている。従来のAIは「特化型」と呼ばれるもので、顔認証などの特定の用途に限定されたシステムとして開発され、人間が用意した「正しいデータ」を学習することで推論や判断を行ってきた。

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一方、近年開発が急ピッチで進んでいるのは、用途を限定しない「汎用型」と呼ばれるAIだ。汎用型AIは人間の脳のように、さまざまな課題や想定外の出来事に対しても柔軟に対応することができる。

こうした汎用型AIの中でも最近注目を集めているのが、膨大なデータを自律的に学習することで一つのモデルでも多種多様なタスクをこなすことができる「基盤モデル(Foundation Model)」とよばれる大規模AIだ。Google社が開発した最新の「基盤モデル」は、1つの学習モデルで最大数百万種類のタスクに対応できるだけでなく、特定の用途でも特化型を上回る性能を発揮するとされている。

「基盤モデル」のような汎用型AIは、特化型とくらべて表現力が豊かで応用範囲も広く、学習データを大規模化するほど性能が向上するとされている。このため、今後のAI開発は特化型から汎用型へと移行し、これまでとは別次元の高度で多種多彩なAIが登場するものと期待されている。

2.飛躍的なイノベーションによる桁外れの経済効果

AIは猛烈なスピードで「推論・選択」を行うことができるため、人間が膨大な時間をかけて「トライ・アンド・エラー」を繰り返すようなタスクを劇的に効率化することができる。例えば、半導体設計支援システム(Electronic Design Automation、EDA)世界大手の米シノプシス社が開発したAIを搭載するEDAは、通常1カ月以上かかる半導体の設計を3日に短縮することができるとされている。

こうした「膨大な選択肢から有力な候補を選び出す」というタスクの典型的なものの一つに、新薬開発・創薬がある。従来の新薬開発では、無数にある分子の組み合わせの中から、気の遠くなるような時間と費用を費やして新薬候補を探してきた。

しかし、AIを活用することで、開発期間を大幅に短縮するとともに、優れた性質を持つ分子の発見、設計が可能になってきた。医療分野でのAI活用は2022年に9億ドルを突破したといわれているが、今後も高成長が見込まれ2030年には90億ドルに達するとも報じられている。

「複雑な状況に柔軟に対応する」というAIの特性が生きるタスクとして、車の自動運転をあげることができる。車が走る公道上は、緊急の工事、駐車車両、併走する自転車、横切る歩行者、ごみなどの落下物、緊急車両の往来など、不測の事態に満ち溢れている。こうした複雑な道路状況を把握し車を安全に走らせるには、トレーニングにより臨機応変な判断・対応が可能なAIが必要不可欠とされている。

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様々な分野で採用が進むAIの経済効果は、経済全体に大きなインパクトを与えるようになってきている。欧州議会の報告書によれば、AIによる世界経済へのインパクトは2030年までに世界のGDPの約14%、15.7兆ドル(約2,000兆円、1ドル128円換算)にも達すると推計されている。また、日本の経済産業省の試算でも、AIの導入により2025年までに日本全体で約34兆円の経済効果があるとされている。

AIによる飛躍的なイノベーションの進展は、関連企業のビジネスにとって大きな追い風となっている。AIを活用した先進運転支援システム(ADAS)を手掛けるモービルアイ社の2022年7ー9月期決算は、売上高が前年同期比38%増となり市場予想を上回った。電気自動車世界最大手のテスラ社は、バッテリーの制御、生産工程、自動運転などに幅広くAIを活用しているが、2022年通期の生産台数は前年同期比47%増の136万台超に達し、過去最高を更新している。

さらに、AIを活用した自動運転や機械制御に不可欠なパワー半導体やイメージセンサーの大手であるオン・セミコンダクター社の2022年7ー9月期決算は、前年同期比26%の増収、同66%超の増益となり、いずれも過去最高を更新した。加えて、AIの機械学習に使われる半導体「TPU」をGoogleと共同開発するブロードコム社の2022年8ー10月期決算は、前年同期比2割の増収となり、こちらも過去最高を更新している。

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AI関連株の株価は2014年以降に約5倍まで上昇し、世界のハイテク・グロース株相場をけん引してきた。2022年は世界的な金融引き締めを受けたバリュエーション調整から軟調な展開となったが、そのケタ違いの経済効果を背景に、関連企業の業績は好調に推移している。

このため、今後インフレの減速により米国での利上げが一巡し、将来の利下げが取りざたされるようになると、AI関連株はハイテク株の戻り相場における本命の一つとして、市場参加者の注目を集める可能性が高そうだ。

3.そこに愛はあるか、飛躍的進化が続くAIと人類の共存

AIが自律的に学習・高度化することで人間の知能を遥かに上回ることを「技術的特異点(シンギュラリティ)」と呼ぶ。かつてはSFやアニメの中の夢物語と思われていたシンギュラリティだが、汎用型AIである「基盤モデル」の実用化などもあって、にわかに現実味を帯びてきている。

飛躍的進化をとげることで、人間の能力を超えあたかも「神の領域」へ向かうとの見方も出てきたAIだが、シンギュラリティの提唱者である米国の未来学者レイモンド・カーツワイル氏は、シンギュラリティの前段階として『2029年ごろにはAIが人間並みの知能を備える』と予測している。そして、2045年ごろにはシンギュラリティが到来すると予測する専門家も現れるようになってきた。

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AIが飛躍的な進化を遂げていくと、その影響は好ましいものだけにとどまる、という訳にはいかないようだ。欧州議会の報告書では、AIは労働生産性の向上などを通じて経済成長に貢献する一方で、富の独占や格差の拡大といった弊害が生じる可能性が指摘されている。このほか、経済協力開発機構(OECD)の調査レポートでも、今後のAI活用によりOECD加盟国で14%の雇用が失われ、その他32%の人々も少なからず影響を受けると予測している。

AIはその強力さゆえ、野心的で強権的な為政者にとって極めて魅力的なテクノロジーといえそうだ。既にAIを活用した高度で自律的な兵器が、一部で実戦投入されたとの報道もある。

中国ではAIを活用した顔認証システムが国中の監視カメラに搭載されていることが知られているが、最近ではAIカメラで表情や脳波を読み取り、共産党員の「忠誠レベル」を評価するシステムが開発されたと発表されている。

そこで重要になってくるのは、各国政府や国際機関によるAI規制だ。欧州連合(EU)は、そのリスクレベルに応じて特定のAIを禁止または管理対象とする、罰則規定をともなう「AI規則案」の2024年の完全施行を目指している。

米国政府はAI開発で考慮すべき5つの原則を定めた「AI権利章典」を、日本政府も「人間中心のAI社会原則」を公表するなど、AIと人間の共存を模索する動きが本格化している。

適切な開発ルールや運用規則を設定する事によって、AIの飛躍的な進化の過程で生じる弊害を最小限に止める事が出来るよう、期待したいところだ。昨年Google社のAI開発者が、『AIに感情が芽生えた』と発信したことが大いに話題となったが、人類全体の幸福に思いをはせる「愛」をAIが学習する必要があるかもしれない。

まとめとして

AIの進化が新時代を迎えることで、長期的には人間の能力を凌駕するような飛躍的進化を遂げていく可能性がある。そして、AIの経済効果は極めて大きいことから、開発企業を始めとする関連企業には大きな恩恵がもたらされることが期待できそうだ。

AIのイノベーションとしての影響力は桁外れなため、進化の過程で生じるリスクをコントロールするため、各国政府や国際機関はAI規制について議論を活発化させている。飛躍的に進化するAIと人間の幸せな共存には、人間こそが弱者に思いを寄せる「愛」を学習し、「推論・判断」のレベルを引き上げる必要があるのかもしれない。

※個別銘柄に言及しているが、当該銘柄を推奨するものではない。

出典元:三井住友DSアセットマネジメント

構成/こじへい

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