教育は、将来を担う若者を育成するうえでとても重要な役割を担っている。
日本の教育制度は海外で評価され、実際にエジプトで導入されている一方で、国内では教員に関する多くの問題が山積みになっている。
今回は、日本の教育現場にどんな問題があるのか解説していく。
教員不足が顕著
末冨芳・日本大学教授らの共同調査によると、今年度の始業時点で教員不足が生じている割合が、小学校では20.5%、中学校では25.4%にも上ったそうだ。
不足している教員の穴は、本来学級担任でない教員を充てたり、教科の免許を臨時で発行し対応したりしているとの回答が多かった。
こういった状況が続けば、教育の質の低下は免れず、学校教育の在り方自体が問われるようになるかもしれない。
残業が多すぎる

教員不足の要因の1つとして、労働環境がブラックな傾向にあり、新しく教員を目指す人が減ってきていることがあると考えられる。
文科省が令和4年度に実施した調査によると、国が残業の上限として示している月45時間を超えて残業している教員は、中学校で77.1%、小学校で64.5%もいるようだ。また「過労死ライン」と言われる月80時間の残業に相当する可能性のある教員は、中学校で26.6%、小学校で14.2%もいる。
過去には過労で亡くなった教員も
今から17年前には、過労により亡くなった教員もいる。その教員は当時、生徒指導専任を始め17にも及ぶ業務を担当しており、その中の半分は「責任者」だったようだ。亡くなる1カ月前の時間外労働は、なんと208時間にも及んでいた。
この教員の妻は、TBSの取材に対し、今も教員の長時間労働が変わらない現状を見て「今もまったく同じことが起きている。働き方をちゃんとしないといけないと思う」と話している。
コロナ禍が終わり事態はさらに深刻に?

こうした状況に対し、教員の働き方に詳しい立教大学の中原教授は、NHKのインタビューで「教員の勤務時間が異常に長く、現場で取り組むには限界が来ている」と指摘。今後は、国が法律や仕組みを整えて変革を進める必要があると話している。
コロナ禍が終わり中止していたイベントが復活することで、教員の勤務時間がさらに増加するリスクもある。
教員の問題は長年指摘されてきたが、未だにその多くが改善されていない。
結果として教員不足が深刻化し、将来を担う子どもたちが適切な教育を受けられなくなる可能性が高まっている。
学校教育は日本の未来を支える重要な役割を担っているため、多くの人が教員を目指すよう、国はより力を入れて制度の改善に取り組まなければならない。
教員の部活動の負担軽減

国は、教員の部活動に関する負担を軽減する目的で、休日の部活動の指導を地域のスポーツクラブに移行する取り組みを始めている。
部活動の指導の時間を減らしたいと考えている教員は57.2%おり、地域社会や民間企業に部活動をゆだねるべきだと考えている教員も51.2%いる。
ただ、地域への移行によって金銭的な負担が増え、スポーツを続けることができなくなるという生徒もおり、経済的な問題に対する解決策も模索する必要がある。
日本の未来のために
教員の労働環境を改善するためにはどうすればよいのか、また、教員志望者を増やすにはどのような施策が必要なのか。
日本の未来のために、国を挙げて向き合わなければならない。
【参考】
・朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASR5B4R91R5BUTIL01K.html
・NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230428/k10014052081000.html
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230428/k10014051861000.html
・参議院
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2019pdf/20191101018.pdf
・TBS NEWS DIG
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/461965?display=1
・ベネッセ教育総合研究所
https://berd.benesse.jp/up_images/research/Sido_SYOTYU_05.pdf