「私の人生、これで良かったんだっけ...」28歳の丸の内OLが、唐突に絶望したワケ

「私の人生、これで良かったんだっけ...」28歳の丸の内OLが、唐突に絶望したワケ

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  • 更新日:2020/11/26

タイトなスカートに7cmヒール。

どんなに忙しい朝でも、毛先は緩くワンカール。

モテることだけに執着し、典型的な“量産型女子”を演じる円花(まどか)。

しかし年下の起業家男子に恋した彼女は、思わぬ人生の選択をすることに―。

◆これまでのあらすじ

丸の内“量産型OL”である円花は、専業主婦を夢見てお金持ちにターゲットを絞り、婚活中。

紹介されたITベンチャー社長の篠崎をオトすと決意するが、彼は「予想もつかない行動をする子が好き」と言い、円花に興味を示さない。そんな篠崎を振り向かせるため“あること”を思いつき…?

▶前回:オトしたい男に彼女の気配が…。焦る女が繰り出した、大胆すぎる行為とは

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「この部屋は駅から徒歩でも近いですし、セキュリティもしっかりしているので、初めての一人暮らしでも安心できると思いますよ」

不動産屋の担当者がそう話す声に適当に相槌を打ち、ベランダの外に出る。

日曜日の昼下がり、円花はマンションの内見に来ていた。

大通りから一本奥に入った道沿いにある部屋には、車の音もあまり聞こえない。

池尻大橋駅から徒歩8分。南向き、7階建の5階。日当たりも良く、やわらかく吹く風が気持ちいい。

―ここからなら大手町駅を利用すれば一本で会社にも行けるし、朝はギリギリまでメイクに時間をかけても大丈夫かな。

「…ここに決めます!」

円花は晴れ晴れとした表情でそう不動産屋に告げる。

こうして、円花は人生で初めての一人暮らしの準備を始めることになった。

一人暮らしを始める理由はただひとつ。篠崎が好みの“予想もつかない行動をする女“になるためだ。

しかし篠崎好みの女になることを決意し、住む部屋も決めたはいいものの、円花にはひとつだけ大きな悩みがあったのだ。

円花がひとり、悩んでいたこととは?

それは、家を出ると決めたものの、両親にはなかなか言い出せずにいるということ。

今まで宝物のように大切に育てられてきた円花だから、いきなり「一人暮らしをする」なんて言ったら、何と言われるだろうか。

―どうしよう、連帯保証人のハンコをもらわないといけないのに。

円花は父親の書斎の前をうろつきながら、ため息をついた。

「あれ円花、どうしたの?そんなところウロウロして…」

その時、階段の踊り場から円花の母が疑い深げに話しかけてきた。

―マズい。お母さんに先にバレたら、絶対反対されるに決まってるよ…!

「あっ。いや、別に何でも…」

円花がそう挙動不審に答えると、母は円花のことを怪しむように近づいてくる。

「ちょっと!手に持ってるその書類、何?」

円花は手に持っていた賃貸借契約書を背後に隠そうとしたが、一瞬の隙に母に見られてしまった。

「何なの、円花。マンションを借りるの?」

「えっ…。うん、実はそうしようと思ってて…」

その時、母との会話が聞こえてきたのか、父が書斎から静かに出てきた。

「あっ、お父さん…!」

父は、怒っているとも悲しんでいるとも分からない表情で、円花のことを見つめている。

「どうしたんだ、円花。親には隠し事をしないで話しなさい」

「…うん、分かった」

そうして親子3人でダイニングのテーブルに移動し、家族会議が始まった。

「私、一人暮らしを始めようと思っていて…。実は、もう部屋も決めてるの。だから、認めて欲しい。お願いします」

そう円花が正直に告げると、母は少し気が動転した様子で反論する。

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「認めてって…。円花、家を出る時はお嫁に行く時だって言ってたじゃない。実家がこんなに良い場所にあるんだから、一人暮らしをする必要なんてないわよ」

そう言う母も円花と同じようにお嬢様育ちで、父のもとに嫁ぐまで世田谷の実家で暮らしていた。

「確かにちょっと前までそう思ってたけど…。やっぱり私、自立したいの。良いでしょ?」

「大体今まで料理も洗濯も何もやったことがないのに、いきなり一人暮らしなんて無理よ。お母さん、心配…」

―ギクッ。お母さん、痛い所を突くなあ。

円花は今まで婚活に身を捧げてはいたけれど、ただそれだけ。家事はすべて母に任せきりで、自分では何もしてこなかったのだ。

「そ、それは、やってるうちに何とかできるようになるって…」

円花はそう弱気な声で答える。

父は2人の会話を聞いてしばらく黙り込んでいたが、その時ようやく口を開いた。

「まあ…。円花が自分で考えて決めたことなんだから、応援してあげても良いんじゃないかな」

「えっ。あなた、何言ってるの…?」

母は父の言葉に目を丸くする。

しかし円花は、その父の一言を大げさに喜んで、それ以上の母の反対をさえぎった。

「やったー!じゃあお父さん、ここにハンコ押してくれる?」

「分かった分かった。でも、お父さんもお母さんも寂しいから、たまには家に帰ってきてくれるかな?」

「もちろん!」

そう笑顔で答える円花だったが、頭の中は新生活のことと、これからどうやって篠崎を振り向かせるかということでイッパイだった。

そうして新生活を始めた円花は、あることに衝撃を受ける…

そして、新居に引っ越してきて1か月。新しい生活にも慣れてきた頃。

「クローゼット、入れ替えなきゃ…」

円花は新しく買った洋服が入っている袋を、ドサッと床に置く。そしてクローゼットの扉を開けると、ぎゅうぎゅうに掛けられた“衣装“を眺めてため息をついた。

―何か、全部同じような服ばっかりなんだよなあ。

今までは男ウケの良いファッションばかりを意識して、レースやパステルカラーの服ばかり何着も揃えていた。

クローゼットから数着引っ張り出して、鏡の前で合わせてみる。

「うわっ。この髪型じゃ、なんか似合わない…」

引っ越しを機に心機一転、ヘアスタイルもバッサリ変えた円花。

今までずっと胸までの長さでワンカールに巻いていた髪型は、肩下までの暗い色のボブに変えていたのだ。

少しがっかりしながら合わせていた服を床に置き、初めてロンハーマンで新しく買った服に着替えてみる。

今まで履いたことがないようなスエード生地のワイドパンツに、ビビッドな赤のニットベスト。

円花にしては少し攻めたスタイルだが、今の髪型やメイクなら似合っている気がした。

―私、本当はこういう格好がしたかったのかも。

円花は鏡の前で、少しずつ本当の自分を見つけていくような感覚をおぼえた。

そして変わりたいのは、篠崎に好かれるためなのか、それとも自分自身のためなのか。少しずつ曖昧になってきているような気がする。

そんな時、円花のスマホが鳴った。

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―誰からだろう?

LINEを開くと、メッセージを送ってきた相手は穂香だった。

『円花、お誕生日おめでとう~!もう28歳だね。お互い、また歳を取る前にちゃんと結婚相手見つけようね!』

その文面を見て、円花は不意に雷に打たれたような衝撃を受ける。

―私、もう28歳なの!?っていうか自分の誕生日、すっかり忘れてた。

去年までは、毎年その時に付き合っていた彼氏に誕生日を祝ってもらっていたから、1人で過ごす誕生日はこれが初めてだった。

円花は、胸の中にジワジワと焦りがこみ上げてくるのを感じる。

「私の人生、これで良かったんだっけ…?」

思い切って一人暮らしを初めて、髪型も服装も変えた。だけど、それはあくまで円花の上辺が変化しただけに過ぎない。

今までずっと恋愛や婚活のことしか考えていなかったこと。それに見た目しか磨いてこなかったこと。

そんな今までの人生を思い返すと、円花は自分の年齢に中身が見合っていないような気がして、急に自分が薄っぺらい人間のように思えてきた。

―今からでも私、本当に変われるよね?

スマホでインターネットを開くと、円花は衝動的にあるサイトに登録をする。

円花は28歳の誕生日にして、ひとり“大きな決意“を固めていたのだった。

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「人生、変えなきゃ」円花が28歳にして誓った“ある決意”とは。

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