
福岡地裁は先月、県内の観光バス会社にコロナによる業績悪化を理由にした解雇が「不当」として、解雇した運転手への未払い賃金の支払いを命じました。司法の場で争われた「コロナ解雇」。運転手本人が取材に応じその背景を語りました。
新型コロナと雇用についての司法判断です。福岡地裁は先月、県内の観光バス会社にコロナによる業績悪化を理由にした解雇が「不当」として、解雇した運転手への未払い賃金の支払いを命じました。司法の場で争われた「コロナ解雇」。運転手本人が取材に応じその背景を語りました。
■男性運転手
「所長から突然、連絡があり一度話をしたいと。『整理解雇ですか?』と聞いたら、『そうです』という話の流れ。それが一番初めです。(解雇のことを)知ったのが」
雇用関係の確認と賃金支払いに関する仮処分申請が認められた40代の男性。県内の観光バス会社で運転手として働いていました。
裁判所の決定によりますと、男性が勤務していた観光バス会社はおととしには多い月で3500万円程度の売り上げがありました。
しかし新型コロナの影響で3月は約400万円、去年4月約90万円、そして去年5月にはゼロに。
男性は去年3月に突然解雇されました。
■男性運転手
「えって感じですね。これから先どうしようという心配もあった」
事前に話し合いの場が設けられないままの解雇に納得できなかった男性は去年6月、雇用関係の確認と未払い賃金の支払いの仮処分を申し立てました。
先月、福岡地裁の小野寺優子裁判官は観光バス会社に人員を削減する必要性があったことを認めた一方、解雇については―
「解雇は拙速で合理性を欠く」
会社から男性への意見聴取や削減規模の説明などが行われず、「解雇は無効」として賃金の6割にあたる約18万5000円を毎月支払うよう観光バス会社に命じました。
男性は現在、職場復帰に向けた調整を行っています。
■解雇された男性運転手
「本当にひとまずはほっとしている感じ。僕は話し合いの場がなかったからこういう風になったので会社の人ときっちり話をして、納得できないとは思うんですけどまずはそこじゃないか」
観光バス会社の担当弁護士は今回の決定について「主張が認められず残念。今後は経営状況の説明など手順を尽くしたい」とコメント。
男性の担当弁護士によりますと「コロナ解雇」をめぐる仮処分で無効の決定が出されたのは2例目だということです。
厚生労働省によると、新型コロナの影響で解雇や雇い止めされたり、今後される見通しの人は全国で10万人を超えています。
こうした状況の中で男性の弁護士は「今回の決定はコロナを理由にした安易な解雇に警鐘を鳴らすものだ」と話しています。