「やる気エンジンを動かすにはほめる」が納得の訳

「やる気エンジンを動かすにはほめる」が納得の訳

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2022/09/23
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好き嫌いや苦手意識がじゃまして、やる気が芽生えないという方もいるのではないでしょうか(写真:Graphs/PIXTA)

仕事や人生がうまくいっている人に共通するのは、「すぐやる」ということです。一方で、やるべきことをいつまでも後回しにして、後悔ばかりしている人もいます。その差は、一体何でしょうか。

「世界一受けたい授業」(日本テレビ)に出演した明治大学の人気教授、堀田秀吾さんが、「どうすればすぐに行動できるのか?」を考察しながら、科学的に行動力を上げる方法を集めた書籍『世界最先端の研究が導き出した、「すぐやる」超習慣』を出版しました。

ここでは、本書から一部抜粋し再構成のうえ、誰でもできる「すぐやる」コツを3回にわたって紹介します(今回は2回目になります)。

1回目:研究で判明「移動中や旅先で仕事がはかどる」理由

まずはこんな会話からご紹介しましょう。

B「最近、太ったからやせたいなあ」
A「ダイエットするんだったら、定期的にジムに行ったりしたらいいんじゃない?」
B「でも、お金がかかりそうだから、もっとコスパよく、やせたいんだよね」
A「だったら、ジョギングがいいんじゃない? タダだし、場所も選ばないし」
B「う〜ん、走るのは嫌いでさぁ。あんまりモチベーションが上がらないなぁ」

Bさんのように自分のこだわり、好き嫌いや苦手意識がじゃまして、やる気が芽生えないという方もいるのではないでしょうか。

自分の好みと合致しないがゆえに、モチベーションが上がらず、トライする気にならない、そう考えてしまう人は少なくないと思います。ですが、物事の好き嫌いや苦手意識というのは、結局、自分が作り出したバイアスにすぎないことがほとんどです。実際、好き嫌いとモチベーションにはあまり関係がないといわれています。

タスクの好き嫌いより手応え

デューク大学、行動経済学者のダン・アリエリーは、モチベーションのある仕事に対して、あえて意図的にやる気を失わせる実験を行っています。

「シジフォス実験」と銘打たれたこの実験は、レゴが大好きな被験者を対象に行われました。内容は、レゴを組み立ててものをつくるように指示し、完成したら被験者の目の前で成果物を解体する。そしてそれを何度も繰り返し、どのタイミングで被験者がやる気を失うかを調べたというものです。まるで賽(さい)の河原のような光景ですね。

この実験を経てわかったことは、やる気を失わせるには回数ではなく、シンプルにその人の仕事を無視して、徒労感を与えればいいということでした。半面、やる気を出させるには、その人の仕事を認め、ねぎらいの言葉をかけてあげればいいということでした。

たとえ自分が大好きでこだわりがある仕事だったとしても、相手にされず、徒労感を覚えてしまえば、人はやる気を失ってしまう。

反対に、さほど興味がなく、モチベーションが上がらなくても、やってみた結果を人からほめられれば、やる気というのは思いのほか、すくすくと育つ……なんとも人間は現金な生き物なのです。

先の会話でいえば、ジョギングが苦手な人も、第三者から「最近やせた?」とか「顔色がよくて健康的だね」などと言われれば、その気になってしまうというわけです。

つまり、手ごたえをどうやって作り出すかが大事であって、好きか嫌いかはさほど重要なことではないということです。

脳科学の研究で著名な東京大学の池谷裕二教授によれば、やる気のエンジンである淡蒼球(たんそうきゅう)を動かすには、「ご褒美を与える」ことが重要だそうです。

まさに、このほめるという行為はご褒美になるんですね。結局、脳の報酬系を働かせればよいということです。

人にほめてもらいたければ、FacebookのようなSNSに投稿してみるのも手です。「いいね」をほぼ必ずつけてもらえますし、応援の言葉ももらえます。

やってみて嫌だったらやめればいい

私事で恐縮ですが、私は今でこそ大学教員をしていますが、若いときはいろいろなバイトを経験しました。

その数、実に47種類! われながらよくやったなぁと思うのですが、一例を挙げると、写真売り、レストランの厨房、公園の売店、建築関係、家庭教師、寿司店、ガソリンスタンド、塾講師、産業廃棄物中間処理施設、訪問アンケート調査、会場設営、音響設備、オートセンター、コンビニ店員、ナレーション、カラオケボックス、通訳、水道設備、イベント会場設営などです。

私自身、たくさんのバイトを経験して痛感したことは、誰かにほめられたり、感謝されたりすると、やる気が出て、パフォーマンスが上がるということです。

ですから、好きか嫌いかはひとまずおいといて、“なんでも一所懸命やってみる!”という姿勢が大事だと思います。

一所懸命やるからこそ誰かがほめてくれたり感謝されたり、報酬系が働き、脳のやる気エンジンが回転していきます。そうすると、自然と楽しめるようになるから、人間というのは不思議な生き物です。

先に挙げた仕事の中で、私が唯一楽しいと感じることができなかったバイトが、訪問アンケート調査でした。法改正前だったので、いきなりアポなしで各家庭に訪ねていけたのですが、これが大変でした……。

アポなしですから、訪問先の方々にイヤな顔をされ、追い返されるのは当たり前。文句を言われることはあっても、誰からも感謝されず、ほめられるなんてことはありません。

そうすると、先の実験のように徒労感しか覚えず、“やる気”なんていつまでたっても起こりません。ですから、私は1日でやめました(笑)。やってみて、つらかったら、すぐやめてしまえばいいのです。

言葉としておかしいかもしれませんが、「やる前からやめる」のではなく、「やってみて徒労感しか残らないようならやめる」ことが大切です。

でも、そのイヤなことも、経験として将来どんな役に立つかわからないので、まずはやってみることが大切だと思います。「とりあえずやってみる」という習慣を身に付けることがポイントなのです。

モチベーションには2種類ある

モチベーションには、「内発的モチベーション」と「外発的モチベーション」があるといわれています。

前者は、好奇心、探求心、向上心など、「やりたいからやる」という気持ちです。対して、後者は、「お金や評価がもらえるから、がんばる」という気持ちです。がんばった自分に自分でご褒美を与えることで、脳の報酬系を活発化させるわけです。

「外発的モチベーション」も“やる気”を向上させますが、「内発的モチベーション」をいかにして作ることができるかもポイントになります。

私の友人のライターさんは、得意ジャンルのある書き手ですが、あえて専門性を設けずにフリーランスとして活躍しています。その人は、門外漢の分野の執筆依頼や取材であっても、やはり「とりあえずやってみる」ことを大事にしているそうです。さらには、次の3つの軸を念頭に置いているといいます。

・スキルになる仕事 取材力、筆致力が向上し、視野が広がるような仕事
・稼げる仕事 単価の高い仕事
・ラクな仕事 単価は安くても労力のかからない仕事

この3つのどれかに当てはまるなら、「とりあえずやってみても損はないだろう」と考えているというから面白いですよね。このように割り切ることは、徒労感を覚えないように、自分でアレンジしながら脳と付き合っているともいえます。

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「内発的モチベーション」と「外発的モチベーション」、どちらも兼ね備えた仕事への取り組み方もおすすめポイントです。
しかも、そのライターさんは、何でもやってきた結果、仕事の幅が広がり、「どんどん仕事が楽しくなる」と語っています。

好き嫌いという軸で考えると、もしかしたらものすごく自分と相性のいいもの、新しい出会いになったかもしれないことを見逃してしまう可能性だってあります。繰り返しますが、「こだわり・好き嫌い・苦手意識」というのは自分にバイアスがかかっているだけです。

新しい価値基準をつくってしまえば、脳はそこに向かって伝達物質を送り続けてくれます。「とりあえずやってみる」。そして、報酬系を働かせられるような軸を作ってみる。それこそが、思いもよらない新しい自分の発見につながるのです。

(堀田 秀吾:明治大学教授)

堀田 秀吾

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